日記0446あるいは困惑蒟蒻
「人は一人では生きていけないよ」
その言葉を打ち破るべく、たった一人で生きている男がいた。久辺守泰、148歳。存命である。
「母親の父も吸わず、社会にも参加せず、文字通り、いや文字にも触れたことがないので文字通りにすらなれなかった御人だ。
いや、未だ痕跡しか発見されていないため、彼にな人という概念もないだろう。
ただ、人間の文化に触れたことはある。
あるはず、だ。
彼は蒟蒻を捧げられている。山のように、大量に。彼はそれを食べているのか、あるいは、ただ眺めているだけなのかはわからないが、蒟蒻だけが、彼と世間を繋いでいる。
「ンナわけ、ないでしょう。デタラメ言わんでくださいよ」
久辺はアハハとわいながら訂正印を押し続ける。
「貴方みたいにミスばかりする人は珍しい。一行に3つもミスがある。人として生きていなかったとしか思えない」
「アハ、アハアハアハ、手厳しいっ」
フケ顔の、しわくちゃの男。
「でもねぇ、148歳と言うのはあたりです」
ぽっかりと開かれた口には擦り減って短くなった歯が並んでいる。
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