engage~黑装の宴~

2話


かつての栄華が失われて今や廃虚と瓦礫とモンスターの巣窟と化した極東、日本国東京

この地で出会ったカイルとテリンジはテリンジの所属するGNADの基地へと来ていた。

「なぁ、テリンジって言ったか?」

「ん?どうした?あ、俺のことは気軽にてっちゃんとでも呼んでくれ!」

「呼び方はまあいいとしてここはどこなんだ?」

「ここはGNADの日本本部、GNADっつーのはgarde not afraid of deathの頭文字から取ったいわゆる死を恐れぬガードって意味だな!」

「ここから先は私が説明しよう。」

基地内を歩く2人の前に威厳を放つ1人の男性が立っていた。全く気配を感じなかった事からカイルは警戒し抜剣する。

「すまない、気配を消すのが癖だね、そんなに警戒しないでくれないか?」

「か、カイル!この人はウチらの部隊のリーダーで味方だ!」

テリンジに宥められながらカイルは渋々剣を鞘に納める。

「改めて自己紹介をしよう。私はGNAD、第5部隊クイーンの、クライブだ。形だけだがリーダーをさせてもらっている。」

「カイルだ。」

「報告は聞いているよ。ガイア人らしいね、まず君には検疫を受けてもらいその後ここがどこか?なぜ君がここにいるのかの説明をさせてもらおう。」

「・・・わかった。」

(気配を感じないなんて次元じゃねーぞ!?こんな奴スピアーノ王国にも数えるくらいしかいない。下手すりゃ『黒』級以上だぞ!?)

思いを巡らせながらもカイルは渋々医務室へと案内されて行った。




~医務室~


「お!来たねガイア人!あなたの検疫を担当するミラよ!よろしく!」

「あ、あぁよろしく。」

やたらとテンションが高い白衣に身を包んだ女性がカイルを出迎える。

「彼女はこの基地の医療チームのトップだ。時間はそんなに掛からないが辛抱してくれ。ではミラ、終わった頃に彼を迎えに来る。」

「はいはーい!さてと!じゃあこのポットに寝てもらえるかな?あ、装備は外してね?」

「ポット?この筒か?」

「そうそれ!10分位で終わるからほら早く!」装備一式を外し身軽になったカイルはポットに寝そべると青色に淡く光り、解析が始まった。


「ふむふむ、特別なウイルス等には感染してないわね、まあ基地に入る前にそれはわかっていたけど!それにギフトもまだ未覚醒か。魔力は多いわね!・・・え!?すごい!!六元素全てに適性があるのね!!さすがガイア人!」

ミラの解析が進む中カイルは物思いにふけっていた。

(やっぱりあの時の転移魔法のせいだよな?くっそあのクズ野郎のせいで!みんなは無事かな?まあ今はここの知識を付けて向こうに戻る方法を探るか。ふわぁ、なんだか眠くなってきた。)


「おーい!終わったよ~!あちゃ~、まあいっか!しばらく寝かせとこう!」




~数時間後~


「・・・い。・・・お~い。そろそろ起きて欲しいかな~!」

「っ!!」

カイルはやや深めの眠りから覚醒し周りを見渡すが夢では無いと落胆すると同時に先程の疲労が嘘のように回復していた。

「君が寝てる間に治癒魔法をちょちょいと掛けさせてもらったよ!目立つ外傷は無かったけど念の為にね!」

「あ、あぁ助かる。」

「それと君の解析結果がこれ!」

ミラは1枚の紙を渡す。

「・・・?なぁ、このギフトってなんだ?」

「ん?ガイア人の中ではなんて呼んでるんだろ?私達でもまだ研究段階で詳しい事はわかってないんだけど六元素魔法とは違ったその人にしかない特別な力ね!例えば今まで発見されたので言えば地味なもので視界に捉えたものの温度、質量、魔力量なんかを正確に測れる『サーチ』だったり強力なのだと空間を固定、拡張、圧縮が出来る『フィールド』だったり!」


「あぁ!希少属性の事か!」

「君たちの間ではそう呼ぶのね!」


その他にもカイルとミラは様々な情報交換を行った。

「そろそろいいかな?」

「あ、クライブ君だ!うっそ!もうこんなに時間がたってたの!?カイル君!またお話しようね!」

「あぁ!楽しい時間だった!」

「そう言ってくれると嬉しいな!私はだいたいこの医療室かとなりの事務室にいるから気軽に遊びにおいでよ!」


カイルとミラは固い握手を交わし部屋を後にした。

「打ち解けたみたいで良かったよ。」

「ここの事もだいぶわかってきたからいい時間だったよ。」

「それは良かった。あらかた情報は得た感じかい?ならば君の今後について話し合おうか。」

「今後?」

「君が何を望むか、我々、というよりかこの世界の住人は君たちガイア人を手厚く保護している。なぜなら君達は総じて魔力に適性がありモンスターの対処法も熟知している者が多いからね。」

クライブは歩きながらカイルを見ずに話を続けた。

「我々は300年間戦い続けているしそれは今後も続くだろう。しかし君達には選択肢を用意している。我々と一緒に戦うか、庇護下の元不自由なく暮らすか。あぁ、ちなみにガイアに戻る方法はまだ確立していない。」

その言葉を聞きカイルに一つの決意が芽ばえる。

「今はまだゆっくり休んで欲しい。その後どうするか決めてくれれば、」

「答えはもうある。」

「ん?」

「俺はハンターだ。生まれてから今まで戦いでしか生きる術を知らない。金の稼ぎ方もな!不自由なく暮らせるのも魅力的だがまだ俺は20歳だぜ?隠居するには早えぇ。」

「その選択肢に後悔はないね?」

「あぁ!無い!」

「それじゃあ話は早い。君を歓迎しよう!」

いつの間にかたどり着いていた扉の前でクライブはカイルに笑顔を向けると勢いよく扉を開けた。


その部屋には六人の男女がカイルとクライブを出迎えた。

彼らの共通点は黒いマントを身に纏う黑装であるというだけ。装備、姿形、全てが異なる六人はカイルとクライブの入室により雰囲気を変えた。


(さあてどうなる事やら・・・。)





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