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ふと思い立ってLyphardについて調べてみた

Lyphardについて

TARGET frontier JVより

Lyphardは1972年の仏ジャックルマロワ賞・フォレ賞などを制した芝マイラー。主な産駒に、1986年英2000ギニーを制したダンシングブレーヴ、1986年BCターフを制したManilaなど。
スピードの持続力に富んでおり、血統としては母父父Fair Trialの影響が強くみられる。また、同じくNorthern Dancer、Fair Trial、Hurry Onなどが共通する種牡馬として、Danzigとの相性も良く、増幅する効果が見込める。

TARGET frontier JVより

Lyphardの影響を受けた馬たち

ジェンティルドンナ

TARGET frontier JVより

牝馬3冠など、G1級7勝を果たした名牝・ジェンティルドンナ。本馬はLyphardの4×4、さらに母ドナブリーニは父方にDanzigを持つ。3歳秋以降に見せた、先行してしぶとい足を使う姿は、まさに父ディープインパクトの持つFair Trial的な部分を増幅させた形といえそう。


キタサンブラック

TARGET frontier JVより

同じくG1級7勝のキタサンブラック。父ブラックタイドはディープインパクトの全兄にあたる血統だが、弟よりも大柄なパワー型で、母ウインドインハーヘアの持つ欧州的な馬力が色濃く表出されていた。本馬はLyphardの4×4、母系のスピードもあり、逃げ・先行でしぶといタイプであった。


リスグラシュー


TARGET frontier JVより

エリザベス女王杯・宝塚記念・有馬記念を制した名牝リスグラシュー。本馬はハーツクライ産駒らしく4歳秋に本格化。それ以前も複数回G1での2着が4度あったが、位置取りも以前よりとれるようになった。本馬はLyphardの5+4。宝塚記念で見せた番手からの勝ち切り、有馬記念4角を外から捲り上げていく姿は、まさに「らしさ」なのではなかろうか。

LyphardとNever Bend(≒Bold Reason)の可能性

ここに取り上げたジェンティルドンナはNever Bendを、また、道中3番手から勝ち切ったダービー馬ディープブリランテも、Lyphardクロスを持ち母系にNever Bendの入るディープ産駒である。ディープインパクト産駒に対してのNever Bend(≒Bold Reason)の相性についてはリンク先の望田氏のブログが詳しい。

リスグラシューはハーツクライ産駒だが、これもLyphardのクロス+母がMill Reafの5×3というクロスの持ち主である。ハーツクライ産駒のこのパターンでは、ワンアンドオンリーやヌーヴォレコルト(ハーツ×Danzig×Never Bend)がおり、Lyphard(Danzig)との親和性については今後とも考えていきたい。

Fair Trial増幅馬の適条件を考える~中山外2200と中山内2000・2500

中山芝2200m 外回り


LyphardクロスのようなFair Trial増幅系の馬が良く走る舞台として、中山芝2200mは最早鉄板のようになってきている。以下中山芝2200mで行われる重賞成績を示す。

オールカマー 直近10年 Lyphard内包馬
セントライト記念 直近10年 Lyphard内包馬
AJCC 直近10年 Lyphard内包馬

また、それぞれ単勝20倍以下の人気馬に絞ると以下のような数字になる

オールカマー 直近10年 Lyphard内包馬 単勝オッズ20.0倍以下
セントライト記念 直近10年 Lyphard内包馬 単勝オッズ20.0倍以下
AJCC 直近10年 Lyphard内包馬 単勝オッズ20.0倍以下

AJCCでこそそこまで際立った数字にはなっていないが、中山外回りコースのコース形態上、スピードの持続力勝負になりやすいため、上記のように結果を出しやすいのではないだろうか。現に、本年のオールカマー勝ち馬ジェラルディーナはLyphardの5×5・5、セントライト記念勝ち馬ガイアフォースは父キタサンブラックだった。ラップ比較でも、メンバーレベルや馬場差を考えてもそれほど差は感じられず、後半持続力勝負という形が基本。

中山2200m ラップ比較 過去10年平均

中山芝2000m 中山芝2500m 内回り

中山芝2000mは正面スタンド側をスタートして内回りコースを一周、中山芝2500mは、外回りコースの出口あたりがスタートとなるが、ほとんどが内回りコースで行われる。以下、中山芝2500mで行われる日経賞および有馬記念、そして中山芝2000mで行われる中山金杯(これもハンデ戦ではあるが...その他が3歳春以前or牝馬限定なので金杯をチョイス)の結果が以下になる。

中山金杯 直近10年 Lyphard内包馬
日経賞 直近10年 Lyphard内包馬 
有馬記念 直近10年 Lyphard内包馬
 過去11年になってました

先ほどと同様、単勝20倍以下の人気馬に絞ると以下のような数字になる。

中山金杯 直近10年 Lyphard内包馬 単勝オッズ20.0倍以下
日経賞 直近10年 Lyphard内包馬 単勝オッズ20.0倍以下
有馬記念 直近10年 Lyphard内包馬 単勝オッズ20.0倍以下
過去11年になってました

こちらも中山金杯に関しては成績がやや低調である。AJCC、中山金杯共に1月開催であり、馬場の問題か…とも思われるが、12月末開催の有馬記念ではむしろ良績を残している。有馬記念がG1級故にある程度ペースが流れることで、キレよりも持続力を求められやすくなっているというところを仮説として置きたい。

中山2500m ラップ比較 過去10年平均
中山金杯 ラップ推移 過去10年平均

有馬記念とLyphard

前述のように、有馬記念とLyphardクロス馬は非常に相性が良い。
以下、Lyphardクロスを持つ好走馬を挙げる。

Lyphardクロスの有馬記念好走馬

上記の内ジェンティルドンナは先述のようにDanzigを持ち合せるし、クロスはないが、2016年1着サトノダイヤモンド、2018年1着ブラストワンピースなどは、似ている構成である「Lyphard+Danzig」を持つ。
有馬記念は比較的人気馬で決着しやすいレース質であるが、その中でこれだけの数字を残していることからも、信頼度は高いといえそう。

2022年の出走予定馬から

イクイノックス

TARGET Frontier JVより

母はG3マーメイドSを勝ったシャトーブランシュ。半兄にヴァイスメテオール。本馬は父にキタサンブラックを配し、Lyphardを4・5×4でクロスする。ただし、本馬の場合はキングヘイローを介してのクロスで、Alzao≒ダンシングブレーヴ的な瞬発力源を刺激した形で、Halo≒Drone≒Sir Ivorの4×5・4・5、そして母系のトニービンと直線の長い東京コースがベストだろう。ただ、母系の内回り適正もあり、無難にこなしてきそうなイメージ。少なくとも現3歳世代のトップだが、成長曲線は遅め。自慢の末脚がどこまで伸びるか。

ディープボンド

TARGET Frontier JVより

昨年の2着馬。母は3勝で、母母モガミヒメの牝系。その母母自身がTom Foolの4×5。イクイノックス同様Alzao≒ダンシングブレーヴを介してのLyphardの5×4を持ち、さらにTom Foolを増幅した形。キズナ産駒の牡馬である本馬は軽いスピードで先行できるのが持ち味だが、本馬の一番の特徴は何といっても血統で表現するのが難しいズブさだろう。似た構成のイクイノックスと比べてキレる脚はないが、心肺機能の高さで走り切る。凱旋門賞大敗からのローテは昨年と同様。今年は川田騎手騎乗で、どのような走りをするか。

ジェラルディーナ

TARGET Frontier JVより

母ジェンティルドンナは本稿で何度も取り上げている名牝。父にモーリスを配した本馬は、Lyphardの5×5・5、Danzigの5×4など、母の良さを増幅した形。オールカマーを内から抜け出して勝った姿や、エリザベス女王杯で4角から動いていった形は、本馬の良さが現れた場面だった。今シーズンコンスタントに使われているが、阪神牝馬S以降約半年で20㌔体重を増やした。福永騎手の教育の成果もあり気性面もマシになり、末脚一辺倒の形でなくなっていよいよ本格化。この時期の牝馬ということもあり、状態面については気がかりな点はあるが、まだ世間的には「近2走は展開が向いた」「直線長いコースが良い」と認識されていそう。もう一発勝ってアイドルホースになろう。

ボルドグフーシュ

TARGET Frontier JVより

母は仏マイルG3を2歳時に制覇。本馬は父にスクリーンヒーローを配したが、スレンダーな馬体の持ち主で、前走菊花賞の距離もこなしてみせた。
本稿で取り上げたLyphardの直接クロスは持たないが、父スクリーンヒーローのDanzig、母父LaymanのNureyev、そして母母母父父Lyphard。本馬の本格化はもっと前で競馬をできるようになったときのように感じるが、現状まだ完成しきっていない印象で、後ろからの競馬になっている。そのうえで、今回1週前好追い切りと言われ、引退発表の福永騎手を鞍上に迎えることで、穴人気しそうなにおいがかなりする。

最後に~2022有馬記念の展望~

本稿は、Lyphardについて調べてみたい…という漠然とした関心から、中山内回り及び外回りとの相性を中心に調べた成果をただ並べたものである。どの血統についてもそうだが、〇〇という馬だから××という特徴がある!と言うのは分かりやすく伝わりやすい一方、正確ではないこともままあるだろう。
Lyphardについては、基本的には持続力型だが、ダンシングブレーヴ≒Alzaoのような形を取ると瞬発力源が刺激される。そのうえで、一般的な特徴に固執するのではなく、各馬個別に馬体や走法などの要素を見ていく必要がある…ということを再認識した。注目馬に挙げた各馬についてもそうである。

今回は挙げなかったが、現役最強格のタイトルホルダーは中山で3勝しているように舞台も合うし、昨年の覇者エフフォーリアも調子が戻っていれば勿論力上位の存在だ。

私の夢は、ジェラルディーナの母娘制覇&アイドルホース化です。
あなたの夢は何ですか。


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