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月はどっちにでている

「お母さんは、お子さんは将来どんな風に生きていると思っていますか。」

これは、長女が小2?の頃、地域の保健相談で担当してくれた児童精神科医の先生に言われた質問。
所謂お医者さんぽくなくて、アンジャッシュの渡部みたいな、ローランドみたいに足を組んで座り、ちょっと夜の匂いがしてシャツのボタンもう1個止めたら?と思うような、なかなかセクシーな先生だった。

長女が学校やクラスメートという集団になかなか馴染めなかったことを表向きの相談に掲げつつ、私自身が、彼女の大好きなことへの集中力と、興味ないことにごっそり抜け落ちる関心に、こうあるべきとか、普通はもうちょっとさ…みたいな欲が満たされなくて、本当はワタシが困っていたんだと思う。

「はい、彼女がニューヨークのSOHOで、アート志向の人と彼女らしく暮らしているのが見えます」

と、コンナンデマシタ的なインチキ占い師みたいなことを即答した私に、

「お母さんがそう思っているなら、これから彼女に僕が医師としてお伝えすることはありません。
このままでよいです。」

「は?」
相談に来たのに
治療はいらない?医者?
このままでよい?

「お母さんが、サラリーマンとして一般の企業で働くことを希望しているなら、プレイセラピーとか僕の信頼する医師の心理療法をご紹介しようと思いました。
彼女が身につけた方がその社会で生きやすいスキルがありますから。
しかし、お母さんがお子さんの将来をそう見て、そのように接していかれるなら、彼女はこのままで何のセラピーも必要ありません。」

「はあ」

困ったときは
藁にすがるつもり満々なので
手ぶらで帰されるのも不満で
キツネにつままれた気がしたが

少し時が経つにつれ
このままでいいんだと肯定、太鼓判を押されたのだと安心に変化し
彼女への接し方か変化し
苦手な些細なことはほぼ捨てて苦笑
大好きなことを大事にし続けられるよう後方支援と援護射撃を強化してきて10年。

アートや学問の神が降臨するまでは
熊みたいに彷徨いて
無為無駄にみえる時間を食い潰し
夜中に多いが、閃くやいなや
ぶっ通しのシームレスな集中力で
大学のレポート書いたり、ネットで海外から注文受けてイラスト描いたりしている彼女をみて

先生、私、SOHOに彼女を見送るまでもうすぐですかねーと
心のなかでモールス信号を送信している笑

ここからは説教くさく教訓めいてくるので蛇足。実はこの医師の処方は深く、子供を巡るお悩みや相談は実は親側の問題であり、医師は親を治療しているのだ!

その子はその子らしくて何が悪い。治すところなんてないわけ。直接、身近に、長期に渡り育てるのが親である以上、親の方針の影響を受けざるを得ず、その親子の摩擦係数を可能な限り小さくするのがセラピーなのかもしれない。

1回こっきり。1時間程度の面談で人生の羅針盤になってくれた先生に感謝している。


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