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ジャイプル①

デリーから約6時間、本来来るはずのなかった街、ジャイプルの駅に僕は降り立った。駅を出た瞬間、にこやかに手を振りながらこちらに歩いてくるのはもちろんリキシャワーラー(リキシャの運転手)。

「Hey, Sir!! Where will you go?(旦那! どちらまで?)」
「……」

もちろん無視して歩く。宿までは歩いていくつもりだったが、調べてみたら宿まで7kmもあった。昼間ならいくらでも歩くが、今はもう21時を過ぎ、1人で歩くには危険な時間帯。しょうがないのでそのリキシャに乗ることにした。

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値段交渉を終え、リキシャは走り出す。リキシャワーラーは常にフレンドリーに話しかけ、僕の心を開こうとしてくる。初めは適当に返していた僕だったが、次第に会話が弾んでくる。宿に到着した時にはすっかり打ち解け、明日の観光にも彼のリキシャを使う約束をした。この時取り決めた額はRs700。彼は君の気持ちでいいと言っていたが、間違いなくお気持ち以上に請求されるため、こう取り決めた。

翌日の朝、リキシャに乗って観光に向かう。彼はあまり観光客の行かない名所を案内してくれるという。まずはマハラジャ(インドの地方領主、金持ち)のなんだかよく分からない遺跡。なかなかに綺麗だった。ここの入場料(50円)は彼が出した。どうせ後で払うことになるしいいや、と払ってもらうことにした。次はジャイプル観光のド定番、アンベール城。もう既に初めの説明とは違うが、行きたかったところなのでよし。建造物の大きさ、緻密さ、美しさ、どれをとっても感動に値するものだった。

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(マハラジャの遺跡  詳細は分からない)

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(アンベール城  マハラジャの城)

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(アンベール城城内  ガネーシャ門  世界で最も美しい門と言われる)

ちょうどお昼時だったので、彼に頼んで街中の安い食堂に連れていってもらった。メニューを見てもよく分からないのでとりあえず1番安いカレーを頼む。グリーンピースカレーが運ばれてきた。美味い、でも辛い。No-Spicesって頼めば辛くないって聞いたのに。元来僕は辛さには弱い。バーモンドカレーは中辛、ジャワカレーは甘口が限界である。でもこのカレーはジャワカレーの中辛並に辛い。からい、つらい、からい、つらい…  ナンと一緒に一気に飲み込み、どうにか完食できた。

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食堂を出た後、彼は叔父の経営する宝石店に僕を連れていった。安く買えるから是非そこでお土産を買っていけと言う。宝石なんて興味無いしそもそも買う金が無い、連れていかなくてもいい。そう伝えたが、もし気に入ったら買えばいいし、気に入らなかったら買わなくていいと僕を無理矢理宝石店へと連れて行った。

宝石店の経営者は若い男だった。叔父というには若すぎる。運転手がいなくなったタイミングを見計らい、君と運転手はどういう関係かと聞いてみると、友人だという答えが返ってきた。なるほど、やっぱり運転手は嘘をついている。実の所、親戚や友人の経営する店に連れていき、相場よりも高い値段で粗悪品を掴ませるというのはよくある詐欺の手口なのだ。もちろん歩き方で予習済みである。

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(ヒンドゥー教徒の行進  シヴァラートゥリ?)

宝石店を出た後、運転手に買い物はない、歴史的な場所が見たいからそっちへ連れて行ってくれ、もしそうしてくれないなら新しい運転手を探す、と告げるとしぶしぶといった体でリキシャを走らせる。そしてよく分からないものをいくつか見せられた後、チャイスタンドでチャイを飲む。

チャイを飲んでいると運転手の友人だという男が話しかけてきた。2人とも日本で働いていたらしく、日本語で簡単な会話はできた。しばらく雑談をした後、彼らはインドの結婚式を見にこないかと僕を誘ってきた。正直信用できないので、時間もお金もないから行けないと断る。彼らはすぐに引き下がったが、しばらくするとまた結婚式に行かないかと誘ってくる。

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(結婚式に来いとしきりに誘う男)

「お前はバックパッカーだろ?  現地の暮らしを見に行かないでどうするんだ!」
「お金も時間もないし正直さっき会ったばかりの君達は信用できない」

こんなやりとりを何度も繰り返し、彼らと別れた。次に連れて行かれたのは運転手の友人がやっているという服屋。今回も買わないと伝えたが無理矢理連れて行かれた。そこで1人の日本人と会う。彼はどうやら例の結婚式にも行くらしい。そのためのジャケットも買わされていた。被害にあっていないことを祈る。

時刻は午後7時。すっかり日も暮れ、お腹も空いてきた。食堂に向かっている途中、運転手にリキシャを運転してみないかと言われる。少しだが酒も飲んだし、免許もないので運転しないと言ったが、全然問題ないと彼に言われる。確かにインドの交通ルールはあってないようなものだし、酒飲んで運転してるやつも見た。小学生みたいな子供がバイクを運転しているのも見た。いいのかなと思い、やらせてもらうことにした。交差点を無事に通り過ぎると、運転手が何か騒いでいる。彼が路肩にリキシャを停め、急いで後ろの席に行け!と僕に言う。

「まずい!!  警察に見つかった!!!!」

人生終了。

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