見出し画像

#160 ”ホンモノ”と”理解者”

「いい音だねぇ~.」の後に続く言葉,Hi-Fi? それとも Real

多分この答えで年代が分かると思います.そもそも,Hi-Fiが読めない人,今ではきっと多いと思います.

Hi-Fi

 「ハイファイ」と呼んでいました.ずいぶん前から,オーディオ製品にこの文字を見かけることもありません.音質の良い,少し?高級な音楽プレーヤーなどについていた呼び名です.

High Fidelity(高忠実度、高再現性)の略語
Wikipedia「Hi-Fi」より引用

ハイファイセット

 こちらの「ハイファイセット」は,私の好きな昔の音楽グループの名前.「卒業写真」は荒井由実(松任谷由実)さんの方が有名だと思いますが,「水色のワゴン」などは今でも時々聴くと,歌詞の情景が目に浮かび映画を見ているかのように感じることができるお気に入りのグループです.「質の高い音楽」を目指すグループというのがネーミングから響いてくるのがセンスいいなぁーと昔から思っています.

リアル○○

 最近の音響・映像製品には,「リアル○○」という表記が多い気がします.現実(real)に近い,臨場感あふれるものが昔に比べて増えました.最近のコンピュータ グラフィックス(CG)はかなり”リアル”なので,影やレンズのピンボケ,熱風によるブレや金属などの反射もかなり再現されています.

「綺麗過ぎる」

 時々きれいな映像作品で,「この映像は実写です」と説明されると,そちらの方に感動する時があります.言われないと,”綺麗過ぎて”CGだと思ってしまう作品があります.実際の住宅を建てて,そこからの素晴らしい風景をカメラマン・照明,スタッフがすごく努力して撮影したものが,”綺麗過ぎる”と思えるんです.CG技術がない以前なら,映像を見た瞬間に”素直に”綺麗だなぁーと思えたと思います.CGは時に”リアルを超えた綺麗さ”を表現できるので,”綺麗過ぎる”のかもしれません.

リアルは「ほどほど」

 ほとんどの場合,現実(リアル)は,多少??もう少しこう直したらもっと良くなるのにぁー,という面があります.いわゆる,「ほどほど」です.

 音楽では,コンピュータの演奏(いわゆる打ち込み)では,ゆらぎがなくて正確なのでしょうが,今一つノレナイ音楽になることがあります.

 一方映像では,これからのCGは,この「人間のゆらぎ」も計算して画像を合成してくるかもしれません.(技術者のみなさんのお力,あなどれません.たぶんできるでしょう.)

オリジナル

 美術作品には昔から”贋作”と呼ばれるものがあるようですが,たぶん,時にはオリジナルを超えた”レプリカ”もあったと思います.どれがいいとか悪いとかは私にはわかりませんが,最初にそれを作ったというのがまずはスゴイという点かと考えます.音楽も同じです.

 例えば,ゴッホの絵を真似(まね)たり,それよりも”心震わせる作品”を作ったとしても,その”画風”はゴッホが最初に切り拓いたもので,もしかすると以前に挑戦した画家もいたかもしれないけれど,それを貫き通して確立して,没後に高い評価を得るようになったのは,ゴッホが間違いなく「オリジナル」原形:元の形で,始まり(オリジン,origin,原点)はゴッホです.風景があのように感じることができる”印象派”の画家は,ゴッホが始まりだっと思います.

作家の「追体験」

 人として生活する中で,「第一人者」「開拓者」「オリジナル」などと呼ばれるのは,さぞ愉快だろうと思いますが,我々凡人にはかなり難しいのが現実です.「芸術」と呼ばれる「芸」を極める「術」(すべ)を持たぬ我々は,それらを極めた人々の足跡を眺め感じて,”即席”リアル体験をすることで芸術家の追体験をして幸せな気持ちになるのかなと考えます.作家の生い立ちや時代背景を歴史小説などを通して知ると,今まで以上に音楽や絵画をパソコンを眺めても”追体験”できるなと,最近感じます.まさに,”ほんもの”にちかい「リアル」な体験です.

「先端」と「異端」

 おそらく”芸術”の分野では,「独創的」であることは必須条件だと想像します.我々凡人は,”独創”よりも”協調”を実際の生活では好むことが多い気がします.

 ”理解者”を増やしていないと,「先端」であることは「異端」となりかねません.ゴッホたちは,理解者が現れる前に自分の人生が終わりを迎えました.しかし,ピカソたちのように,雑誌や新聞などのメディアによって「理解者が育てられた」芸術家は,幸せだったと思います.

 これからの”芸術家”のみなさんは,きっとインターネットを活用して,自分からあるいはメディア,キュレータ?のみなさんによって”発掘してもらい”(実は自分でそうなるように活動して),自分の活動中に「理解者」を増やして「異端」から「先端」になっていくんだろうなあー,と「リアルな音と映像」を見ながら,ふと思う今日この頃です.