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こどもの一人暮らしまであと3日

コロナ禍の就活で様々な失望と企業人とはどういう人たちなのかを知ったうちの子も4月から社会人。就活中の様子から、遠くの配属もあるだろうと腹をくくりつつ、寂しいだろうなあとなんとなく用心していた。思うようにいかない就活の様だったが、キャリアコンサルタントとしてES作成などの意見を求められる時以外は、口を出さないようにしていた。ある日「結局、就活はおわりました。」と切り出された。「こういうわけで、こうなって、で、わたくしは会社の借り上げのマンションにはいるわけですよ。」業種を変更した結果あっという間に、そして突然終わったようだった。

おお、そうか。と思ったが、その日からこの子との日々の終わりのカウントダウンが始まった。

まだ、夏、まだ、秋、まだ冬、お、年が明けた、まだ、2月、う、3月か。いつ引っ越すんだろう。まだ1週目、2週目か、住所が決まったらしい、あれ?家電とか買わなくてよいのか。買うよね。車の免許はとったけど運転に慣れておかなくて平気なのか?だめだろう。毎日練習しよう。といった具合に今日にいたった。どうも28日に引っ越しらしい。

今時は実家からの自分のものを引っ越し業者に頼むこともないらしい。せいぜい洋服や身の回りのもので重いものを詰めて送るのと家電等必要なものを購入して店舗から発送してもらうことで済む。自分自身の時は宮城の実家を出るとき一切合切を梱包し、準備している最中にそれまでの思い出がいちいち大量に襲ってきてめそめそしたものでせっかく合格した大学も行きたくなくなるほどだった。実家を出るなんてなんでできもしない大それたことをしでかすことになったんだろうとか思ったりした。そのプロセスがないことはほっとした。

さて子離れまであと3日となった。冷蔵庫、レンジ、電気ポット、ドライヤー、カーテン、レンジラックを手配した。これだけでも写真でみたあの部屋に収まるのか?と思う。今月に入ってからは、私が仕事を終えて帰って夕飯を食べると「さ、ドライブにいくか」「さて、運転するか」とどちらからともなく声をかけてうろうろと走るのが日課となっている。最初は生まれたての小鹿のような運転で、他の車両にごめんと思いながら助手席に乗っていたが最近は早くも落ち着いて慣れてきたようす。この子はよく私の買い物に付き合ってくれた。長女は神経質でドアの空く空気の音でも目をさましてぎゃんぎゃん泣いていたが、この子はどこか落ち着いた子で、考えてみると生まれたばかりの赤ん坊のとき私の兄がだっこして「なんだろうか、この安心感は」といったことをおもいだす。

などとうっかり昔の様子を思いだすと、留守番させて買い物から帰ったら部屋におらず、あわててさがすと押入れの中の布団の間に寝ており、ねぼけて「隠れておどかそうと思ったらねちゃった」といった日や夫婦喧嘩をしたときに「おれさ、すごいたくさんお金もっているんだよ。なんと8万!お年玉とかばあとじいがくれたやつとか。だから大丈夫」などと頼もしくいった日などが際限なく思い出され大変なことになってしまうので、もうやめておこうと思います。あと3日。今日も運転するかしら。布団を買わないとね。

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