見出し画像

無限たまごかけ納豆ごはん物語

 むかしむかし、あるところに。

 無限系たべものという文化が、あったそうな。

 じさまは、れいぞうこにいつも、たまごとなっとうが、あったそうな。きょうも、たまごかけなっとう。あしたも、たまごかけなっとう……このさきずっと、たまごかけなっとう……まいにちまいにち、おなじことのくりかえしで……

生きてる気がしないよッッ!!


 ──と、むかしむかし、あるてれびで、芸人さんが言っておったそうな。

 うまいようまいよ~、たまごかけごはんうまいよ~。

 うまいようまいよ~、なっとうごはんうまいよ~。

 じゃあ、たまごかけなっとうごはんは一生うまいよね? そうであってくれ。もうずっと自炊する元気ないんや。たすけてくれ。散歩したさを言い訳にして8時間歩いて回転寿司を食いに行って帰るなどしてもうた

 自炊する「元気がない」とは……?

 何を言ってるかわからねーと思うが、俺も何を言ってるかわからねー。きのこしょうゆと赤だしみそを加えるだけonlyというちょっと奇妙な味付けをするくらい混乱している。これが思ったよりおいしかったのでローテしているが、ちょっとバリエーションを開発順に列挙してみる。

  1. 辛口醤油

  2.  塩+ごま油+韓国のり

  3. やきにくのたれ+韓国のり

  4. 揚げにんにく麻辣油(桃屋系)

  5. 甘口醤油+わさび

  6. 納豆キーマカレー

  7. トリュフ白醤油+赤だし味噌(NEW!!)

 つまり一週間ローテ可能である。実際には材料が常にそろっているわけではないし、たまに納豆と卵が揃っていないときもあるが、実際平日、ほぼ卵かけご飯である。無限だ。

 なんか途中で絶対に意味不明なやつが混じっているがそれは過ぎ去りし過去なので深くは語るまい。おじさんは無敵なのだ。絶対にマズそうなやつを思ったよりマズくないからの割とおいしいまでごまかすことに絶対の自信がある。無敵だ。

 というかベースがあれば甘味と塩味と旨味をテキトーに変えるだけで、なんでもできるのでなんどでもできる。そんな現代の便利さを噛み締めている。

 * * * * *

 ──という、結構前にしたためた遺言したがきを、パインと野菜をもっしゃもっしゃしながら見ている。いや、合うはずないんだよなぁ、でもどっかで見たことあるからついやっちゃったんだよなぁ。なんだろう、りんごもときどき野菜の上に載ってる気がする。チーズと一緒に。パインとチーズはやらないな。やらないか。

 あなたのパインと野菜の組み合わせはどこから?

 もしかして:酢豚から


 いや~~~どうりで一般の方にはマズいでしょセンサーが働いたと思ったんですよね~~~申し訳ありませんが酢豚はだいすきです。小学校の給食でフルーツポンチってあった気がするんですけどォ~~~多分その隣にサラダがあって勘違いしたのかもしれませんねェ~~~いやァお恥ずかしい! 

 そして野菜尽きパイン余り、なぜか手元にあったレモンケーキとパインを合わせて食べていると、心は雑食系武士になっていく。すなわち雑兵である。そこらへんの草むらに生息しているぞ。足は軽い。いざゆかん新天地。

 いや。いやいやいや。そんなたまごかけごはんはやらないすよ。たまごかけごはんに果物いれさしたら大したもんすよ。いくら甘いたまごかけごはんがあるからって、さすがに甘納豆にはしないすy……AMA-NATTOU……?

 いやないわ。何ちょっと迷ってるんだ。

 もう永劫回帰の無限たまごかけごはんの輪廻の輪はできているというのに。ちょっと魔が差しそうになったのなんでなんだよ。逢魔が時かよ! だが無情にも時は昼日中ひるひなか、外は快晴である。なぜ邪道へ進もうとしているのか。なぜ貴様は平和を拒むのだ!

 よもや光の下では生きられないカラダにされてしまったのか。俺を改造したのは誰だッッ! 答える者はいない。なぜなら……つまり……。やめよう。中二病をダシにして自分の心にウソをつく退路はすでに断たれている。背水の陣。覚悟をキメろ。

 そうだ。これが男の本能なのだ。

 矢尽き刀折れ、銃もなければ拳を握れ。この身ひとつでウソはつける。決して生まれが変態だとか育ちで変態だとか性癖改造人間だとか世の中に絶望して狂乱の道へ踏み外したとかそんなことは決してない。いやあるかもしれない。社会とのかかわりがなくなったらわりとダメかもしれない。それはみんなそうかもしれない。

 そうだ。いくら甘納豆があるからといって甘納豆の守備範囲はごはんの上にあるわけない。運用は大事だ。いやでもだって兵役も一部の国で男女の区別なくしていると聞くではないか。じゃあ……塩納豆と甘納豆も……ごh……ゴフッッ!! それだけはいかん。瘴気に帰るんだ。いやちがう、正気に返るんだ。おい予測変換おまえ。裏切ったな。

 これだから科学を妄信してはいけないのだ。機械の拳ではなく己の拳を握れ。伝統と自然のチカラを信じろ。実際砂糖醤油の甘納豆は子供のころからよく食べていたんだ。パイン納豆だって……しかしそのときパインは人知れず姿を消していた。まるで死期を悟った猫のように鮮やかに去っていた。まるで最初からいなかったかのように。我が腹の中に。

 こうして、たまごかけごはんの乱は平定されたのであった。


-完-











 ちなみに砂糖醤油で納豆をかきまぜるとメレンゲめいてネバネバのネバ立ちがとてもよい。人生は過ちの連続だ。幾度となく土を食み辛酸を舐めても諦めるなということなのだ。ネバりづよくNever give-upだ(何を?)。

われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……