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ヴァラナシ①

インドに興味のない人でもこの地名を耳にしたことのある人は多いのではないだろうか。ガンジス河(ガンガー)の中流にあるヒンドゥー教の聖地、シヴァ神信仰の本拠地だ。ヒンドゥー教ではガンガーは全ての罪を洗い流してくれると言われており、ガンガーに遺灰が流されると解脱できると信じられている。この街はヒンドゥー教徒だけでなく、バックパッカーにとっても聖地の一つだ。巡礼の喧騒を求めて、ガンガーと人々の営みを求めて、ヒンドゥー教の精神世界を求めて、今も昔もバックパッカーはこの街を目指して旅をする。

街の東側にはガンガーが流れており、岸辺にはガートと呼ばれる石造りの階段が並んでいる。その数実に84個。有名な沐浴もこのガートで行なわれている。バックパッカー通りのベンガリートラはガートのすぐ裏にあり、僕が泊まったゲストハウスもその外れにあった。

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(ベンガリートラ)

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(ベンガリートラ  ゲストハウスの案内が至る所にある)

着いてすぐガートに沿って岸辺を歩いた。沐浴をする人、ガートに腰掛けて煙草を吸う人、クリケットをして遊ぶ子供、チャイを飲みながらそれを眺める大人…  ガンガーと共に生きる人々の暮らしを見ながら歩いた。もちろん働いている人もいる。ここは観光地なのだ。歩いているとボートに乗らないか、数珠を買わないか、占いをしないかと声をかけられる。しかもかなり流暢な日本語で。全部適当に返しながら歩き続けた。

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(ガート  ガンガーは洗濯にも使われる)

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(ガート  沐浴する人達)

不意に香りが変わる。それと同時に今日の目的地が近い事を察する。辿り着いたのはマニカルニカーガート。数あるガートの中でもこことハリシュチャンドラガートの2つは火葬場として使われている。マニカルニカーでは24時間煙が立ち上り、常に誰かが火葬されている。運ばれてきた遺体は一度ガンガーで清められた後、ここで荼毘に付され、遺灰をガンガーに流されるのだ。ガートには牛も犬も入り込み、牛は遺体を飾る花を、犬は遺体の燃え残りを狙って歩き回っていた。知らない誰かが燃えているのをしばらく眺めていた。

マニカルニカーを出て沐浴をしに行く。荷物と服を日本人の旅行者の方に見ててもらった。聖なるガンガーに浸かると、頭の中に色々な事が浮かんでは消えていく。寒い、冷たい、汚い、お腹空いた…  煩悩だらけで何も悟れない。5分でやめた。沐浴して服を着た後滑って転んでびしょ濡れになった。お気に入りの服にも穴が空いた。悲しい。ちなみにこの記事を書いている時点で2日経過したが体調に変わりはない。

荷物を預かってもらった人と夕食を食べる。けんじさん、同い年。彼はカルカッタからトルコのイスタンブールまで旅をするそうだ。インドに来て相当やられていた。下痢して7kg痩せたらしい。今後の旅の幸運を御祈りします。YouTubeやってるらしいので是非。リンク貼れないのでURLコピペしてください。https://www.youtube.com/channel/UCivoH2gFibIUqi6ofIN94aQ

宿に帰って部屋でnoteを書こうと思ったが、電波がない。WiFiも繋がらない。屋上に出たらWiFiに接続できたので屋上でnoteを書く。遠くで花火が上がっている。めちゃくちゃ蚊に刺された。ヤバい気がする。

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(翌朝  かゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆい)

翌朝、チャイを飲んでいると昨日数珠を売りつけてきた男が話しかけてきた。彼は流暢な日本語でタカシと名乗った。金が無いから何言われても買えねえよと言うと、見たらわかると歯の欠けた口を大きく開けて彼は笑った。  ベンチに座って2人でボーッとしてた。彼も特に何も売りつけてこない。ポツリポツリと会話する。金を持ってそうなそうな旅行者を見ると走って数珠を売りに行く。インド人には売らないのかと聞くと、高いから外国人しか買わねえと言っていた。ヒンドゥー語や地方の言語も含めると7つも言葉を話せるらしい。いつもふっかけてくるリキシャワーラーもそうだが、生きるためのその逞しさには感服せざるを得ない。

1時間も呆けていただろうか、自称占い師の男が昨日会ったなと話しかけてきた。ガンガーで転んだ直後に、ガンガーで転ぶなんてお前はツイてる! 格安で占ってやる!!と言ってきた男だった。ナマステと言った後、何も言わずにじっと僕を見てくる。何事かと思っていると突然「キスしないか」と言われた。タカシがこいつはゲイだから本気だと言う。丁重にお断りしたが、後をつけてきたので走って逃げた。

もう一つの火葬場、ハリシュチャンドラガートに向かう。マニカルニカーより小さいこのガートでは1つしか炎が上がっていなかった。ガートの管理人だと言う老人が話しかけてきた。マニカルニカーではヒンドゥー教徒しか火葬されないが、この火葬場ではヒンドゥー教徒以外も火葬されるらしい。何十年も前、ガンガーで溺れた日本人学生を火葬したこともあると言う。しばらく火を眺めた後、宿に戻った。

宿でWiFiを繋ぐと、帰国に使う航空会社からメールが来ていた。帰国便に変更があり、カトマンズ発が1日遅れるとの事だった。えっ、乗り継ぎ間に合わないじゃん。新しい航空券取んなきゃいけないってこと? めんどくせえ…  


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