鶴女房みたいな
イマジナリーシスターをお茶にお招きする日曜の昼下がり
お茶請けは
長女が上新粉で作ったモーモーチャーチャー
賞味期限が近いフジッコの黒豆と
いただいた虎屋の羊羹に
次女の同級生の帰省先の岡山から
ご実家のご両親がいつもお世話になっておりますと送ってくれたシャインマスカットをひと粒添えて用意する
ピンポン
予定より30分遅れてインターホンが鳴るけど
キューバ時間な彼女らしく
改めて事前に連絡はない
お土産と広げるのは
淡麗糖質ゼロとコロッケ一個
ちょっとアルコールには早くね?と笑ったけど
台湾スイーツと缶ビールとおつまみで謎のお茶会が始まる
お互いお年頃ということもあり最初の話題は互いの体調だ
元気にやってる?いつも彼女から聞いてくれるけど
私はねダイジョウブなんだよ無罪放免なんだからっていつも言うけど
それでもやっぱりと大変な病気をしたんだからと気遣ってくれる
私なんか甲子園球場行っちゃうくらい元気なんだからそれよりカナコさんは?元気だったの?
と聞くと
うん
年に2回くらいめまいの発作に襲われるんだ
わかってるの
耳石がね動いちゃうと回転性のめまいで
部屋がグルグル回って寝てるしかできなくなる
この前ね なったの 先週ね
げ、ナヌ!先週って
つい最近やんか
ダイジョウブなの
いや気合だね
病って気からっていうけど
あれホントだね
今回気合で治ったよ
いやそういう面もあるけど
気合だけじゃどうにもならないこともあるよ
先週ね義理の母を滋賀に迎えに行って
宮城の自分の実家に連れて行って家族会議をするって
私が言い出しっぺでやろうとした企画だったから
私が動けなくてどうするって動いてたら
なんとかなったよ
いままだちょっとフラッとするけど
やればできるもんだね倒れるかと思ったけど
代わりが効かないと思ったらできたもん
いや、それはなんとか非常事態宣言出して
体が赤色灯点して乗り切っただけで
借金取りは忘れないからね
あの時の目眩の分ですって集金に来るよ絶対に近々
だからその時は休まないとダメだよ
絶対に
休めないのは知っていて
そういう自分の空々しさに恥ずかしくなるけれど
鶴女房みたいな人だカナコさんは
自分の身を呈して誰かの幸せのために生きている
観音様の生まれ変わりなんじゃ
いやもしかして生き仏?
ゆうかリアル観音様なのって聞いてみたこともあるけど
フフフって笑ってた
そう言えばね
実家の母と義母を会わせたんだけどね
義母を東京に引き取って同居しようと思うって
そしららね、母が賛成してくれると思ったら
時期尚早よって反対されたの
認知症があるのは疑いの余地がないってそこには同意するのにね
なんで私のやることに賛成してくれないのかと悲しくなっちゃったわ
とため息をつくから
いやお母さんの精一杯の
娘を傷つけないように意思を尊重した
言葉選びだと思うよ 時期尚早って
正面切って反対するんじゃなくて
判断をペンディングしたらって
棚上げして事態の進行をもう少し待ってから身の振り方を決めたらってアドバイスだよね
そらそうさ
自分の可愛い娘がみすみす苦労するのわかっって賛成する母親がどこに居ろうかいわんや八百屋よ
田舎にしか暮らしたことのない義母が
慣れない東京のウサギ小屋みたいな集合住宅に押し込められたら
ボケが進行するだろうと危惧するほうが普通の判断だし
それに人ひとり引き取る空間的金銭的スペースを捻り出すなんてアンタ正気かって私が親だったらと思うもん
わたいら、まだ子育てに金かかるやんかあ
と
言い過ぎたかもしれないと
幾分かの後悔も含みつつ
精一杯言葉を選んで伝えると
ああそういうことだったのか母の気持ちは
母と話した時にはわからなかったけど
今チコちゃんに話を聞いてもらったら
始めてわかった気がするよ
いやあくまでもこれは赤毛の私見で
お母さんもそう思ったという訳じゃないよ
けどね、そう思うんじゃないかなって
当たらずとも遠からずじゃないかなって思う
チコちゃんに聞いてもらってよかった
ずっと母と仲違いしたままになるところだったかもしれないし
いや
てことはあんさん、お母さんの忠告はきかないつもりなんやねと思いつつ
なんで大変な方ばっかり
カナコさんは選ぶのかなあ
いや私大変だとは思ってないんだ
ワクワクしてるの
家族が一人増えたらどんな暮らしになるかな
って楽しみにしている気持ちがあるの
甘いって言われるかもしれないけど
いや やるのは本人だから
周りがその決断をとやかくいうことじゃないけれど
そう思えるなら
やってみたらいいと思うよ
彼女の場合当たりは鼻セレブくらいやんわりなんだけど
芯はカチコチ中2のチンコくらい硬いから
いやチンコに例えるのは失礼やろうかと思うけど
硬くて熱い真っ直ぐな決意を思ったら
やっぱり中2だろうと思う朝に
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