「位人臣を極めた」 古野まほろ『警察の階級』:創作のためのボキャブラ講義42

本日のテーマ

題材

 この部長のうち、刑事・生安・交通・警備といった現業部門を担当する部長は、その部門/ギルドにおいて位人臣を極めた警察官、いわゆる『〇〇の神様』であるととらえてください。

(第6章 警視正)

意味

位人臣くらいじんしんを極める
 臣下として最高の地位に就くこと


解説

作品解説

 古野まほろは『天帝シリーズ』や『セーラー服と黙示録』シリーズで有名なミステリ作家である。比較的新しい作品群では警察小説が多く、また新書で警察に関するものもいくつかある。本著もその中のひとつで、警察の階級について詳細に書かれている。

 あえて重複を恐れない記述により各章ごとに分かりやすく、制度上、実務上の両面から実態を記しているので具体的なイメージも抱きやすい。創作で警察を出すなら手元に持っていて損のない参考資料である。

 今回の題材となる箇所は、警視正についての項目。警視正という階級の警官がどういう立場に就くか、という点が記述されている。抜き出した箇所だけを読んでも分かる通り、警察において警視正がどういう立場で、どういう能力を期待されているかがよく分かるだろう。

臣下として

 位人臣を極めるという言葉は、単なる出世や栄達を意味する言葉ではなく、「臣下として」というニュアンスを含む言葉のようだ。つまりトップではなく、仕えるべき主君がいて、その下の中で、ということだ。

 警察官は公務員であるからこのニュアンスはとても正しいのだろう。古野まほろと言えば衒学的な言葉使いによる記述が小説では注目されることもあるくらい、特徴的な語りをする作家なのだが、新書ではむしろ分かりやすい。単なる癖ではなく言葉をよく知っているからこその記述なのがよく分かる。

 ちなみに警視正は全員が国家公務員だという。地方の各都道府県警から成り上がってきた警察官も警視正に昇進した時点で国家公務員。警察は国家公務員と地方公務員の両方がいるが、仕事の性質から一定程度昇進すると地方で働く警察官も国家公務員となるようだ。

作品情報

古野まほろ『警察の階級』(2020年9月 幻冬舎)


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