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古書店

 東京の、ある古書店&ギャラリーで個展をさせてもらったことがある。
 故あって絵から離れていた私は、ホビー用の粘土を使った立体的な表現を試みていたのだが、その未熟な粘土作品の展覧会を開いてくれたのがそのお店だった。
 かたくなに絵にこだわって生きてきた自分が、すがるような気持ちで粘土を使った彫刻作品に挑戦し、とにもかくにも展覧会という形で発表することができた。粘土の彫刻作品を気に入ってくれるお客さんがいたことも励みになった。

 
 その古書店&ギャラリーは私にとって特別な場所となり、いつかもう一度そこで個展を開きたいと思うようになった。次の個展の際には、そのお店の象徴である“本”をモチーフにした作品を用意しようと考えた。
 少しずつだが再び絵も描くようになった私は、本と人物を題材にした4枚の油絵に着手した。しかしその作品が完成する前にお店はなくなってしまった。これはその中の一枚。


小さい本田さん   ヨナ

 絵と彫刻、そしてマンガと・・・。未熟で恥ずかしくて、誰かに求められているわけでもないのに、それでも新しい表現に挑もうと思えるのは、あの古書店での個展があったからかも知れない。

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