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リモート会議での「トラウマ」を通じて、自分から皆さんにお願いです。

昨今の情勢でテレワークが主流になり、在宅勤務がメインに切り替わってから、もう1年近くが経つ。
仕事をする相手と直接会えないことによる制約も、コミュニケーションツールの使い方である程度は乗り越えられるようになってきて、新しい働き方にも慣れてきたつもりでいた。

そんな中、先日「トラウマ」になりそう…とまで言うとちょっと大げさかもしれないけど、イヤだな、と思った出来事があったので、自分からのお願いもかねて書き残しておこうと思う。


きっかけは、いつぞやのチームミーティングでの話。
このチームの業務に、新しいプロセスを取り入れようと提案がされた。
他のチームでは既に取り入れているプロセスで、自分も以前、そのプロセスに沿った業務経験があったので、概要を説明させてください、と立候補した。

説明会は、リモートでの開催となった。
自分も在宅での参加となる。
知らない人たちに説明するので、自分が説明する中で都度疑問が出てきて、その質問に回答する中でみんなの理解が深まっていく…そんな進行を期待していた。

事前に議題も送付した。
「他に聞きたいことがあれば、説明会前に連絡ください」と添えた一文はあっさりスルーされたが、説明する中で疑問が浮かべば聞かれるだろう。
今思えば、こんな甘い思惑を浮かべていた自分の落ち度を認めざるを得ないが。


説明会の時間になる。
会議部屋の画面には、表情が見えない代わりに、参加者のイニシャルが書かれたアイコンが続々と並び始めた。
音声ミュートマークを添えて。

概要説明のための資料を画面共有し、説明を始める。
特急で準備したので、説明内容を纏めきれていない感じは否めなかったけど、「今のところよく分からなかったから、もう一度説明して」とコメントが入って、説明し直すことでカバーしたいなと思っていた。
(やっぱり、今振り返ると自分の考えがどこまでも甘い…)

「ここまでで何か、分からないことありませんか?」
途中まで説明したところで、いったん中断して聞いてみる。

誰も何も発言しない。
全員が音声ミュートの状態が続く。
僅か数秒のことだったが、自分には永遠に沈黙が続いているように思えた。

「…じゃあ再開します」
想定以上にリアクションが無いことに困惑しつつも、説明を再開した。

ひとりきりの自室に、自分の声だけが虚しく響いた。


その後も何度か説明を止めて、参加者からの質問を募ってみたけど、誰も何も発言しないのは変わらず。

そのうち、どんどんやるせなくなってきた。
なんで、知らないことの説明を聞いているのに、誰も何も思わないんだろう?何も感じずに聞き流せるんだろう?
自分の説明が下手なのか?じゃあせめて「説明下手ですね」ぐらい言ってもらえないのか?
というか、みんな本当に聞いてくれてるのかな?
姿が見えないことをいいことに、他の業務をやって全然聞いていなかったり、あるいは寝たりしてるんじゃないだろうか?

参加者のアイコンが徐々に、能面のように見えてきた。
目を閉じて、思考回路している…そんな表情。
誰にも自分の言葉が刺さらない。
自分事として考えてもらえていない。

「一方的に話すのもあれなんで、何でもいいんで喋ってくれませんか?」
悲痛も混じっていたであろう自分の喋りに呼応して、1人の音声ミュートが外れた。
そのプロセスについて自分から事前に説明していて、概要も知っているであろう、自分の直属の上司だった。

助け舟と言わんばかりのフォロー。
その議論から、「じゃあ自分も一つ聞いていいですか」みたいに他の人も巻き込めたらよかったけど、当然そんなこともなく。

おびただしいほどのモヤモヤを抱えたまま、説明会は終了した。
結局、自分が言いたかったことはどれだけ伝わったんだろう。
みんな理解できたんだろうか。
このまま新しいプロセスを取り入れたところで、本当に得たい効果は得られるんだろうか。

次の日。
一部のチームメンバーと集まって別の定例。
前日の説明について感想を聞いてみた。

「なんか、『ふーん、こんなもんなんだ』って感じだったよ。やり始めないと分からないんじゃないかな」
との返答が。

全く分からないモノに対する説明を、『ふーん』の一言で片づけられる。
みんなそんなもんなのか。
何かしら自分の中で咀嚼して、都度疑問を生みながら、それを解消しながら理解していくんじゃないのか。


…そんなもっともらしいことを言ってみた後で、ふと
自分が新人の頃に受けた、集合教育での一幕を思い出した。
まだ、対面で講義を受けていた頃。

講師の方の、はつらつとした挨拶で講義が始まり。
講義が進む。
途中で「ここまでで何か、質問ありませんか?」と講師の方からの呼び掛け。
自分含め、誰も何も発言しない。
寝ている人も現れ始める。
返答の無さに、序盤のはつらつさが消え失せて焦りも入り混じりつつあるような表情を見せる講師。
側に座っていた、その人の上司とおぼしき人からくる、助け舟のような質問。

当時の講師の心情が、今になってようやくわかった。
当時の自分もまさしく、『ふーん』の一言で全てを聞き流していた。
些細なことでも、的外れなことでもいいから何か聞いてみればよかった。
聞き手が知識を理解するだけではなく、話し手が言いたいことが伝わったことがわかるために。


ということで、今テレワークしてるよ、リモートで会議や説明会もやってるよ、という方々に、自分からお願いです。
どうか、その会議や説明会で、積極的に議論してください。
どんな些細な疑問や引っ掛かりでも、的外れなことでもいいです。
会議や説明会は、話し手が一方的に知識や主張を伝授するだけではなく、聞き手が「それを理解できた(できなかった)」という応答があって初めて成立するのだと思います。
リモートで、聞き手の表情などを機微に感じ取りにくい昨今ならなおのこと、言葉でそれを伝えてください。

顔が見えない、自分以外の声が何も聞こえない…
そんな状況で、一人で喋り続けるのは、やったことない人には全然想像できないほど体力、気力を消耗する、というのもあります。
聞く側も、その労力に応えてあげてください。

特に、若手の人が喋るときには、フォローも兼ねて積極的に尋ねてあげてください。
貴方にとっては些細なことでも、話し手にとっては新たな気づきになるかもしれないから。


こんなこと、偉そうに言えるほどできる人間ではないですが(笑)
よろしくお願いいたします。

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