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ダニーデン12日目(マウントクック2日目)

朝起きて歩いて敷地内の昨日ランチをしたホテル2階のカフェで朝食を食べる。

この日は雲ひとつない青空。カフェの大きな窓から山の奥に見えるマウントクックの霊峰がはっきりと見える。

私はその美しい姿に感動を覚えながらチベットの聖地カイラスに重ねた。

中国に留学していた学生時代、夏休みになるとチベットの奥地に眠る聖地カイラスを目指す留学生が多く、私もその冒険に加わった。カイラスにはまずチベットに入り、そこからヒッチハイクを乗り継いで聖地に向かうと聞いていた。当時チベットへは飛行機かバスを使用する陸路コースのみ。もちろん貧乏学生は皆バスルートでチベットに向かうのだが、その途中のゴルムドの町で体を高山に慣らしながらバスの出発を待っていた時に、私は3人部屋のドミトリーで激しい頭痛に襲われた。

覚えているのはドミトリーの同居人がテレビを見ながら騒いでいたこと。当時開催されていたフランスワールドカップを見ていたようだった。

その後、どうやってたどり着いたのか、宿の主人が付き添ってくれたのか、気づいた時にはゴルムドの病院に寝ていた。

覚えているのは薄汚れたチューブを鼻に詰め込まれ、血の付いたようなベッドが並ぶ大部屋で寝ていたこと。

すぐに、個室に移動させてもらい、診断は”高山病”と言われ、鼻に詰めこまれたチューブが酸素が入ったボンベだったこと。そのボンベは一人では運べないほど大きな家庭用のガスボンベのようなものだったことも覚えている。

病院に入院したのは人生で初。それも中国の奥地ゴルムドで。

1週間ほど病院へ入院して、頭痛のおさまった私は、標高2000メートルのゴルムドで高山病ではチベットは無理と諦め、バスでシルクロードの町、敦煌を目指したのだった。

日本人に人気の敦煌。街には日本食レストランもあり、鳴沙山の美しい砂漠の景色に心身ともに健康になり、そこからシルクロードの旅へと切り替えたのだった。

あの事件から私は高山病になることを恐れ、富士山登山に誘われても絶対行かないと心に決めているのであった。

話を戻そう。

マウントクックを見ながら、20年以上前に憧れたカイラスはこんな美しい山だったのではないかと思うほど、マウントクックも神々しい姿でそこにたたずんでいた。

そんな中、今日の登山ルートは昨日とうって変わり、ひたすら急な階段を上り続ける登山健脚者向けコース”Sealy Tarns・Track”コースに決まった。

当初、私と6歳の長男は難しいだろうと留守番しようと考えていたのだが、この日の天候の良さと昨日意外と歩けて楽しかったので、家族全員でチャレンジすることにした。

こちらのコース、最初は森の中を歩き、昨日と変わらないな。。。と思っていると突然急な階段が現れ、そこからはひたすらひたすら階段を上る。

階段は人一人が歩ける程度の狭い階段で、上から降りてくる人がいれば道を譲り合いながら進んでいく。

気温もぐんぐん上がり、水の消費量も半端ではなく。

どんどん進む次女と長男を夫が見張り、どんどん遅れていく私を長女が見守ってくれた。。。背負っていたナップサックも持ってくれた。

ところどころに岩や簡単なベンチが置かれ、休憩スポットから眺める絶景は疲れをいやしてはくれるけれど、標高も上がるから息をするだけでも苦しい。

ひたすら階段しか見えず、いったいいつになったらゴールなのだろうかとクラクラするほど。

空は相変わらず雲一つない青空。風もないのが幸いだ。なにせ、狭い急階段。階段の左右は切り立った崖のところもあり、少しでも風に吹かれて転がったら、命はない。

最後のほうは100歩登ったら1度の休憩をはさむリズムを繰り返した。小さなゴールを決めるほうが登りやすかった。時には四つん這いになりながら、最後の力を振り絞って一歩一歩階段を上がった。

ゴール地点には目の前に広がる迫力ある雪山。もちろんその奥にマウントクックも。そしてこのコースの由来である”小さな水たまり”も。

この水たまりに周囲の雪山が反射して映し出された雑誌の紹介写真を見て、このコースに行きたいと長女が言ったのだった。

時間を見ると出発から2時間半過ぎていた。

こちらにも簡素なベンチあり、そこで少し休憩し、帰りはひたすら下るだけと安心していたところ、登りであんなに元気だった長男と次女がダウン。

張りつめていた気持ちも切れたのか、実際にひどい下り階段に脚がガクガクすると何度か休憩をはさみながらゆっくりと下る。

昨日のコースは小さな子連れも多かったが、さすがにこちらのコースは重装備した登山家風の方も見られ、子供はほとんど見なかった。

子どもたちは行きかう人々にすごいね!がんばれ!と声をかけてもらいながら1時間半ほどかけて下山。

下山後はホテル2階のカフェで2日間の慰労のアイスクリーム。

カフェのスタッフいわく、1日中マウントクックの雄姿を眺めることができるのは珍しいらしく、とてもラッキーな1日だったようだ。

その後は再び4時間のドライブでダニーデンへ。

もちろん、帰りの車の中で子供たち3人は熟睡。

帰宅してパスタを食べて、明日からの学校に備えて就寝。

天気にも恵まれ、子供たちの成長を感じることができた登山体験の週末となった。

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