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#31 MLSSのときのRPE、呼吸数の推移



はじめに

前回記事(レビュー#30)ではMLSS(血中乳酸定常状態)から10ワット前後ほど高いパワー発揮で、既に血中乳酸値の上昇が続く強度になることを紹介しました。

パワーゾーンにおいて最も重要なものはFTP = MLSS の設定だと思います。ここがずれると、ゾーンを分ける意味合いが薄れてしまいます。

たとえばFTP以下の血中乳酸値が一定に保たれるゾーン、それ以上の血中乳酸値の上昇が続いて、酸素の取り込みも増えるゾーンといったように区分しているつもりが、

FTPの設定値がご自身のMLSSの値よりも高くなってしまっている場合、FTP以下の強度、つまり血中乳酸値が一定に保たれる強度以下でトレーニングを行うつもりが、それ以上の強度でトレーニングを行ってしまう可能性があります。

このようなずれが大きくなるほど計画と実際の食い違いが大きくなって、思うような成果が上がらない要因になることも考えられます。

ですのでFTPの値をMLSSの値に一致させることが大事になってきます。

しかし残念ながら私たちは日常的に血中乳酸値を測定することはできませんので、おおよそを把握するしかありません。

今回の論文ではMLSSの強度とMLSS+10wの強度において呼吸数やRPE(主観的運動強度)に違いがあることを示してくれています。

このことを利用して、現在設定しているFTPがMLSSとかけ離れた値になっていないかを把握する方法を提案してみたいと思います。

是非、読み進めてみてくださいね。


MLSSパワーとMLSS+10wパワーで30分漕いだときの違い

日頃トレーニングを行っている20-40代の男性11名が検証に参加しています。VO2maxの平均値は51mL/kg/min、おおよそ40-63mL/kg/minの範囲。

各参加者はMLSSの乳酸値測定が行われてから、MLSSとMLSS+10wパワーの30分間走が実施されました。


各測定値の推移


血中乳酸値の推移

まず血中乳酸値の推移の結果を下図にお示しします。白丸がMLSSで黒丸がMLSS+10wの推移です。MLSSでは血中乳酸値が一定であるのに対して、MLSS+10wは上昇傾向にあることが読み取れます。


心拍数の推移

続いて心拍数の変化です。MLSSでは30分後に最大心拍数の90%に達しており、MLSS+10wでは最大心拍数の93%に達していました。

最大心拍数の90%か93%の違いは心拍数5bpmほどの違いになりますので、主観的な辛さや息切れ感に大きな差が出てきます。


呼吸数の推移

呼吸数は10分後と30分後を比べてみると、MLSS強度では一分間に3呼吸増えて、MLSS+10wでは一分間に8呼吸増えています。

スマホにメトロノームのアプリがあれば、以下の3パターンで呼吸をしてみてください。

  • 40拍/分のリズムで呼吸をしてみる(吸う→吐く両方行って1拍です)

  • 43拍/分のリズムで呼吸してみる

  • 48拍/分のリズムで呼吸してみる

3呼吸/分の増加であれば少し増えたなと感じる程度ですが、8呼吸/分も増えるとかなり増えたと感じますね。


RPEの推移

続いて、RPE(主観的運動強度)の変化です。

今回は10スケールで数値化されています。

0:何も感じない
1:かなり楽
2:楽
3:中くらい
4:ややきつい
5:きつい
6:-
7:かなりきつい
8:-
9:-
10:非常にきつい

RPEについて詳しい結果の記載がなかったのですが、MLSSでは10分後から20分後にかけてはあまり変化せず、その後少しRPEが高くなっています。一方MLSS+10wでは開始10分以降でもなだらかに上昇していることが読み取れます。


結果のまとめ

以上の結果をまとめてみます。

  • MLSSから10w高い強度で、血中乳酸値は上昇を続ける

  • 心拍数はMLSS、MLSS+10wどちらも時間とともに増加する。30分後、MLSSは90%HRmaxに、MLSS+10wでは93%HRmaxになった

  • 呼吸数は開始10分後と30分後を比較すると、MLSSでは3呼吸/分、MLSS+10wでは8呼吸/分増えていた

  • 主観的運動強度は、10分後以降にMLSSでは微増なのに対して、MLSS+10wでは増加傾向が強い


現在設定しているFTPがMLSS相当かをチェックする

以上の結果から現在設定しているFTPがMLSS相当か、MLSS以上なのかをチェックできそうです。

チェック方法としては、現在設定しているFTPで30分間走ってみて以下の3点を評価します。

【終了時の心拍数】
最大心拍数の90%程度:適正
・最大心拍数の93%以上:強度が高い可能性

【開始10分後と終了直前の呼吸数の変化】
+3-5呼吸程度:適正
・+8呼吸前後:強度が高い可能性
メトロノームなどを使って、どのくらい変化があったのかを終了後にチェックしてみましょう。

開始10分後から5分おきにRPEを記録
変化を感知しやすくするために、0.1刻みでRPEをチェックします。
開始10分後から終了までの推移、また開始10分後と終了時のRPEを見比べて、
・RPEの変化が1前後もしくは微増:適正
・RPEの変化が1以上で、右肩上がり:強度が高い可能性

3つのうち2つ以上で適正を超えた結果であれば、現在のFTPの設定値がMLSSよりも高くなっている可能性が高いかもしれません。

別の日に10wほど強度を下げて、再びチェックしてみると良いかと思います。

そもそも現在の設定値では30分以上も走れないと感じていらっしゃる方は、恐らくその設定値はMLSSを超えています。20wほど下げた強度で実施してみてください。

あくまで今回の論文を参考にしたチェック方法ですので、その点をご留意くださいね。


より良いトレーニングを目指して

今回は論文を参考にして、現在設定しているFTPがMLSS相当なのかをチェックする方法をご提案してみました。

私の場合、Stravaなどのパワーカーブや20分間テストで得られるFTP値は、実験の被験者として血中乳酸値を測定しながらランプテスト(漸増負荷試験)を行って分かったものよりも20wほど高い値となります。

もちろん20分テストなどの結果が適正なMLSSになる人もいますし、またMLSSよりも高い結果になる人もいます。

大切なのは適正値を設定することにありますので、現在の設定値が適正かどうかを様々な情報から確かめられると、より自信を持ってトレーニングを行えると思います。

もしご自身の現在の設定値に不安がある方は、一度上記の方法を試してみてくださいね。


今回も最後までお読みくださりありがとうございました!


ご紹介した論文

Iannetta, D., Inglis, E. C., Fullerton, C., Passfield, L., & Murias, J. M. (2018). Metabolic and performance-related consequences of exercising at and slightly above MLSS. Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports, 28(12), 2481–2493.


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