不器用なキューピット

今の恋人を紹介してくれた友人の話。
文字通り我々のキューピットなので以下「天使ちゃん」と記す。

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天使ちゃんは穏やかで気の良い人だ。
それなりに付き合いは長いが、天使ちゃんが声を荒らげて怒るようなところは一度も見たことがない。
ただし優しいが故に押しが弱く、肝心なところで一歩引いてしまう場面がしばしばある。
酒に強く、機械にも強く、ユーモアセンスも持ち合わせている。

アイザワの今の恋人であるドギー（仮名）とは昔からの付き合いらしい。
色んな事情があって恋人探しに躍起になっていたドギーのため、自分のことを後回しにしてドギーの恋人になってくれそう（で尚且つ趣味が合いそう）な人を探してあげていた。アンタ良い人だなホント。
そしてその結果、奇跡的に条件を満たしていたアイザワが紹介されて現在に至る。

誘われれば食事を共にするし、自分から誘って酒を飲みにも行くし、同じ空間で夜通しゲームをやり込んでみたりもする。
こんな事を割と長い期間やってるもんだから、当然勘違いする人達も出てくる。「お前達は付き合っているのか？」と。二人きりで無いとはいえ、異性が集合……何も起きないハズはなく……（酒飲みながら一緒にゲームやってるだけ）

アイザワがドギーとお付き合いしている事を知る人はほとんどいない。自分のような奴が異性とお付き合いを始めたなんて周りに知られたら、面倒なことになるのは目に見えているからだ。そのような事情もあって、色んな人に天使ちゃんとの関係を聞かれる。

そして聞かれたら嘘偽りなく「ただの友人ですよ」と答えるけど、正直面倒臭い。別に誰とどんな関係を持とうがこっちの勝手だろうよ、と毎回思う。

とは言え、他人の情報……特に恋愛事情と命に関わるものというのはお手軽に脳ミソに刺激を与えてくれる危険なモノだということはアイザワも理解している。だって明らかに知っちゃいけなさそうな話とか、誰も知らなさそうな話とかをうっかり聞いちゃったら真偽を疑うと同時に色々と考えちゃうじゃん。人間だもの。
週刊誌とかネットニュースとか、色んな人から嫌われながらもそういうものでメシを食ってる人間が一定数存在するのは、きっとまだ需要があるからなんだろう。明らかなデマ情報だとか悪意あるモノはどうかと思うけど。

だから興味を持つ人がいるのも仕方ない。仕方ないのはわかっているけど、やはり面倒臭い。
報告できる段階になったらちゃんと報告するから今は放っておいてほしい。

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ちなみに好きか嫌いかで言えば、天使ちゃんは間違いなく好きの部類に入る。
個人に対してこの量の文章を書く時点で、かなりの好感度であることはお分かり頂けたと思うが。

しかし、天使ちゃんに対して恋愛感情的なものは無い。
あくまでも友人の一人として信頼しているだけで、それ以上の関係は望んでいない。

アイザワには好感度がカンストしてしまった相手に対して割となんでも許してしまうというバグが搭載されている。性別関係無く、ライクだろうがラブだろうがとにかく本気で好きだと思える人なら誰でも起こり得る厄介な感情だ。
恋人がいる間はその人ひとりに集中できるので問題ないが、自分がフリーな状態の時は基本的に倫理観/zeroになる。
実際このせいで何度も人間関係（特に同性間）で失敗してきたので、ドギーと付き合うまでは他人に対して必要以上に「好き」という感情を抱かないように、そして表に出さないようにしてきた。

そしてこの感情バグ、例に漏れず天使ちゃんにも発動していた。
なので天使ちゃんに身体を求められていれば快くオッケーしていただろうし、下手をすればセの付くフレンドになっていた可能性もかなり高い。
でも仮にドギーと付き合う前にそうなっていたとしても、間違いなく恋人関係には発展しない。天使ちゃんとはどこまでいってもフレンド止まりだろう。

好きではあるけど、それ以上の進展は無い。
そんな線引きでつるんでいるが、お互いこれが丁度いいので多分しばらくはこのままなのだろう。

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付き合っている人がいるのに他の異性と遊んでるのってどうなのよ、と思う方もいるかもしれない。多分それが普通の感情だと思う。

しかし、ドギーはこの辺りにやたらと寛大だった。
ドギーにとって天使ちゃんが自身の半身のような存在だからというのもあるけれど、本人曰く「最終的に自分の元に帰ってきてくれればいい」のスタンスらしい。どこの羅王や。

もちろんドギーが嫌だと言ったらその時点で会うのをやめるし、「二人きりでは会わない（ドギー込みで会うか、アイザワと同性のお友達が基本的に一緒にいる）」だとか「ドギーがいない時に遊んだ時は報告する」だとか、そういう事は自主的にしている。一応。

今のところ特に問題も無く過ごせており、３人で飲んだり騒いだりすることも多々ある。その時間は素でいられるので気が楽だし、単純に楽しい。

だからしばらくは……具体的に言うと天使ちゃんに恋人ができるまでは、このままの関係を続けられたらいいなあと思っている。