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VO2maxゾーンって何だ?④ クリティカルパワー

VO2maxゾーンシリーズ最後の記事は、クリティカルパワーというものがVO2maxゾーンとそれ以下の境目を決めているよという内容をお伝えします。

是非、読み進めてみてくださいね。



クリティカルパワー(CP)とは?

スポーツ科学系の論文ではFTPよりも、このクリティカルパワーという用語の方が圧倒的にメジャーです。

「疲労しないで長時間維持できるパワーの最大値」といった意味合いも含まれるので、だいたいFTPに近い概念にはなります。

クリティカルパワーという概念のいいところは、そのパワー値以降はどんどん酸素摂取量が増えていくことが分かっている点です。


この図のように、クリティカルパワー以降(VO2maxゾーン)では縦軸の酸素摂取量が増えていって、ある時点でVO2maxに達します。

酸素の取り込みが増えていく理由は一つ前の記事で説明をさせてもらったように、速筋線維の回復に酸素が大量に必要であることが挙げられます。

酸素摂取量の増加に歯止めがかからなくなる境目、それがクリティカルパワーです。略してCP(Critical Power)。



無酸素パワーのストック

クリティカルパワー以降の高いパワーは無酸素エネルギーに頼る部分が大きいことが分かっています。

クリティカルパワーが盛んに研究されているのは、この概念を使うと無酸素パワーのストックがけっこう厳密に計算できることがその理由の一つです。

たとえば以下のようなシチュエーションが大会中にあったとします。

  • ヒルクライムで始めに飛ばし過ぎて、後半20分は全くパワーが上がらなかった

  • レースペースのアップダウンが激しくて、ラストの脚が残らなかった

  • 相手の脚を削るためにペースを上げた

これらは全て、無酸素パワーのストックに関係しています。

クリティカルパワーの概念では、この無酸素パワーのストックを高い精度で計算できるとされています。

クリティカルパワーと対の概念で、「W'」というものが出てきます。こちらが無酸素パワーのストック分を上乗せしたパワーを表していると考えてもらって、下の図をご覧ください。


W’の曲線が、無酸素パワーのストックを使って維持できる上限値です。

数分~数十分はCP(クリティカルパワー)よりもW'のストック分、高いパワーを維持できますが、ストックには限りがあるため時間が長くなるほどCPよりも少し上のパワー出力をキープできるにとどまります。

無酸素パワーのストック(W')は出力パワーが非常に高ければ短い時間(数秒~数分以内)で枯渇して、クリティカルパワーよりも少し高いパワーだと割合長い時間(数分~数十分)でストックを削っていきます。

無酸素パワーのストックを削る領域、それがVO2maxゾーンです。



クリティカルパワーはどうやって測定するの?

レースで無酸素エネルギーをむやみに使わないためにも、トレーニングでVO2maxゾーンを鍛えるためにもクリティカルパワーを知っておくと大変便利です。

最も精度が高いとされている測定方法は2-15分の内の4点で全力走を行うものです。かなり辛い。。

一方で3分間全力走の精度も高いとされています。私たち一般人は、こちらのテストの方が解釈しやすいと感じますので、測定の仕方などについてまた記事をまとめますね。



以上でVO2maxゾーンについての記事を終わりにしたいと思います。

スポーツ科学的な視点でVO2maxゾーンを眺めてみると、ただただ辛いゾーンだという思いにプラスして、レースの戦略やVO2max系のトレーニングについて深く考える材料にもしてもらえるかなと思います。

皆さんの日々のトレーニングがより豊かなものになることを願っています。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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参考文献

  1. Burnley, M., & Jones, A. M. (2018). Power–duration relationship: Physiology, fatigue, and the limits of human performance. European Journal of Sport Science, 18(1), 1–12. https://doi.org/10.1080/17461391.2016.1249524

  2. Jones, A. M., Vanhatalo, A., Burnley, M., Morton, R. H., & Poole, D. C. (2010). Critical power: Implications for determination of ⊙ O2max and exercise tolerance. Medicine and Science in Sports and Exercise, 42(10), 1876–1890. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e3181d9cf7f

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