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禍話リライト【双子の話】

あなたは1番最初の記憶を憶えているだろうか?
これは私の1番古い記憶と、祖母の話です。


私の実家は海と山に挟まれた田舎にありました。
大きくはないですが、畑をずっと続けているような、田舎の手本のような家です。
私が幼い頃は、ご近所さんも屋号で呼ぶような環境でした。
私の祖母は、現代なのに、近世の話をするような人でした。

ある日、クラスメイトのお母さんが双子を出産しました。
身近になかったことなので、夕飯を食べながら家族にその事を話しました。

「双子か…そりゃ、大変やね…」
それだけを言って、黙り込む祖母。

「…へえ、そうなんだ…」
母も祖母同様、反応が薄かったのがやけに気にかかりました。
と言うのも、以前その友達のお母さんの妊娠が分かって
「今度○○くんお兄ちゃんになるんだって」
と話した時は、反応が良かったからです。
ただ、その時はあまり気にしませんでした。


そんな事があったことも薄れるほどに年月は経ち─
ある時、先祖代々大事にしてきた仏壇を修理することになりました。
専門業者に引き渡す前に、自分たちで多少は綺麗にしようと丁寧に拭き掃除をしていました。
普段は開けない引き出しを開けると、1つの位牌が出て来ました。

(なんで引き出しに位牌が入ってるんだろう?)

「ちょっとお父さん、引き出しにこんなものが入ってたんだけど?」

「…あぁ…引き出しに入ってたのか…」
やけに暗いテンションで答える父。

「実はお前には双子のお姉さんがいて、生まれてすぐ亡くなったんだ…それはその子の位牌なんだよ」

自分が見つけなければずっと言わなかったかのように、唐突に言われました。
位牌を見つけただけでも驚きなのに、それが実の姉のものでしかも双子?

「…なんで引き出しに閉まってるの?」

「いや、それは分からん…」

父は明らかに嘘をついていて、なにかを隠しているようでした。
私は双子について調べることにしました。

昔、多胎児は縁起が悪いものとされていた。
人は子を一人だけ産むものだという考えが「常識」であった。
双子は人間ではなく動物、獣。
そこで、双子を異常な誕生として一部の地域では「畜生腹」と蔑称で呼んだという。
また、男女の双子は心中者の生まれ変わりとも言われ、余計に嫌われた。

このような、現代ではとても理解できないような因習の存在を知りました。
近世の思想が強かった祖母は、姉を荼毘に付した後、位牌を引き出しに閉まったのではないか。
という事は、片割れの自分も避けられる対象だったのではないか。
そう思ったのが、私の1番古い記憶なんです。


そんな、祖母の異様な思想を裏付ける出来事がありました。
3つ年が離れた兄と、家の中で追いかけっこをしていた時です。
私は転んで、床に頭をぶつけて意識が飛んだのです。
目が覚めた時、転んだ場所で仰向けになって気絶していたようなのですが、無表情の祖母がジッと私の顔を覗き込んでいました。
その日、家にいた大人が祖母だけだったので兄は呼んだのでしょう。
しかし、幼い子供が転んで倒れていたら医者を呼ぶなり、近所に助けを求めるなりするはずです。
それなのに、私の目が覚めるまで動物を観察するように見下ろしていた祖母には言い知れぬ恐怖を感じました。
その後、救急車が来ることもなく、何事もなかったように日常に戻ったのです。
大事には至らなかったから良かったものの、あまりに無機質な対応でした。
当時の事は両親にも怖くて聞けず、今に至ります。

忌み子として葬られた姉と、古い因習に囚われた祖母。
これが私の一番古い記憶です。
今でも、ふとした拍子に、あの無表情で私を覗き込む祖母の顔を思い出して嫌な気持ちになります。



このリライトは、毎週土曜日夜11時放送の猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス「禍話」から書き起こし、編集したものです。
該当の怪談は2023/03/04放送「禍話アンリミテッド 第八夜」16:50頃~のものです。


参考サイト
禍話 簡易まとめWiki様


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