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【note限定エピソード】春の楽しみ、潮干狩り? ―いいえ、クルマエビ採り!

春や秋など時候がよくなると「家族で外にお出かけ!」という方も多いと思います。
ショッピングモールなど、楽しい娯楽施設に出かけるのももちろんすてきですが、晴れて気候のいい日は、やっぱりアウトドアに出かけたい。その思いは、今も昔も変わりません。
今回紹介するエピソードは、昭和の新居浜・西条のアウトドアな楽しみについてです。

(昔、いまの今治造船があるところでは、よくクルマエビを取っていた、と聞きました。)
そうそう、春とか秋には「いさり」いうて。大潮のときにみんなで海辺に行って、アセチレンランプ持って。石灰を蒸したやつ、カーバイドというんやけど、それに水を入れたらガスが出るの、アセチレンガスが。それに火をつけて。懐中電灯よりもアセチレンランプの方がいい、いうて。でも、臭いんよ、アセチレンは。でも、捕るなら夜のほうがいいからね。エビの他にも、カニ、小魚もおるからね。
昔なんかね、カブトガニなんて砂浜にいっぱいいたの。みんな浜辺だったから、よく遊びに行ってた。西条だと市塚よね。いまの西条警察署を海のほうに行ったところを市塚と言ってたんだけど、そこが砂浜だったの、一面。トリ貝とか、豊富にあったの。トリ貝と海苔は、西条の名物だったんよ。とか言ってたら、なんかすごい年月が経ったなあと思うよね。

ベテラン(?)の新居浜・西条市民にはなじみ深い方も多いかもしれない、燧灘の「トリ貝」。いまでは高級食材として、すしネタや刺身などで食べられることの多い二枚貝です。貝ヒモの干物を食べていた、と語る方も多く、トリ貝が高級食材として認識されている現在に驚き、安価に手に入っていた昭和時代を懐かしむ声もたくさん聞かれました。
そして、クルマエビ。いまでも、天然物は全国屈指の漁獲量を誇る愛媛県で、燧灘は特産地の一つ。特に西条市船屋、いまの今治造船(株)西条工場があるあたりの海辺が最高の漁場だったと記憶されています。そのクルマエビ捕りは、「旬の時期の大潮」という限られたタイミングでしか楽しめない、期間限定の楽しみでした。

船屋に親戚がおったからね、私は。そこを頼って、捕りに行けるんよね。で、捕りにいったときには、こういう角材にね、三寸くぎを打って、そこに柄をつけて砂をがりがりがり、とやるの。そうしたら、飛び出てくるの。クルマエビは、砂の中に隠れてるから。
やけん、大潮のときは親戚が「おい、捕りにこんかい」と言ってくれて、よく捕りに行ってたよね。そうやって言ってくれるくらいね、すごくクルマエビとオノカイ(オオトリ貝の地域名)という巻貝が多かった。
あとは、アサリもよく売りに来よったね。こっちから行くと船屋の手前にある仏崎というところ、ぼくなんかはよくあそこに化石を取りに行ってた。化石がいっぱいあったんですよ。貝の化石。いまは埋め立てられてね、工場が建ってますよね。

「SDGs」の推進などで、近年では「生物多様性」ということばが耳なじみのあるものになりましたが、かつての新居浜・西条市民はこのような「クルマエビ捕り」などを通じて、意図せずして「生物多様性」や「海の豊かさ」に触れていたのかもしれません。

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