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禍話リライト【霊園の再開】


「霊園ってやっぱりお化けとかいるもんなのか?」

ある日、かぁなっきさんの元に高校時代からの旧友Rさんから連絡がきた。
彼は、かぁなっきさんが怖い話をしても冷たい顔をするような、オカルトとは距離を置いた奴だった。
それが急にベタな事を聞いてくるのでとても驚いたという。
結婚もして、子持ちのパパでもある彼に何が起きたのだろうか。
とりあえず話を聞くことにした。


その日、Rさんは仕事帰りに会社の後輩と呑み、千鳥足で歩いていた。
途中、大きな霊園に差し掛かった時

「こんなデカいとこあるんですね!」

「有名な偉人の墓もあるらしいぞ」

「ちょっと行ってみましょうよ」

外灯もあり、キチンと区画整理されたところだった。
偉人の墓を探し回るが、地図があるわけでもなくなかなか見つからない。
偉人というよりは地元の名士、という人だったらしく、大きく宣伝されているものでもない。
これじゃ見つからないだろうと、墓探しにも飽きたのでRさん宅で飲みなおすことになった。

「けっこう奥まで来ちゃいましたね」

「こっちの方が近いから、こっちから行こう」

大まかな道がわかるRさんが道案内を買って出た。
少し歩いていると、向こうから若い女性2人が歩いてくるのが見えた。
こんな時間に学生だろうか。
別に立ち入り禁止の場所ではないが、わざわざ霊園を通るなんて珍しいものだ。
しかも、初冬にしてはかなり涼しげな恰好をしている。
よくよく考えればおかしいのだが、そこは酔っ払っていたのでさして疑問に思わなかった。

その子たちとすれ違いざま、1人が顔をグッと寄せてきて

「この間はどうも~ありがとうございました~」

全く身に覚えのない顔に、後輩に言ったのかと思い振り返ると、後輩もポカンとしている。
呆然とする自分たちを余所に、彼女たちはペコペコお辞儀をしながら角を曲がっていった。
突然のことに面食らっていたRさんだったが、あることに気が付いた。

(……そこの角を曲がっても通りには出られない、行き止まりのはずだ)

「え....…なに今の?」

奇妙な出来事に少し酔いが醒めた。
あらためてさっきの出来事を思い返す。

「やたら涼しげな恰好してなかったか?」

「そうっスね」

「先輩に向かってムリヤリ笑顔作ってましたけど、知り合いですか?」

「いや、知らない。お前の知り合いかと思ってた」

「俺だって知りませんよ」

〔人見知りな人がお酒の力を借りて無理矢理テンションを上げ、社交的な感じで交流を図ったようだった〕
それが後輩との共通認識だった。
だからこそ余計に気持ちが悪い。

「なんか気味悪いな…」

「あと追いかけてみますか?」

「やめとけ、それより早く帰ろう」

女性2人は引き返してくる様子もなく、彼らの前には暗く静かな墓地が広がるばかり。
とても飲み直す気分ではなく、結局その日は各自帰宅となった。


「酒臭っ…!」

嫌そうな顔をして玄関で出迎えてくれた妻に謝罪しつつ、Rさんはさっきの出来事をさっそく話す。

「お前、もともとこの辺地元だったろ?さっき気持ち悪いことがあったんだよ。霊園の中を近道として入ってったらさ……etc」

「え?それって私をからかってるんじゃなくて?」

「からかってねぇよ、なんだよ?」

「大体で良いんだけど、その子たちに会ったのって霊園のこのあたり?」

彼女は簡単な地図を描いてRさんへ尋ねた。

「…確か…その辺かな」

「その近くに、柄杓とかバケツが置いてある水場がなかった?」

「……あぁ、あったかも。コンクリで簡単に仕切りが作られた一画」

「えぇ、マジか……でも、あの時Rは出張行ってたから知らないか。そこでさ、女子大生2人が睡眠薬呑んで自殺してるんだわ」

「な、なんだよそれ!?」

「遺書も見つかったんだけど内容が意味不明で…結局わからないままなんだよね。でも夏ごろにそういう事件があったのは間違いないよ」

「そんな話、全然教えてくんなかったじゃん!百歩譲ってお化けだとして、なんで俺に挨拶してくんだよ?」

「いや、わかんないけど…。でも夜道で変な女子大生に会っただけなんじゃないの?」

「それなら良いんだけどさぁ……」

このままでは怖いのでお祓いに行こうかとも思ったが、どこに行けばいいのか分からなかったので、結局行かずに終わった。
しかし、その後は特に何も起こらなかったという。


「…気持ち悪い話だけど、夜道で変な女子大生に会っただけなんじゃないの?」

話を聞いたかぁなっきさんは、冗談交じりにRさんへ尋ねた。

「俺もそうなんだと思うんだけどなぁ…だけどな」

確かにRさんの身には何も起きなかったが、一度だけ不思議なことがあったという。

ある日、共に怪異に遭遇した後輩が風邪で会社を休んだので、仕事終わりに見舞に行くことにした。
喉は平気だが、とにかく熱が辛いらしい。
昼休み、電話で様子を確認することにした。

「1人暮らしで大変だろ、なんか欲しいものがあったら買っていくぞ」

『嬉しいっス…よろしくお願いします…』

(思ったより辛そうだな……あれ?)

電話口で苦しそうに話す後輩の後ろで何かが聞こえる気がする。
人の話し声だろうか。

「ん?お前、風邪で寝込んでるんだよな?」

『そうですよ、何言ってるんですか?』

「もしかして彼女とか看病しに来てるのか?」

『…俺、いま彼女なんていませんよ!』

「窓が開いてて、外の音が聞こえてるのかもしれないけど…女性が何人かで盛り上がってるような声がするんだよ…」

『ちょっとやめてくださいよ、俺のアパートは昼間は誰も居ないんですよ!部屋の前の通りも車走ってないし!』

そんな部屋に1人で居られるはずもなく、後輩は高熱で苦しみながら会社のロビーでRさんの仕事が終わるのを待っていた程だった。
仕事終わりに買い出しをして2人でアパートに戻ると....…誰も居ないし、何の気配も感じなかった。
その後は本当に何も起きていないという。


かぁなっきさんはこの話を聞いて、あちこちで情報収集をしたところ、墓で自死する人はけっこう多いらしい。
広めの霊園だと、その傾向は強くなるという。
亡くなる方は身寄りのない人やホームレスに近い人も少なくないので、ニュースで目にすることはあまりないが、近所の人に伝わるくらいには起きているとのことだ。


霊園とはいえ"墓地"には変わりない。
いくら近道になるからといって、悪戯に歩き回るのは良くない。
霊園の怖さは、墓の中にいるものだけとは限らないのだから.......。



このリライトは、毎週土曜日夜11時放送の猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス「禍話」から書き起こし、編集したものです。
該当の怪談は2020/03/21放送「ザ・禍話 第二夜」3:10頃~のものです。



参考サイト
禍話 簡易まとめWiki様


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