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エピソード供養として過去の出来事を吐き出す【鞍馬の夜】②

電車で乗り合わせた奇妙な老婆は何処に行ったのか?気にはなるけれど恐怖の存在が何なのかさえ解らずに震える鞍馬の夜。

蓮の花びらのようなチケットを渡されケーブルカーに乗ると山の上の多宝塔駅までゆっくり進んでも高低差は90mほどで数分で着く。山の駅から本殿までの参道に灯はあるが思ったよりも暗く案外離れているのが分かる。物陰から先ほどの老婆が飛びかかってきたら恐ろしくてもう泣きそう。

田舎の山間部で生涯を過ごした祖母の教えで”山に入る場合は魔除けに刃物を持つ”と聞かされていたので直前にVICTORINOXのミニナイフを購入。小さい身なりであるのだが積極的に魔は避けて頂きたい。

歩き始めて数分して同行者がトイレに行きたいと言いだす。早く移動したい、着いてからじゃ駄目なのか?と伝えても「すぐそこ」と指した右手の先にはコンクリートの小さな建物があり足早に向かってしまう。仕方なくひとり参道で待つ事に。気のせいなのか目に見える建物の裏側が異様に暗く漆黒の壁のようにも見える。

同行者は急にスタスタと戻ってきた。トイレには入らず踵を返す謎行動。後で聞くと建物の通路のある一線から漆黒で先が見えなく異常な感じがして戻ったらしい。気のせいじゃなかった。

こちらが参道ですったもんだしていると、後ろから中年の夫婦が関西弁で喋りながら歩いて来る。人と話す余裕は無いので先を急ぐと、旦那の方が先ほどの建物の所でカメラを撮り始める。闇にフラッシュが眩しく刃物より断然魔除け感が強い。「何撮っとん?」連れの奥方が聞いているが「何か動いたが、分からん」と答えるのみであった。何が見えたのかはちょっと興味がある。

急ぎ本殿に着くと祭りはすでに始まっていて、参加者は基本待合所で待機のようである。呼ばれると揃って本殿に向かう流れらしい。中はとても寒く暖房は火鉢ひとつのみ。しかしその暖も家族で来た5人が独占する配置で座っていた。全員に睨まれるが、そしらぬ顔で過ごす図太さ。離れる時は持参した毛布で場所取りする念の入れよう。ファミリーに福が避けるようにと念じておく。

夜を通し呼ばれてからお堂で読経を聴くか待機を繰り返すのだが、深夜のお堂はとても神秘的で魅力がある。徐々に気持ちも落ち着いてくる。最後は全員外で護摩を焚いて終わりのよう。暖をとる焚火もあって待合所よりずっと温かい。そして夜空に火の粉が舞いあがり消えていくのが美しい。

ふいに、焚火を挟んだお向かいの男性がこわばる表情でアイコンタクトをとって来た。一体何事かと視線の先を見ると、胸の高さ焚火の中を漆黒の人魂らしきものが進んでいた。その場にいた何人かと一緒に目撃するが誰も声は出さず黙っていた。時間にして30秒くらいを目で追うに留まる。人魂はゆっくり動いて静かに闇に消えていった…。正体不明。山は怖いマジでどうかしてる。

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夜が明けると御札やら目当ての『あうんの虎』が授与(購入)される。本来ならば奥の院に行って貴船神社に向かう予定であったが昨夜の怖さのあまり、すぐ街中に帰った。早朝のイノダコーヒでモーニングを頂くと夜の事は夢のよう。結局、無量の大福を授かれたのかも分からないまま終わる。今まで特に何も無いのが福便りなのだろうか。

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記憶を辿りメモに打ち込んでいると急にスマホがフリーズして少し怖いよ。

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