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2022年真夏の大冒険㉔ 博多3日目 平尾台~筑豊

恥ずかしながら平尾台を知ったのはアイドルグループのMVだった。
このMVの後半に、見たことがない不思議な風景を背景に踊るシーンが続く。
「なんだこの景色?」「ここはどこなんだ?」と調べたら北九州の平尾台というカルスト台地らしい。いつか訪ねてみたいけど九州じゃなーと半ば諦めていたのが、今回ひょんな流れで博多に行くことが決まり、だったら...と言うの経緯で訪れることにした。アイドルの聖地巡りというわけではない。

今回の大冒険、共通のテーマは「目的までの途中もたっぷり楽しむ」なのでナビが示す通り高速道路をかっ飛ばして最短時間で着くような野暮なことはしない。一般道をちんたら進んで寄り道も大歓迎なスタイルで走り出した。到着を急ぐことはない、夕方まで帰ってくればいいだけのこと。
「福岡」「北九州」「久留米」「筑豊」見慣れないナンバープレートや東北とは違う山の形、営業車のペインティング、どれもこれも新鮮だ。久留米ナンバーってかっこいいな。いやいや「筑豊」は無骨さの極みかも。

知らない土地で飯を食う時、絶対失敗しない秘訣がある。
こんなところに一軒家な繁盛店、タクシーやトラックなどの営業車がいっぱい停まっている店、主にその地方をメインに展開しているローカルなチェーン店を選べばハズレはない。大当たりはないかも知れないけれど、水準以上の店であることは間違いない。どうせ細かい味はわからないバカ舌なので、ハズレを引かなきゃアタリ同然なのだ。「当たり外れは思い込み次第」だ。

そんな条件にピッタリ合致する店が現れた。幹線道路からは見えるのだが一本横の旧道みたいな道にその店はあった。幹線を走ってたので入口らしき場所は通り過ぎてしまったけどUターンして側道に入ってたどり着いた。
駐車場はほぼ満車。出しやすいところが空くのを車の中で観察してたけど、食べ終わって店から出てくる人は皆微笑んでいる。アタリ確定の予感しか無い。

中央に相席用の大きいテーブル、壁際は立ち食いのカウンター席。
うどんとおにぎりを注文。30秒で料理が差し出され自分の席までセルフで運んで、食べ終わった器は洗い場前まで持って行くセルフスタイル。
無料乗せ放題のネギと天かすをたっぷり乗せて食べ始めた。
旨い!優しいスープがなんとも言えん。もう一杯いっちゃおうかなとも思ったけど、このあとの山登りのことも考えて自粛した。「また食べに行きたい店」が増えた。

ドライブインかわら
うどん400円 おにぎり100円

幹線道路を外れて狭い山道を登る。登り切ると軽いアップダウンがあるだけの見晴らしのきく道が続く。とりあえずはいちばん奥まで。譲り合わなければ交差できない道が続くが、行き交う車はほんの数台。カルスト台地らしく鍾乳洞へ導く看板もあり、キャンプ場もあるようだ。キャンプしてそこを拠点に2-3日かけて歩き回ったら面白いだろうなー、なんてことを考えてたら目的地の茶ヶ床園地駐車場に到着。
事前の調べでは、ここ平尾台地には様々なポイントを巡る何種類ものモデルコースがある。体力に自信満々なわけでもないし極めたいわけでもない。初心者が散歩の延長くらいの気持ちで駐車場を起点に周辺を散策する程度でいいのだ。

駐車場には5-6台ほど停まっているけど、東屋を利用して食事をしている犬連れの家族が一組見えるだけで人の姿はない。きっとそれぞれの思いで山に散らばっているんだろう。
駐車場から見える景色だけでも今まで見たことがない奇妙な景色で満足なんだけど、ここまで来たからにはやっぱり山に入ろう。サンダルを靴に履き替えて散策開始。

平尾台

一言で表すならば「気持ちいーー!」これに尽きる。
コロナ禍真っ最中とはいえ、無人の広い空間を独り占め。あっち行ったりこっち行ったり、楽そうなコースを2時間ほど歩き回ったけれど「こんにちわー」の挨拶を交わしたのは3人だけ。みんなうっとおしいマスクは外して歩き回っており、交差する時だけあわててポケットから取り出していた。
平尾台は四季を通して行ってみたい場所だ。春の野焼きや秋のススキも素晴らしいらしい。

平尾台
平尾台
平尾台
平尾台

東北の山の中にいるだけでは出会えない景色、その中に身を置くことが出来て満足だった。旅行するってそういうことだと思う。
「さあ、楽しませてあげましょう」の思惑で作られた施設やアトラクションに満足する人を否定はしないけど、「古い時代からこの土地にただあり続けているもの」「その中に自分がいること」「家でじっとしてては見られないもの」それらに出会った瞬間に心がピクッとでも動けばその旅行は大成功だと思う。
そして気に入ったポイントが見つかれば、時間の許す限りその場所で至福な気持ちでいたいし、時間のせいでその先の予定を飛ばすことになっても後悔はしない。まだ見ぬ幸せよりも今ある幸せを優先する。
人はどうあれ、これが私が旅行する理由でありマイスタイルなのだ。

惜しむらくはこの日の天気、晴れ渡っていればもっと爽快な気分になれただろうに。それだけが残念だった。
もっと長い時間を過ごしたかったけれどエンドラインは決められている。後ろ髪を引かれながら山を降りた。
すべて満足するよりも、悔いが残るくらいがちょうどいいのだ。

山から降りたら失ったエネルギーを補給しなければならない。
失敗しないお店選び「繁盛しているローカルなチェーン店」の法則に従って「筑豊ラーメン山小屋」に入店。チェーン店は看板が各所に立っているので見つけやすい。
筑豊ラーメンは豚骨醤油の細麺。博多ラーメンの澄んだ豚骨スープとは真逆の透明度0の濃いスープだった。スープが濃いぶん白米のおかずにもなるからなんだろう「ライスおかわり無料!」の文字がでかい。知らない土地ではその土地の風習には素直に従う。ライスおかわりをしてしまったもんだから超満腹で動きたくなくなってしまった。駐車場にしばらく停まって帰り道沿いの立ち寄りどころを探す。

筑豊ラーメン山小屋

筑豊と言えば「炭鉱」「青春の門」「香春岳」数少ない自分のイメージを満たす場所は...田川の炭鉱記念公園で食休みすることにした。
展示物が並ぶ有料の記念館に興味はない。公園でぼーっとしながら炭水化物の消化を待つだけでいい。とは言え、性格上ぼーっとだけはしていられない。広い公園の中を歩き回った。
巨大煙突、竪坑櫓、近づくだけで♪月が出た出たと歌い出す炭坑節発祥の碑などけっこう見ごたえがあった。この公園も無人、日曜の昼下がり、ファミリーグループくらいはいても良さそうなんだけど、コロナへの警戒は思ってる以上に浸透しているのかも?だったらコロナ禍を利用して連日遊び回っている輩は「あんたらが新型コロナを広めてるんだ」「非国民」と罵られてもしょうがない立場なのかも?

炭鉱記念公園
炭鉱記念公園

断じて聖地巡りではないはずだったが、結果的には聖地巡りをしていたみたい。炭鉱記念公園もMVロケ地になっていた。

公園での、いちばんの収穫は正面に鎮座する香春岳の存在感と田川駅の駅舎かな。
香春岳は眺めてるだけでいろいろ思いを巡らせてしまう。
もともとは山の字のような三峰の頂を持つ山だったのが、山全体が高品質の石灰岩でできていたためにセメントの原料として削りに削られて、今では一峰が完全消滅まっ平になってしまっている。日本近代化の副産物?青春の門の頃はどんな形だったんだろう?あの平らなとこには行けるのかな?ひとつの町の中に石炭と石灰石の産地があったなんて、さぞかし活気ある町だったんだろうな。いろいろ思っていた。
公園の下には田川駅。なんとも風情のある駅舎で健さんが今にも顔をのぞかせそうだった。

香春岳
田川駅

レンタカーは19:00までの契約でまだまだ時間は残っているけど、プランはすべてクリアしたことだし、ちょっと早いけど筑豊を脱出して博多へ戻ることにした。
しかし今度は睡魔、眠くて眠くてたまらなくなった。
旅行中に居眠り運転で事故るなんてあってはならないこと。時間は余っているし我慢はしない。広域表示のナビ画面に湖っぽいのを見つけたので寄り道して昼寝、眠気を消滅させることにした。
バイパスを降りて温泉宿の横を山に登っていくとダムだった。
シートを倒してタオルを顔にかぶせて睡眠体制を取る。眠い時は我慢は無駄、眠るのがいちばんだ。
ここ二日間早起きが続いたし知らず知らずに長旅の疲れも溜まっているのか、たっぷり2時間熟睡してしまって返却時間にゆとりが無くなった。

たっぷり昼寝した鳴淵ダム

それからは寄り道もせずガチ運転。ガソリンを満タンにしてゴールしたのは返却時間10分前だった。

今日も一日よく遊びました。💮💮て感じかな。
明日は何も予定を入れてない完全オフ日。そして博多最終日。
...てことは、明後日は移動日。何も手配してないことに愕然とした。
まあ、それは明日考えればいいこと。どこへ行こうか?どう帰ろうか?
博多3日目終了。

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