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日記0398あるいは除き助ける
「どうやら君は選ばれなかったようだね」
痛みだけ残り、力は得れず、けれども、死ぬこともなく、登場すらできなかった脇役以下の私は、矢に射られた記憶だけ携えて、電車に乗った。
「見てよ、電車に猫がいるわ」
それはひと目で猫と見抜けぬほど痩せ細った、生命の生臭さだけを形にしたような、醜い塊だった。
「ひっでえ匂いだな」
誰もが車両から離れていく。猫は私達人間の阿鼻叫喚など意に介さず、悪臭を撒き散らしながら、揺られ、歩む。
「もしかしたらこの猫が、能力だったりしてな」
しかし、能力は人の目には映らないという。やはり、ただの生臭い猫なのだろう。私はなぜかやるせなく、苦しく、息づらくなって、頬に涙が伝った。
「いや、このニオイは……」
頬を伝っているのは涙ではなく、膿。矢に射られた私の、耐え難き悪臭だ。
「能力でなく、傷……、膿と悪臭で人を寄せ付けないか」
傷も使いようだ。悪臭を気にしない猫だけが揺られ続け、私の足元で丸くなる。
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