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#42 量と強度、どっちが大切なの?【強度推し編】

前回の記事では「量」を推している論文を紹介してみました。

今回は反対に「強度」を推している論文のご紹介です。

「量」を推す場合、かなり期間の長い経過をみる必要があるため論文数が限られてしまいますが、

逆に「強度」を推すような論文は比較的短期間で結果がはっきりするため、結構たくさんあります。

それこそ以前にご紹介した、高強度インターバルトレーニングの効果をみた研究は「強度推し」です。

今回の記事ではトレーニング介入を行っていないものの、状況証拠的に高強度のトレーニングを推す論文をご紹介してみます。

是非、読み進めてみてくださいね。



ケニアのエリートランナー13名を検証

ご存じ、最強陸上王国ケニア。

世界陸上でケニア人を見ないことはありませんね。

今回は研究当時(2002年)に全ケニア選手権(この言い方が合っているかは分かりませんが、全日本のイメージです)で16位~30位に入った男性13名が調査対象になっています。

ちなみに彼らはケニアで長距離選手を多く輩出しているKisii(キシイ)出身ということでした。

彼らを練習記録とインタビューによって高強度トレーニンググループ(6名)と中強度トレーニンググループ(7名)に分けています。

筆者らが「高強度トレーニングが優れている」と評価した筋道を先にお伝えしておきます。(あくまで川崎が論文を読んだ中で感じた筋道です)

・全ケニアで16~30位に入った選手を集める


・トレーニング記録から二つのグループに分ける(高強度vs中強度)


・どちらのグループの方が10kmタイム(パーソナルベスト)が早いのか?また生理学的な能力が高いのか?


・グループ間に差があるということは、そのトレーニング方法が影響しているのではないか

という筋道かと思います。

果たしてグループ間にどのような違いがあったのでしょうか?



高強度グループvs中強度グループ

以下、10kmの記録(パーソナルベスト)とその他の能力の結果です。

全ての結果で、高強度グループが統計的にみて優れていました。

◆10kmパーソナルベスト
高強度グループ:28分15秒±15秒
中強度グループ:28分54秒±33秒

※現在の世界記録は26分11秒、日本記録は27分18秒
※1998年には歴代3位の26分22秒が記録されています。検証された選手たちは「世界のトップ」ではなさそうですね。

◆VO2max
高強度グループ:78±2mL/kg/min
中強度グループ:75±3mL/kg/min

◆VO2max時の走速度
高強度グループ:22.7±0.6km/h
高強度グループ:21.6±0.4km/h

◆乳酸閾値(LT)時の走速度
高強度グループ:20.2±0.4km/h
中強度グループ:19.9±0.4km/h

このような結果と、過去の論文による高強度トレーニングの効果を照らしながら考察が展開され、

まとめとして今回の検証で高強度グループが能力的に高い結果となったは、高強度トレーニングに要因があるのではないかとまとめられています。

当時はケニア人の方が世界のトップでどんどん活躍するようになり、なぜケニア人は強いんだ?という検証がホットなトピックになっていたようです。

高強度トレーニングが重要視されている現在の流れは、ケニア人のトレーニング内容が、他の選手に比べて高強度のトレーニングを多く取り入れていたことにも多分に影響されています。

高強度トレーニングが大事だとする結論への持っていき方がやや強引では。。?と感じるところもありますが、

高強度トレーニングを支持する論文に度々引用されている論文でもあるため、ご紹介してみました。


次回の記事では「量と強度、どちらも推し」の論文をご紹介する予定です。

また読みに来てくださいね。

今回も最後までお読みくださりありがとうございます。

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合わせて読んでもらいたい記事

ご紹介した論文

Billat, V., Lepretre, P. M., Heugas, A. M., Laurence, M. H., Salim, D., & Koralsztein, J. P. (2003). Training and bioenergetic characteristics in elite male and female Kenyan runners. Medicine and Science in Sports and Exercise, 35(2), 297–304. https://doi.org/10.1249/01.MSS.0000053556.59992.A9

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