engage~黑装の宴~

5話


「まずテリンジとノーランドはもういいな。それじゃあミュードリストから頼む。」

「わかった。さっきの戦いは凄かったね。僕はミュードリスト。次は僕とも試合して欲しいなぁ。」

「あ、あぁそのうち。」

「よろしく。」

先の試合でも思案を巡らせていた男、名をミュードリスト。翠色の目が特徴の美男子である。しかし底知れぬ強さが垣間見えるあたり相当な強さと予想ができる。

「次は俺か、二ーレイだ。よろしく頼む。」

ミュードリストの隣、やや身長が高めの男性が答える。強者揃いのクイーンチームの中でも群を抜いて強者のオーラを纏っていた。

「あ、ちなみに二ーレイはおそらくGNADの全隊員の中で1番つえーぞ!」

「そんな事はない。お前達のように何かに特化してない分器用貧乏なだけだ。」

「特化してないだけでオールマイティに活躍出来てるだけじゃねーの?」

テリンジが言うのも納得できるほどのオーラにカイルは頷くしか出来ずにいた。

(でも1度くらいは手合わせしてぇなぁ。)

「私、メリー・・・。」


物静かな小柄の女性が答える。普段から無口なのかそれ以上語らぬ様に皆慣れているのか特に突っ込まないでいた。

「私はステラよ!貴方なかなか魔法に精通しているようね!今度手合わせしなさい!」

先程のメリーとは打って変わってハツラツとした印象を抱かせる金髪の女性が答える。
魔法に自信があるのかほかの隊員と違いアーマーらしきものは着込まず線も細い。

「あぁ!今度な!」

絶対よ!と無い胸を張りながら答えたステラを最後に第五部隊クイーンチームのメンバーの紹介が終わる。

「さてこれで全員だ。そしてカイル君。実力は先の試合で見させてもらったがそれはハンターとしての過去の君の実力でしかない。これから半年はチーム全員と班を組みながら我々の任務に従事してもらいたい。まぁ、見習い期間だと思って欲しい。」

「わかった。皆!よろしく!」


「さて!自由時間だな!俺は寝る!」

「俺は一昨日狩った獲物を料理するか。」

「あ、じゃあその料理を私とメリーで平らげようじゃない!」

「俺は鍛錬に戻る。クライブ。何かあれば招集をかけてくれ。」


自由行動となったのだが各々が好きな事をしながら時をすごす。
基本、任務や緊急招集がない限り彼らは拘束されない。それぞれ強力な力を持つ面々である故に遊撃隊な活動を行う。それが「クイーン」なのだ。

「あ、カイル君。ちょっとこの後時間いいかい?」

「あぁいいぜ。」

そんな自由時間にカイルを誘ったのはミュードリストだ。

「それじゃあさっきの修練場で待ってるよ。なぁに、戦闘をする訳じゃないから身構えないで来て欲しいな。」

先程から底知れぬ雰囲気を持つミュードリストからの誘いに自然とカイルは身構えてしまう。まだまだハンターの癖が抜けない。






~修練場~

ノーランドとの試合があったとは思えないように静まり返った修練場にミュードリストとカイルはいた。

「薄々気付いてるとは思うけど。」

そう言いながらミュードリストは装着していたマスクを外す。

「僕も君と同じガイア人だ。『灰』級ハンター通称『百器』のカイル君。」

百器の名は様々な武器を使いこなしいつしかスピアーノ王国内で呼ばれていたカイルの通り名だ。

「あ、あんたもしかして暗殺ギルドの。」

「ご名答。やっぱり僕のモンタージュはスピアーノ王国にも出回っていたかい?そう、僕の正式な名前はミュードリスト・ディ・ヴァルデ。」

「ヴァルデ?・・・ヴァルデ王国の!?」

「そう、ただし14皇子だから継承権なんて無いに等しかったけどね。」

カイル達の故郷「ガイア」のスピアーノ王国とは別な国を挟んで東に位置していたのがヴァルデ王国である。

「君はここに何故転移したか知っているかい?」

「い、いや。依頼でモンスター討伐をしている時に気づいたらって感じで。」

「そうか、ホール災害の事は聞いているよね?この世界を襲っている大災害は僕たちのガイアとここ地球を文字通り無理やり繋いだ奴がいるのさ。」

「無理やり繋いだって、そんな事」

「出来る。」

カイルの言葉をさえぎりミュードリストは答える。

「出来るって言うよりかは出来るやつを知っているって答えが正しいかな。」

「だ、誰が。」

「それはまだ言えない。だけどそいつはこの地球にいる。僕はそいつを探しているんだ。あぁそれと僕がガイア人である事も伏せていて欲しい。」

「・・・どうして。」

「色々と支障があるのさ。その代わりこれを君にあげよう。」

ミュードリストはポケットから石にチェーンが付いただけの無骨なアクセサリーを取り出しカイルに渡す。

「地球はガイアほど魔力量が潤沢じゃないからね。まだ不調は続いてるだろう?まずは環境に慣れることを優先していざと言う時に限りその石に魔力を少量注げばいいよ。そうすれば一時的ではあるけどそのアクセサリーを中心に半径20メートルにガイア程の魔力で満たすことができるから。」

ミュードリストの説明にカイルは全て合致した。

「じゃあノーランドとの試合中に調子が戻ったのって。」

「僕からのちょっとしたサービスさ。」

カイルはおもむろにネックレスを付けるとミュードリストへと向き直る。

「僕からは以上かな。」

「俺から1ついいか?」

「何かな?」

「あんたの探し人をもし仮に見つけたらどうするんだ?」

「殺すよ?」

今までにこやかに会話していたミュードリストであったがカイルの質問に眼光を鋭くしながら答える。

「僕は奴を許すつもりも生かすつもりもない。奴は僕の獲物だから誰にも渡すつもりもない。」

「・・・わかった。」

「ま、手がかりすら掴めてないからいつになるかわからないけどね。」

先程までのミュードリストの雰囲気に戻ったのを感じ安堵したカイルであった。


それから半年間ミ地球の環境に徐々に慣れながらもミュードリストやチームメンバーとそれぞれ、班を組み数々の任務をカイルはこなして行った。


~半年後~


「警備任務?」

「あぁ。今年は日本で開催されるとあるイベントのな。」

クイーンチームのリーダー、クライブの前にはクイーンの面々が集まり久々の全員招集任務にカイルが疑問を口にする。

「なんで警備任務なんだ?軍や警察もいるだろう?」


「これは上からの直々の任務だ。このイベントは各国の要人が集まる。イレギュラーを柔軟に対応できる人員をとの事でGNADに声がかかったという訳だ。」


この任務により大きな変化の波が訪れる事をまだ誰も知らなかった。




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