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#112 大字と小字

 この二つの漢字、読めない方が増えたのでは?以前は、手紙の住所などに「○○市○○町大字○○小字○○」と書かれていたことがありました。”おおあざ”(大字)と”こあざ”(小字)は、昔から続く、その土地ごとの呼び名です。(単に「○○市○○町字○○」という場合の方が多かったかな?)ちかごろ、地名の”あざ”字が消えてしまったのは、多分「○○番地」や「○○-○○-○○」と数字化が進んだからだと思います。

 もし郵便や登記などで場所を指定するだけであれば、それこそ書籍のISBNコードのようにすべて数値化したほうが、コンピュータには効率的です。しかし、我々人間の会話で、数値だけで会話をするのは、なかなか骨が折れます。”意味のない”情報を覚えるのは苦手です。”味気(あじけ)のある”情報はおぼえやすいです。

 プッシュホン式電話がまだ使われていた頃、アメリカの飛行場を降りるとレンタカー会社の看板に、電話番号の箇所にアルファベットが並んでいて一瞬不思議に思ったことがありました。公衆電話を見てみると、日本で見るプッシュホン式の電話機の文字盤に、数値の下にアルファベットが3文字ずつ程印刷してありました。(なるほど、数字ではなく、この文字を見ながらキーをたたけば、電話番号を押したのと同じことになるんだなーぁ。)と感心したものです。26文字で表記する言語の特権ですね。日本語ひらがなを、プッシュホンの下に印刷したら、きっと使いにくくてしょうがないでしょう。

 今でも、日本のCMでは、語呂合わせで自社の電話番号を印象付けようという”企業努力”がなされています。スマートホンがこれだけ広まってくると、電話番号を入力する機会が減り、QRコードやリンクボタンを押すだけで”電話”がつながるようになっています。効率は上がりましたが、自分で覚える気がなくなったので、スマホを忘れてきたりしたら「何もできない」という状態になる人が増えたと思います。

 地名の字(あざ)は、その土地の歴史や特徴と密接につながっているので、”味(あじ)”があります。少なくても、数字よりはイメージしやすいです。例えば、「須加」「須賀」と書いてあれば、その土地は砂地が多く、地面に杭を打ち込んでもしっかりと固定できないことが多いと思います。いわゆる「スカスカ」な場所という場合が多いと思います。(地盤改良や長い歴史で川の流れるスジが変わって、今ではスカスカでない場所もあるとは思います。)

 「効率」を重視するか、「人間の使いやすさ」を取るかは、いろいろな場面で相反することがあるかと思います。可能なら、人間が使うときには従来で、パソコン側はそれを紐づけられた個別の符号で”システム内でコッソリと”仕事してくれるのがありがたいです。但し、メンテナンスするのが人間なので、間違いを減らすために数字化するのもそれなりに意味があるかと思います。(個人的には、数値だけを10桁入力する方が、私の場合緊張します。電話番号のように、4桁ぐらいずつにチャンク化・カタマリ化してもらえるとありがたいです。)

 大字が消えていく中、効率は上がりますが「人としての生活のカオリ・アジ」が消えていく気がするのは、私だけでしょうか?消えたものは、もう戻りません。それぞれの、脳の中には生き続けますが、、、、。