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小説【雨の匂いとシャンプーの香り】3
3
次に目を開けた時膝の上にいた千春の姿はなく、時計を見ると10分程寝て居たらしい。
「あれ? 千春は? 千春…千春…」
見る限り千春の姿が見えなく、テーブルに『ありがとう。バイバイ…』とだけ書かれたメモ紙があった。
千春帰ったのかな…。
自分の部屋を見に行くと濡れた制服がハンガーに掛けられたままだった。窓から外を見たが千春の姿は何処にも無かった。
何処行ったんだよ、あのブカブカの格好で帰ったってのか? 制服置いて帰られてもな…。
とにかく千春の携帯に電話をすると、濡れた制服から着信音が聞こえ出し、ポケットを探るとリップクリームやハンカチと一緒に薄ピンクの携帯が見つかった。
「何でこんなにボロボロ何だよ」
使っていて自然に塗装が剥がれる事があるが、そんな度合いを越え傷だらけだった。突然僕の携帯が鳴りだし直ぐに出た。
「はい…」
「あぁ祐斗」
「何だ母さんか…」
「千春ちゃんのお通夜来ないの?」
「はぁ? 千春の?」
「だから今朝話したでしょ。昨日の夜7時頃千春ちゃん車に撥ねられて、母さんの病院に運ばれて来たんだけど、間に合わなかったって」
…えっ?
あっ…。
確かに言われた覚えがあった。
何で忘れてたんだろう。
でもそれじゃ、さっきまでここにいたのは誰?
…えっ、千春が死んだ…
千春が?
母の「聞いてるの祐斗?」と言う問いかけに応えてる余裕も無く、通話を切り僕はボロボロの千春の携帯を開くとメール画面が表れ、昨日の7時頃書いたであろう僕宛の未送信メールを見つけた。
《ねぇ祐斗、離れてみて分かったんだけど、私ね祐斗が好き…。
冗談じゃ無いよ。
ホントに祐斗が大好き…》と。
ここまで書いたんだったら送れよ…。
俺だってようやく千春に伝えられたと思ったのに死んだって何だよ…。
さっきのが最期の別れって言えないだろ…。
もっと言いたい事あったのに…。
僕は千春の携帯を両手で握り泣いていた…。
≪end≫
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