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なごり花

青く茂りはじめた
やわらかい葉っぱたちの中に

桜の咲き残りを探す

華やいだひとときの
余韻を楽しませてくれる

荷物の発送のために
久しぶりに寄ったコンビニの中を
ぐるりと一筆書きに廻る。

何も手に取らずにニ周目。

以前なら一周すれば
幾つかの品物を抱えていた。

それでも
駅裏に在ってくれることの
ありがたさに感謝して
切り餅と生活用品を持ってレジへ。

レシートを受け取り、
「ありがとう」と口にしたとき

スッピン隠しのために
目深に帽子をかぶった
頭をしっかり持ち上げて

店員さんの目を探した。


こんな当たり前のやり取りの中に
わたしの初めてが、まだある。

こうしたやり取りで
「相手」を「人」として
意識していなかったと氣づいたのは
最近のこと。

スーパーのレジ、
宅配便を受け取ったとき、
バスから降りるとき

「ありがとう」と
口にはしていたけど
今までのわたしなら、
相手がロボットになっても
同じように伝えていたかも。

相手の目を見ていなかったから。

無意識に、今日は
相手の目を探して頭を上げたわたし。

少しずつ
「わたし」という世界の
人口は増えている。


遅れて咲く花は
次の盛りの始まりを
見ることができる

だからわたしは伝えよう
花の季節は美しかったことを
次に来る緑の季節も美しいことを

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