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cybozu days 2020 星野リゾート講演レポ

旅行好き×kintone好きということで、とっても楽しみにしていた星野リゾートの情報システムチームの講演を聞いたので、早速レポしていきます!登壇者は、ディレクターやプロダクトマネージャー、エンジニア、現場の4人でした。星野リゾートでは、カスタマイン、ホームブリッジなどを利用し、kintone活用を進めているそうです!今回は、6月ごろニュースを騒がせた「温泉IOT」の誕生秘話をたっぷり聞くことができました。

温泉IOTの発端


観光業界はコロナの影響を大きく受け、星野リゾートですら5月ごろは売上が昨対比8〜9割減だったそう。そんな中星野社長は、この禍は18ヶ月間続くと予測。それに基づきサバイバル計画を開始し、緩急の緩の部分で少しでも呼び込めるようにという作戦を立てていきました。その際に社長から発されたサバイバルの指針は以下の3点。

1.キャッシュを大事にしよう
2.雇用を維持しよう
3.csやブランドを犠牲にしてでも、やるべきことやらないことの優先順位をはっきりさせよう

この指針の元、コロナ対策を進めたところ、食事やロビーは席数や個室対応でできたが、大浴場の混雑が予想できない(≡密をコントロールできない)ことが難解な課題に。それを解決すべく温泉IOTは生まれたといいます。

<実現までのプロセス>
1.現場のアイデア(入浴人数を知るために、履物の数をwebカメラを取り付けては?)
→お客様がリラックスしづらい!プライバシー侵害になる!却下!
2.解決にむけてブレスト
3.実行部隊に若手が手を挙げる
→進行していたPJが全て中断して、仕事が無い状態だった
4.6週間で作って施設に設置

温泉IOTの発端は現場からのアイデアだったのですね。星野リゾートのような大企業にもかかわらず本部の情報システムチームに意見が上がってくる、ここが強みだなと感じました。意見が出てくる秘訣として、「現場の意見が通った実績がある」「上層部に変革意識がある」があるのではないかと考えました。それに加えて、大切にしている企業の価値観があることも説明いただきました。
IOTに使ったのはソラコム。auかdocomoのネットワーク回線で全国どこでも対応できる点が決め手だったそうです。また、大浴場の混雑度合いは、旅館ごとに大浴場のサイズ感に沿って微修正を行わなくてはなりません。そのため、現場で修正がしやすいkintoneで管理画面をすることにしたそうです。


温泉IOTが実現するまでに、実は様々な企画が立ち上がりボツになってきた過去があるそうなんです。その中でも2つをピックアップして、事例紹介がありました。

・ビーコンで清掃業務を可視化しよう
良い清掃ができるスタッフのやり方を解析して、他のスタッフに波及しよう!という計画があったが、型を解析するためには、ビーコンを一部屋に300個置かないといけなくて断念。
・大浴場の清掃タイミングを把握しよう
スタッフが少ない×清掃しに行きにくい場所にあることで、清掃が行き届かない場合があった。掛かるコストに対して、顧客に提供できる価値や労働力削減さが少なかったためボツ。

様々な失敗談を、にこやかに語れる情報システムチーム。普通だったら、恥ずかしさや悲壮感が出てしまいそうですが、その秘訣はチーム作りにあるそうです。

<大切な2つの価値観>
・フラットな文化で、議論が対等に行える。
・ガイドラインというよりは、NG規定のみがガードレール的にある。


順調そうに見えている星野リゾートのシステム課ですが、ITを内製化したいディレクターと「餅は餅屋」という社長の考え方が対立するところもあったそう。しかし、社長が全ての業務にITが根ざしていることに気づき、また、経営課題につながる大きな失敗を経ることで、今では各ステークホルダーを交えた会議ができるように。その結果、3〜5年で内製化まで漕ぎ着けることができたとか。

最後に、最近チャレンジしている案件を教えてくれました。

星野や沖縄での取り組み。HACCP義務化もあり、朝晩2回、56台の冷蔵庫を検温しなくてはならなかったが、横に長い施設で検温が大変だったそうでシステムチームに改善依頼が入ったそうです。
システム課は、「紙と人力→記録の自動化」だけではせっかくの機会が勿体無い、と、今までできなかった「異常値を検出した際に、アクションを促すこと」も盛り込むコンセプトに。自動化の先を見据えているのは、経験値が豊富なシステムチームならではの視点ですよね。現場はつい課題を解決することに気がとられ、積極的で幅広い利活用までは考えが及ばないことも多い気がします。


講演最後はディレクターからのメッセージ

「DXを進めていくことは単なる業務のIT化ではなく、顧客と従業員の体験をデジタライゼーションすること。自分達で使いこなすことが重要で、経営者から現場まで一貫してシステムを使う環境をつくることが、さらなる発展につながります。」

事例をプロセス込みでたっぷり解説してくださったので、大変勉強になりました!

#cybozudays #kintone #星野リゾート

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