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能動的東京建築祭

2024年5月25、26日は東京建築祭なるイベントが初開催された。昨年参加した京都モダン建築祭に続き、こちらも参加することにした。土曜は他の予定があったので、26日一日で行ける範囲で楽しもうというコンセプトである。

腹ごしらえ

スタートは神田駅。まずは肉の万世で腹ごしらえする。秋葉原店がビルごと閉店になって悲しかったけど、あの味はこうやって他の店舗で食べられる。こちらの店舗も素敵な雰囲気だった。

コンボランチ!

日本橋方面に行くことを考えていたが、食後に建築祭公式アカウントの投稿を確認したところ多くの建築が混雑していて待ち時間が発生しているようだ。とりあえず、待ち時間がなくていちばん近い丸石ビルディングに向かうことにした。

能動的建築祭①

丸石ビルディングに向かって歩いていたら、昭和感の強い建物を発見した。山梨中央銀行である。平成15年に千代田区景観まちづくり重要物件に指定されている。千代田区のサイトによると第十国立銀行時代からの建物らしい。

第一発見近代建築
隣の低いほうの建物も壁の感じがいけている

ここで私たちは気づく。東京建築祭は特別公開やガイドツアーのある建築だけ楽しむより、道中自ら見つけていく楽しみ方をしてもよいのではないか。少なくとも私は待ち時間が発生するほど混雑する建築に挑むガッツがないので、このスタイルを採用することに決めた。

丸石ビルディング

山梨中央銀行のほぼ向かいに人だかりがあり、それが丸石ビルディングだった。外観も内装も装飾多めで、柱の上部から何者かが口を開けてこちらを見ていた。

がおう

この建物、1階にペルシア絨毯屋さんが入っていて、店先のQRコードを読んだらVRで絨毯を敷くことができた。目の前の道路に敷いてみた。楽しかった。

若干浮いているけど車道に介入できることが楽しい

能動的建築祭②

神田駅に戻るように歩いていたら、また変わった建築を発見した。上の方にPLATINUM、1階の看板部分にナカタ文具店と書いてある。この細い建物の両側は駐車場になっていて、きっと似たような雰囲気の建物がかつては並んでいたのだろうなと思われる。この建物もいつかはなくなってしまうのだろうか。

両サイドの抜け感


ここまでの道のり

能動的建築祭③

神田駅をくぐってさらに西へ歩いていくと、また昭和建築を発見した。珈琲専門店エースである。看板の字体が懐かしくてかわいい。この日は休業していたが、後で調べたところ1971年創業の有名喫茶店だった。Googleに「珈琲専門店」まで入力した時点でサジェストで出てきたので、このお店が有名であるのと、「珈琲専門店」なる存在が貴重になってきている可能性が示唆された。また神田に行く機会があれば行ってみたい。

真ん中にいるラクダもかわいい🐫

能動的建築祭④

また細い古ビルを発見した。骨董珍凰堂と書いてある。これも隣が駐車場で、かつては建物が並んでいたと想像できる。隣の大きいビルに圧され気味にも見えるし、身体は小さいが力のある仙人的な存在としてまだまだ根を張っているようにも見える。

後ろに向かって傾斜があるのは、見栄なのか雨雪対策なのか

安井建築設計事務所

本チャンの東京建築祭の公開建築としては2つ目の建築にやっと到達した。外から見ると変哲ないビルである。中に入ってみると開放的な空間が訪れた人々で賑わっていて、壁にはこの事務所の歴代社長と手掛けた建築の解説がドンと貼られていて歴史を感じた。

このオフィスは社内プロポーザルによりリフォームが施されたということで、自分たちの仕事空間を自分たちで設計するって素敵だしそれができる環境っていいなと思った。

あちこちに解説をつけてくれている
左が新しい梁、右が古い梁

今回の公開用に色々と会社の取り組みを紹介してくれていて、その一つに3Dでの設計やそれを利用した避難訓練シミュレーションゲームがあった。デジタルツイン上でなら実際にはできない煙の再現とかもできるということで、実際の空間でやるのとは違う観点でリアリティのある避難訓練ができそうだし、楽しんで訓練できそうな印象を持った。

動画での説明に加えポスターも設置してあった

東京建築祭、普段は見ることができない近代建築の内部を見るのがメインだと思っていたけど、こうやって建築事務所で色々学べるのも面白いと思った。

能動的建築祭⑤

また不思議なものを見つけた。ビルの壁に作品がいる。近づいて見てみたら円には十二支が描かれていて、円を貫く棒みたいなやつの端に小僧が座っていた。雪国でもないのに2階部分に扉があることも含め不思議極まりない。カワベビル、つい足を止めてしまう建物だった。

上の方にはフクロウや鶴もいる

岡田ビル

公式サイトによると、1969年築の不適合建築を減築したものらしい。不思議な吹き抜けがあったり、エレベーターだったところがただの壁になっていたり面白い。もともとある階段と後付の階段をうまくつないでいる感じで面白かったけど、頑張って上った屋上に特に見るべきものがなく拍子抜けした。たぶん、階段を見てほしいけど階段だけだと混雑するから屋上も行けるようにしてくれたという感じなのだろう。

この部分も床を減らしたということだろうか。なんとも不思議な空間
元エレベーターの壁。階数表示とボタンが残っているのがよい

神田ポートビル

最後は神田ポートビルへ。外の看板からかわいい感じだ。1階に売店と茶室があり、地下にサウナがある。茶室は細長い二畳で雰囲気もモダンだけど、ぎゅっと狭い感じはやはり茶室らしさがあると思った。サウナは前室まで行けるのだが、既にサウナの塩辛い空気感が漂っていた。それぞれの好きなスタイルでくつろげるように座るところも色々で、汗をかいたあとにこの空間で一息つけるのは素敵だなと思った。

でこぼこしたところに寝転がってみたら心地よかった
サウナハット風?のランプシェード。かわいい!

今回の東京建築祭の公開建築を見るのはここが最後。こんな機会がなければ知ることもなかっただろう場所に行けたのがよかった。

能動的建築祭⑥

公開建築は見終わっても能動的建築祭は続く。東京メトロ東西線の竹橋駅近くで、タイムズの月極駐車場を発見。巨大円盤すぎて、よく中央だけで支えているなと思ってしまった。

ぐるぐる地下に行く間に目が回りそうだ

能動的建築祭⑦

梅林を横目に坂を上っていると、植え込みに立派な蜘蛛の巣が大量にあった。これもある意味立派な建築ではないか。

写真だと分からないが真ん中に主が鎮座していた

能動的建築祭⑧

竹橋駅から帰ろうと思ったが、平川門が目の前にあり、皇居東御苑も散歩しようと思い立った。歩いていくと窓がかわいい建物があり、宮内庁書陵部とのこと。全然知らなかったが、書陵部は図書寮がもとで1949年にできたらしい。この建物は当時からのものかまでは調べきれず。

窓のサイズが違ったり、真ん中だけ丸いところがかわいい

帰途につく

そのまま天守台に上ってみたりして、東御苑内を散歩して大手町方面に抜け、丸の内丸善に寄って帰った。丸善で東京建築祭のブックフェアをやっているということで立ち寄ったのに、ブックフェアを見るのを忘れてしまった。でも別にいい。東京建築祭で三井本館とかを見るぞと思っていたのは叶えられなかったけど、結果的に知らない世界をたくさん見ることができたし、パンフレットにない建築も楽しんだことで一味違う楽しみ方ができたと思う。東京建築祭は今年が初開催とのことで、来年からどんなふうに発展していくか楽しみである。


神田駅からゴールまで


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