engage~黑装の宴~

3話


「よぉ!さっきぶり!」

元気よく片手をあげたのはテリンジ。飄々とした雰囲気とは裏腹に強者のオーラが包んでいる。

「さぁ、皆珍しく揃ってるな。話は聞いていたと思うが彼がカイル君、ガイアから『渡って』来たハンターだ。」

「カイルだ。まだ地球の知識に疎いがよろしく頼む!」

パチパチパチ

少ない拍手がカイルの歓迎を快く思っていない事を表している。ちなみに拍手をしていたのはテリンジだ。

「俺は反対だ。実力もわからん奴に背中を預ける訳にはいかない。それにガイア人?初めて見るが俺らと何が違う?」

そう言い放つのはテリンジのとなり。大柄な男性が腕を組みながら突き放すように言う。

「まあまあノーラ!実力は俺が保証するって!エンチャントした剣でゴブリンを瞬時に切り伏せたんだからよ!」

「ふん、寝ぼけてたんじゃねーのか?」

「何おぅ!!」

「まあまあそんなに言うなら模擬戦でもしてみたらいいんじゃないかな?」

小競り合いを始めたテリンジとノーラと呼ばれた男性を制止しながら別の男性が妙な提案をした。

「やぁ、僕はミュードリスト。実際僕も君の実力には興味があるしね。どうかな?」

(あれ?どっかで見た事あるような。)

カイルはミュードリストの目を見ていぶしがりながらもその提案に乗る。

「そうした方が話は早そうだしな!俺はいいぜ!」

「いいだろう。ただし怪我しても知らねーからな。」


「やれやれ、こうなるだろうと予想はしていたが、修練所を抑えておく。10分後集合だ。」

クライブが頭を抱えながら通信を行い修練所の予約をとる。
カイルはノーラと呼ばれた男性との模擬戦よりもミュードリストの事が気にかかり妙な胸騒ぎを覚えた。



~修練所~

さまざまな訓練や魔法の試射、その他のどんな攻撃にも耐えれるよう一際頑丈に作られたこの修練所に基地内の人間がひしめき合っていた。

「ノーランドとガイア人が喧嘩するってよ!!」

「どっちに賭ける??」

「そりゃノーランドだろ!!あいつが負けたとこなんて俺見た事ねーよ!」

「俺も!」

「おいおい賭けになんねーだろうがよ!」




「な、なぁこれなんだ?」

カイルは熱気に気圧されながらテリンジに尋ねた。

「い、いやぁ~ここに来る前にミラちゃんに言っちゃったらこうなった!」

「こうなったじゃねーよ!賭けまでしてるぞ!いいのかよ!」

「ま、まあガス抜き?」

「はあぁぁ。」

壮大な溜息をつきながらカイルは目の前の男性を見る。

ノーランド。身長は高く筋肉隆々である。今の所武器は腰に携えた二振りの手斧である。防具はモンスターの革を張り合わせたアーマーやガントレットが全身に散りばめられている。

「おい!何度も言うが怪我しても知らねーからな!」

「はいはーい!怪我しても、私が治すから思う存分やっちゃっていいよー!特にカイル君だ!私は君に賭けたんだから勝ってよね!」

「両者いいか?勝敗はどちらかが戦闘不能、または負けを認めた場合だ。あくまでも模擬戦だからな?」

クライブはそう言うと修練所の端に移動した。そこにはテリンジを初めクイーンの全員が行く末を見守る。

「初め!!」


「『風舞双剣』!!」

カイルは開始早々風が渦巻くの剣を召還し元々装備していた剣に風を纏わせる。

「吹き飛べ!!」

そのうち召還した剣を振ると突風がノーランドを襲う!

「ふん!!」

しかしノーランドは手斧を豪快に振ると風を切り裂き、勢い付いた風は二つに分かれ修練所後方に叩き込まれた。


(嘘だろ?風を裂くなんざ聞いた事ねぇぞ!!)

「これならどうだ!『水舞双剣』!!」

風による攻撃が無効と見るやカイルは次に先程同様水を付与した二刀流でノーランドに対峙した。

「無駄だ!!」

ノーランドは一気に肉薄するとカイルが召喚した方の剣を手斧でかき消した。

「はああああ!!」

その勢いを殺さず二振りの手斧の猛攻をカイルに浴びせる。カイルは堪らず距離を取るがノーランドは追いすがる。


(動きがはえぇ!!だがこれなら!!)

「『風爆』!!」

カイルは風の塊を地面に叩き付ける、すると四方に爆散し強制的にノーランドとの距離を取る事に成功した。

「どうした!?ガイア人はそんなもんか!?」

「くそ!こっちに来てから体が重いんだよ!!」

「言い訳する位なら寝てろ!!」

ノーランドは再びカイルに接近すると体術も織り交ぜながらの猛攻を開始。

(くそ!このままじゃ!)



(やれやれ、やはりこうなるか。少し手助けをしてやろう。)



次の瞬間、カイルは今まで重かった体が瞬時に軽くなりノーランドの一瞬の隙にバックステップで距離を取った。

「な、なんだ?体が元に戻ったみたいだ。」

(さぁ、この後どんな戦いを見せてくれるんだいスピアーノ王国のハンター君。)

「ん?みっちゃん今なんかしたか?」

「いや?僕は何も?それよりもいい加減その呼び名どうにかならないのかい?テリンジ君。」

「親しみを込めてだよ!俺の事もてっちゃんって呼べって!」

「・・・。善処するよ。」



(雰囲気が変わったか?こいつ・・・何をする気だ?)
ノーランドが怪しがる中で快調になった体を確かめると雰囲気を変えたカイルが言い放つ。

「ノーランドって言ったっけ?悪かったな!第2ラウンドだ!」


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