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#25 消えた学科?

自分が大学へ入学した最初の授業で、「無機材料工学科の学生さんはこちらへ集まってくださいーい。」と大教室の授業での履修登録時にアナウンスがあった。高校からの友人とは、ここで席が離れ離れになった。「俺、Yクラス。お前は、Esだから別のクラスだわぁ。じゃぁな!」と言い別れた。「電子工学科」に入学した自分がEsなのは、英語の綴りから何となくわかる。(最初と最後の一文字をくっつけだけ。)でも、何故「無機材料工学科」が「Y」なのか? 友人が学科で主に研究すると言っていた”ふぁいん せらみっくす”,あるいは金属”メタル”,英語のつづりにYが出てこない。後日別の授業で聞いたところによると、昔は「窯業(ようぎょう)工学科」があった名残で、学科名が変更になっても歴史ある由緒正しい「Y」が残ったということだった。まだ新入生の頃は知らなかったが、本当に窯業は由緒があり、「繊維」と同じくらい古い歴史があり、大学には別のキャンパス(敷地)に研究所があり先端材料を研究していた。

 もし誰かに「焼き物を研究する」と言われたら、「そんな古代からある技術、今でも研究することあるの?」と聞いてみたくなるに違いない。素人(しろうと)とは、そんなものです。専門をシロウトしない人たちなのですから、どうかお許しアレ。一方、当時は光ファイバーやコンピュータと言えば、新聞・テレビでよく特集され”夢の技術”・”スーパースター”として注目を集めていた。この学科なら、”ずうっー”と発展し続けていくだろうと信じて疑わなかった。電気工学科(E)の分野の新しい領域と情報(J)との融合分野が電子工学科(Es)だと思っていた。(当時私は、JはJYO-HOの頭文字だったことにも驚いた。E科は英語で、J科は日本語??)

 卒業して数年たったら、学科再編があり3つの学科は二つとなり、私の出身学科の電子工学科は名前が消えた。(えっ!!)「電気情報工学科」となっていた。「電気の”電”は電子の”電”」と言えなくもないが、「情報」とのバランスからすれば「電気の”電気”」となり,「電子」が消えたと思うのが普通だろう。それに気づいた時,インターネットで「電子工学科」を検索したら、「絶滅学科」として繊維・窯業と並んで紹介されていた。誰が作ったか知らないが当時私が見たそのサイトには「絶滅危惧学科」も別に記載があった。出身学科が、「朱鷺(とき)」を通り越して「ニホンオオカミ」になってしまったとは。驚いた。

 学問は常に進化するために、学科名が改称されるのは当然だと思う。ただ最近気になるのは、変更する方向・分野について.新規性が必要な研究テーマで研究論文を出し、それをもとに研究費を外部から獲得できることが日本では要求されすぎていないかと言うこと。企業が望む人材には、卒業生の全員に研究の力を要求しているわけではないこと。各産業の基幹分野の技術は、成熟しているがためにおそらく研究論文を新たに書くことは難しいと思う。教育論文は書けるであろうけれど。(それも簡単ではないと思うけれど。)

 イギリスの教育システムは日本と異なり、大学教育の所管官庁が日本の経済産業省に相当するところが担当していると読んだことがある。外国のある面だけを取り上げて、その良し悪しを議論するのは賢明でないことは承知しているけれど、単に予算獲得に走らず長期的な戦略を産業界とともに立案して行くところにイギリスの強みの一端があると思う。

 さて、今頃、「E科」と「J科」はどうなっただろう? 先日出身大学のホームページを見たら、今頃の流行りなのか何の学科かわからない新しい学科名に代わっていた。そう、今の時代、いろいろな分野が融合する「学際領域」が重要だから、名前から分かろうとするのが”古い”のかもしれない。(思わず間違えそうだけれど、「学祭」ではない。笑)


(写真: 旧東海道宿場町 関宿  引用元 https://photo.mie-eetoko.com/photo/176)