2022読書記録②七回死んだ男 西澤泰彦
あらすじ
特異体質の主人公。なんの前触れもなく同じ日を9回繰り返してしまう。1回目はオリジナル週。主人公以外はこのオリジナル週の行動を元に2回目以降も動くし、繰り返しに気づいていない。変化を促せるのは主人公のみで、9回目が決定版となる。
これは能力ではなく体質と明言されている。コントロールができないから。いつその繰り返しが始まるのかわからない。月に何度も陥ることがある。主人公は年齢の割に老齢した精神なのでじじむさいとか言われてる。実際まだ16かそこらだけど30代の精神年齢。
割と複雑な家庭環境というか一族で、何ちゃらカンパニーの会長であるお祖父様のお家に毎年年始の挨拶にいく主人公の親族たち。遺産相続でもめもめしてて、昔から奔放なお祖父様は(そのせいで主人公のお母さんや叔母さんたちと関係はよろしくない)この元日に相続者を独断で決めて遺書を毎年書き替えているとのこと。
1月2日。主人公の繰り返し体質が起きた。しかしおかしいことにオリジナル週では一緒に酒盛りをした祖父が2日の2週目、死んだのである。
誰かに殺されて。オリジナル週の通り過ごせば祖父は助かる。けれど1週目酒盛りでベロンベロンに酔っ払った主人公はちょっとアレにはもう一度付き合いたくないな……と祖父との酒盛りを避けた。まだ数週あるし。だがそれが変更点だった。自分と一緒にいない間、必ず祖父は誰かに殺されてしまう。
とりあえずお祖父様を助ける方向で、できれば酒盛りもしないようにと主人公は残りの8週を過ごすんだけどお祖父様はどんどん殺されてしまい…。というお話。
※以下ネタバレあり。 備忘録としての感想
Youtubeのほんタメで紹介されていた通り、おどろおどろしい表紙に見合わず軽妙な文章で綴られる主人公の語り口がとても安心できて、恐怖心は全く抱かなかった。
主人公の久太郎君はとても好感の持てるいい青年だった。
お祖父様との関係性はほんタメでは語られてなかったのでもっと一般家庭のおじいちゃんかと思ったら思った以上に奔放で老獪なお祖父様だった。
とても面白かった。重なったご病気と事故のトリックがとても気持ちのいい答え合わせになった。散りばめられた布石からあともうちょっとで自力で辿り着けそうな気がするのに手が届かない丁度いい距離感。身近で馴染みのあるような気分にさせられる親しみやすさが想像していた「ミステリ」と違って新鮮だった。
ラストもこのまま少し一般家庭と外れているのにどこか穏やかさと面白さを感じる日常が続いていくみたいな終わりで好き。
ミステリ入門として紹介されていたけど本当にその通りドンピシャの作品を教えてもらえて嬉しい。
同じ作者さんの別の作品も読んでみたくなった。人に勧めたくなる1冊だった。
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