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たとえば夫婦喧嘩の話

本記事は、オレゴン州・ワシントン州など米国北西部を中心に毎月発行されている日系紙「ゆうやけ新聞」に連載中のコラム『第8スタジオ』からの転載(加筆含む)です。
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アメリカは、COVID第三波が訪れているといわれていて、なるほどその通り、10月23日「アメリカ1日あたりの感染者過去最多8万4000人」というニュースが目に入ってきた。7月16日7万7229人の過去最多を更新したらしい。(この記事執筆時は10月23日でした)

第一波は武漢ウェイブ、第二波はBLMウェイブ、第三波は大統領選ウェイブと誰かが名付けていたが、そうかもしれない。

まもなくおこなわれる大統領選、一体どうなるのだろう。

感染者が増えると、死者も増え、学校再開もまた遠くなり、友達と集まることも憚られ、先日リオープンになった公園もまた閉じられたりなど、ドミノ倒しのようにこの生活にあらゆる影響がのっかってくる。

会社に出勤したい出勤したいと願いながら鬱すれすれで頑張っている夫も、ステイホームの続行を言い渡されているようなものである。心に暗黒がじわっと広がるけれども、そういうことに驚かなくなった自分に驚いてもいる。

外に安寧を求めるのが難しい生活のなかで、自分でなんとかなる範囲のものが食事なわけだが、そんなわけで、我が家の食費はこのところ高騰している。

なぜなら、家族各自が好きなものを思う存分買うからだ。

つまり、ストレス発散ですね。

夫は酒量が増えて、昔は飲めなかったウイスキーにハマりだし、たぶん飲まない日はない(量が多いわけではないけれど)。

子どもはアメリカのお菓子はますます食べなくなって、日系スーパーに行ったときに好きなお菓子を買っている(必然高くなる)。

わたしは、日本の2倍はゆうにするオロナミンCを数本買って、ストレス発散。そういうものの積み重ねが、結果として食費の増加につながっている。

家計の支出に占める食費の割合を示したものを「エンゲル係数」というが、我が家はエンゲル係数が高い家庭となった。

旅行にも行かない、外食にも行かない、人と交友することにお金も使わない今、自分で唯一自由になる食費に、その情熱は注がれ、その数字がすさまじい勢いで上がっているのである。

一般にエンゲル係数が高い家庭ほど貧しい家庭だとされるが、いま、我が家はまさにそれだし、まわりの家庭は知らないが、コロナが深刻な国ではそういう家庭が増えているのではないかと思う。あなたのお宅はどうですか。


夫婦喧嘩は犬も食わないというけれど、第8スタジオで展開してきた過去コラム3年分を振り返っていくと(ときどき振り返って己の中の傾向を読み取って今後の参考にしたりするのです)、過去に書いた「夫への静かな不満」について書いたものが、徐々にビュー数を増やしているのがわかる。

読んでくださっている読者の方にはほんとうに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。

さて、文章を書く機会があるならば、わたしは正直であることを何よりも己に課してそのようにしているが、こういう推移を見るにつけ、ウィズコロナの現代において、正論や正しさやポジティブさ明るさというのは時に暴力になるものであって、人はいま不幸せなこと、嘆くこと、弱音を吐くこと、ひいては寄り添うことを求めている気がしてならない。

そんなわけで、最近の夫婦のすれ違いについて書こうと思う。まあ、失敗談です。

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