engage~黑装の宴~


8話

~スタジアム中央~

「ちょっと聞いてた話とちげぇぞ!」

ノワールは対峙する異形の存在『ハイヒューマン』の様子を伺う。
改めて見るとかなり異様である。
左半身は人間のようだ。体格もよく戦士だと言われても納得する体躯をしている。しかし右半身は違う。どことなく中型モンスターの『オーガ』に似ている。額から角を生やし眼光は鋭く体色は深い緑色。筋肉が隆起して拳一撃で岩をも砕きそうだ。

ガアアアアア!!

ノワールが様子見をしているとハイヒューマンは観客の方へと咆哮、それと同時に両足に力を込め始めている。

「やべぇ!!アロンダイト!!typeランスだ!」

『typeランス承認。敵を認識射出します。』

ノワールが装備していた槍に対して命令すると槍は形状を変化させ円錐型のランスへと変わる。その円錐の下部の噴出口から輝くガス状のエネルギーを発するとハイヒューマン目掛けて射出された。


ごああああああああぁぁぁ!!

ハイヒューマンの右腕に刺さると思わずのけぞる。しかしランスを掴むと無造作に捨て去りようやくノワールに向き直った。

「相手は俺だろうが!!」



「くっ!なんなんだあれは!?皆聞こえるか!!スタジアム中央の未確認モンスターはおそらく観客をも狙っている!避難誘導は軍と警察に任せるしかない!我々は目標を捕縛または排除だ!メリーは狙撃で援護!ステラはメリーの補助に!ノーランドと二ーレイは中央に向かってくれ!」

「俺達も向かってる!」

「テリンジ、カイル、ミュードリストもそのまま向かってくれ!それとミュードリスト。事が終わった後皆に話してくれるな?」

「あぁ。皆、すまない。」

「謝罪は後だ!クイーン、作戦開始だ!」

「『了解!』」

クライブは通信を切るとすかさず中央へ跳躍、観客の頭上を飛び越える形になるがなりふり構ってはいられない。



スタジアム中央


ガアアア!!

ハイヒューマンの猛攻にノワールは防戦一方であった。
一撃一撃が重くかつ早い。単調でただの暴力の化身であるからこそ捌き、躱し、いなす事が出来ていた。しかし体力は無限では無い。

「くっそ!アロンダイト!分析まだか!?」

『アンノウン、アンノウン、私のデータベースには無い新種のモンスターです。』

「あーそうかい!!なら弱点は!!」

『オーガとの類似点を発見。熱が有効であるかと推測します。』

「OK!ならtypeツインブレードだ!」

『typeツインブレード承認。形状を変化させます。』

槍の形状から双刀に形状を変えた武器を構えノワールは唱える。

「ヒートチャージ!」

双刀に熱を帯びさせるとハイヒューマンへ攻勢に出る。

ごああああああああぁぁぁ!!

確かに熱をいやがるそぶりは見せるものの決定的なダメージは無い。

「このままじゃジリ貧じゃねぇか!」

ガアアア!!

ノワールがほんの一瞬、気を緩めてしまったタイミングにハイヒューマンは右ストレートを打ち込む。双刀をクロスして防御するが膂力に耐えきれず吹き飛ばされてしまう。

そしてそれを逃さずハイヒューマンは走りながらノワールに近づいてきた。とどめを刺すつもりのようだ。


「ウインドスライサー!!」

そんなハイヒューマンの左側から無数の風の刃が襲う。思わず立ち止まり防御の体勢をとる。

「てめぇ!クライブ!」

「助太刀はいらなかったかな?」

「スカした野郎だな相変わらず!だがありがとよ!」

クライブが間に合い間一髪で助かったノワールは安堵すると同時に再度闘志を滾らせた。

「GNADと手を組みたくはないが背に腹はかえられねぇか。」

「理解が早くて助かる。まだ動けるか?」

「当たり前だ!だがあいつの回復速度は異常だぞ?」

見るとクライブのウインドスライサーによる切り傷も初手のランスによる刺傷も全て塞がっている。

「そのようだな。だが今うちのチームが集結しつつある。全員でかかるぞ。それに優秀な狙撃手もいる。」

「狙撃手?!」

乾いた銃声が響いたと思いきやハイヒューマンの頭部を銃弾が襲う。仰け反り吠えるが決定打にはならないようだが隙を作るには十分だ。

「メリー!そのまま狙撃を続けてくれ!」

『了解』


ノワールは双刀を槍に戻し、クライブはハルバードをそれぞれ構えるとハイヒューマンに対峙した。

「行くぞおらぁ!!」

ノワールは槍の状態のアロンダイトに再度熱を帯びさせ連撃を繰り出す。その隙を縫うようにクライブがハイヒューマンの足や腱を狙う。さらに頭部や心臓を狙う銃弾。手数が圧倒的に増えたノワールとクライブ、そしてメリーではあるがその攻撃も全て回復力の前に無駄に終わっていた。

「吠えろ荒噛ぃ!!」

そんな対峙している2人の前にさらに援軍が加わる。荒噛を構えたノーランドだ。
相手を噛み砕くような斬撃も分厚い皮膚の表皮だけを剥がし、ハイヒューマンは余裕のようだ。

「わりぃ!人混みのせいで遅れた!ノワール、久々だな!」

「ノーランドか!」

スタジアム内は3人となりさらに手数と攻撃力が上がる。

しかしまだハイヒューマンを打倒する決定打にはなり得ない。

「孤月」

ハイヒューマンの左後方二ーレイの回し蹴りが脇腹を襲う。ここで初めてダメージを得た表情になり大量のよだれを撒き散らしながらハイヒューマンは吠えた。

ガアアアアアアア!!

「間に合ったようだな。」

「二ーレイおせぇぞ!」

悪態をつきながらも安堵するノーランド、そんな彼と同じように頼もしいと感じるクライブとノワールである。

特に最初から戦っていたノワールは明らかに疲労が見えてきていた。

「ノワール!下がれ!」

「ふざけんな!共闘はしてやるが獲物を譲ったつもりはねぇぞ!俺はLAST傭兵団2番隊隊長のノワールだ!モンスターに背中は見せねぇんだよ!」

プライドがそうさせているのかノワールはクライブが出す退避の提案を一蹴。
そのはずだ。彼らLAST傭兵団はその名の通り最後の一人になろうともモンスターを打倒するをモットーにしており、また人々の信頼を勝ち取ってきたのだ。

だが明らかに攻撃の質は落ちてきている。



「炎風大槍!!」

「アクセルバースト!!」

「獅電咆哮!!」

さらなる援軍、カイル、テリンジ、ミュードリストだ。
彼らは持ちうる最大の攻撃力でもってハイヒューマンを吹き飛ばす。

だが吹き飛んですぐ立ち上がり瓦礫を掴み投擲による迎撃を出してきた。



クイーンチームとノワールの共闘はまだ続く。





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