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Ⅵ. 関数の発散・収束と計算①【基礎微積分学:大学数学】



0. お詫び

まず、投稿間隔が長引いてしまい申し訳ない。
今回扱う概念がかなり説明、そして場合分けの必要があるためかーなーり記事が長くなってしまった。
危うく10000字超えの超大型記事になってしまうところだったが、なんとか区切り所を見つけて分けることができた。Ⅶも近日中に投稿ができる、はず。

そして今回、そして次回の記事は(いつも通りではあるのだが)本に記載されていない概念が多分に含まれている。ご了承願う。

1. 簡単な極限の計算

1.1. 片側極限(One-sided limit)

計算法の前にちょっと特殊な極限を見てみよう。「片側極限」だ。
前回普通の極限は見てきたんだけど、「片側」極限はなんぞや。
まぁ本当に片側だけ見た極限、ってだけなんだけどね。

[前回の極限の定義(ε-δ論法)で$${f}$$の定義域を$${^\exists h>0,\;^\exists i>0;}$$
 $${[a-h,\;a+i]-\{a\}}$$を含む集合、と言ったところで]

右側極限:$${h=0}$$の場合、つまり$${a}$$より大きい側のみを考慮する極限。
      $${\displaystyle\lim_{x\to a^+}f(x)=L}$$と表す。
左側極限:$${i=0}$$の場合、つまり$${a}$$より小さい側のみを考慮する極限。
      $${\displaystyle\lim_{x\to a^-}f(x)=L}$$と表す。

1.1.1. 片側極限の定義

まぁ、例を見てもらった方が一番早いと思う。
一般的に「ガウス関数」と呼ばれる最大整数関数$${\lfloor x\rfloor}$$で試してみよう。
簡単に言うと切り捨て。Ⅰで一回取り上げたから見たい人は見てもらって。

図 1. y=⌊x⌋ の x=2 での片側極限をそれぞれグラフで表したもの

こちらの図は、前回の極限みたいに片側極限をグラフで表したやつ。矢印でね。
文字通り左側極限は左側からの矢印で、右側極限は右側からの矢印で表す。
$${\displaystyle\lim_{x\to2^-}\lfloor x\rfloor}$$(青色)は$${2}$$の左側からの流れなので$${1}$$になって、
$${\displaystyle\lim_{x\to2^+}\lfloor x\rfloor}$$(赤色)は$${2}$$の右側からの流れなので$${2}$$になる。

ここで、前回のやつを思い出してほしい。
前回のは普通の極限だったけど、それは矢印が両側から入っていただろう?
それで、今回の片側極限は片側から入る極限。

なら、その片側から入る極限が左右同時に入ったら普通の極限になるんじゃね?
ということで、極限に対して少し新しい定義を見てみよう。

$${\displaystyle\lim_{x\to a^-}f(x)=\lim_{x\to a^+}f(x)=L}$$と$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=L}$$は同値である。

また、$${a}$$での左右の片側極限が一致しない
または$${a}$$での片側極限が一つでも存在しない場合$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)}$$は存在しない

1.1.2. 片側極限と極限の関係

というわけで、「極限が存在する」を証明するには、
『右側極限が存在して+左側極限も存在して+そいつらが同じ』
というものをしてもよさそう。

1.2. 極限法則

極限に入っている関数が複雑なとき、わりと直感通りに分割ができる。

和/差の法則:$${\displaystyle\lim_{x\to a}\{f(x)\pm g(x)\}=\lim_{x\to a}f(x)\pm \lim_{x\to a}g(x)}$$(複号同順)
定数倍の法則:$${\displaystyle\lim_{x\to a}\{cf(x)\}=c\lim_{x\to a}f(x)}$$
積の法則  :$${\displaystyle\lim_{x\to a}\{f(x)g(x)\}=\lim_{x\to a}f(x)\cdot\lim_{x\to a}g(x)}$$
商の法則  :$${\displaystyle\lim_{x\to a}\frac{\,f(x)\,}{g(x)}=\frac{\,\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)\,}{\displaystyle\lim_{x\to a}g(x)}}$$
累乗の法則 :$${\displaystyle\lim_{x\to a}\{f(x)\}^n=\{\lim_{x\to a}f(x)\}^n\;\;(n\in\mathbb{N})}$$
根号の法則 :$${\displaystyle\lim_{x\to a}\sqrt[n]{f(x)}=\sqrt[n]{\lim_{x\to a}f(x)}\\\qquad\qquad\qquad\;\;(n\in\mathbb{N},\;\;\mathsf{if}\;n\in2\mathbb{N},\;f(x)>0)}$$

1.3. 極限の性質①:極限法則

ここで$${2\mathbb{N}}$$は正の偶数。$${2\times\mathbb{N}}$$だと思えてもらえれば。

1.3. 直接代入法

さて、本格的に極限の計算をしてみよう。
前回例題として出したのは$${\displaystyle\lim_{x\to2}x^2=4}$$なのだが、
そのとき言った「そりゃそうでしょ、$${2^2=4}$$なんだから」は半分は正解だ。
ということで、まずはこちらをご覧いただきたい。

定数関数  $${\displaystyle\lim_{x\to a}c=c}$$
 (ex. $${\displaystyle\lim_{x\to 3}4=4}$$)
恒同関数  $${\displaystyle\lim_{x\to a}x=a}$$
 (ex. $${\displaystyle\lim_{x\to 6}x=6}$$)

1.3.1. 極限の性質②:定数&恒同関数

なんと、こうらしい。いやまぁ、グラフ見てみりゃ一目瞭然なのだけれども。

図 2. 定数関数(y=c)の極限
図 3. 恒同関数(y=x)の極限

そして、この性質と先ほどの極限法則を使うと次の性質が得られる。
当然っちゃ当然。

関数$${f}$$が多項関数有理関数、または有利関数が根号に入った無理関数で、
$${a}$$が$${f}$$の定義域の元であるとき
$${a}$$での$${f}$$の極限値は$${a}$$での関数値と同じである。
[$${\Longleftrightarrow \displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=f(a)}$$]

ただし、偶数累乗根関数の$${0}$$への極限直接代入法が半分成立しない
 $${\displaystyle\lim_{x\to0^-}\sqrt[2n]{x}}$$および$${\displaystyle\lim_{x\to0}\sqrt[2n]{x}\;\;(n\in\mathbb{N})}$$は存在せず、
右側極限である$${\displaystyle\lim_{x\to0^+}\sqrt[2n]{x}}$$のみ$${\sqrt[2n]{0}=0}$$の値を持つ

1.3.2. 直接代入法

……あら、代入したら終わりなんですね。
どうしたらそうなるか一応説明(証明)をしておくと、
$${\displaystyle\lim_{x\to a}cx^n}$$が$${c\:\displaystyle\underbrace{\lim_{x\to a}x\times\lim_{x\to a}x\times\cdots\times\lim_{x\to a}x}_{n個}=ca^n}$$になるので多項関数はOK
多項式$${P(x),\:Q(x)}$$に対して$${\displaystyle\lim_{x\to a}\frac{P(x)}{Q(x)}=\frac{\displaystyle\lim_{x\to a}P(x)}{\displaystyle\lim_{x\to a}Q(x)}=\frac{P(a)}{Q(a)}}$$なのでRt. f.もOK
有利式$${R(x)}$$に対して$${\displaystyle\lim_{x\to a}\sqrt[n]{R(x)}=\sqrt[n]{\lim_{x\to a}R(x)}=\sqrt[n]{R(a)}}$$なのでIRt. f.もOK

無理関数に関しては偶数累乗根号の中が正の数である必要があるので、そもそも負の数が定義域に含まれない。ゆえに$${\displaystyle\lim_{x\to0^-}\sqrt[2n]{x}}$$を調べようがないので、右側極限のみ計算可能ということだ。

ちなみに、定義で出てきた(極限値)=(関数値)という式は次の記事のほうにも出てくるので、注目してほしい。

さて、極限の計算を少しだけ練習しておこう。

1.  $${\displaystyle\lim_{x\to3}(x^2-6x+7)=3^2-6\cdot3+7=-2}$$

2.  $${\displaystyle\lim_{x\to4}(x^3-2x^2-8x)=4^3-2\cdot4^2-8\cdot4=0}$$

3.  $${\displaystyle\lim_{t\to1}\left(\frac2{t+1}+3\right)=\displaystyle\frac2{1+1}+3=4}$$

4. $${\displaystyle\lim_{t\to2^+}(\sqrt{2t-4}-2)=\sqrt{2\cdot2-4}-2=-2}$$

1.3.2. 直接代入法の練習

2. 関数の発散、無限大

2.1. 無限大(infinite)

複雑な関数の計算をする前に、こちらの概念を覚えてほしい。
割と日常生活で使われがちな、「無限大」のことだ。

無限大は、文字通り「無限に大きくなる状態」のこと。数字ではないよ。
つまり「$${x\longrightarrow\infty}$$」というのは「$${x}$$が無限に大きくなる」を意味するんだね。
逆に「負の方向に無限に小さくなる状態」はマイナスをつけて「$${-\,\infty}$$」と表す。

これを極限にも適用できるんじゃない? っていうのが次のチャプター。

2.2. 関数の発散①:無限大に発散

例として、$${f(x)=x^2}$$で$${x}$$がめちゃくちゃデカくなったら$${f(x)}$$はどうなる?
めっっっちゃくちゃデカくなる。そうだよね。そりゃそうだ。
これを記号に表したら……? 「$${x\longrightarrow\infty}$$なら$${f(x)\longrightarrow\infty}$$」になる。

$${g(x)=-x^2}$$ならどうだろう。マイナスの方向に落っこちてくよね。
ならば「$${x\longrightarrow\infty}$$なら$${g(x)\longrightarrow-\,\infty}$$」と書けるはず。

ところで、これ、な~んか見たことない?
そうだよね、極限表記の一種だよね。「$${x\longrightarrow a}$$なら$${f(x)\longrightarrow L}$$」のやつ。
ということでこちらの定義をご覧いただこう。

$${x}$$が限りなく大きくなるとき$${f(x)}$$も限りなく大きくなるということを
$${x\longrightarrow\infty}$$のとき$${f(x)\longrightarrow\infty}$$、または$${\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\infty}$$と表す。

同様の方法で「$${x\longrightarrow-\,\infty}$$のとき$${g(x)\longrightarrow\infty}$$」を
$${\displaystyle\lim_{x\to-\infty}g(x)=\infty}$$と表す。

また、$${\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=\infty}$$または$${\displaystyle\lim_{x\to-\infty}f(x)=\infty}$$を
「$${f(x)}$$は正の無限大に発散する」と言う。

2.2.1. 正の無限大に発散

『正の』無限大に発散があるんなら、『負の』~もあるんじゃねーの?
あります、もちろん。こちらは少し簡略に。

・$${x\longrightarrow\infty}$$のとき$${f(x)\longrightarrow-\,\infty\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=-\,\infty}$$
・$${x\longrightarrow-\,\infty}$$のとき$${f(x)\longrightarrow-\,\infty\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to-\infty}f(x)=-\,\infty}$$

これら二つを合わせて「$${f(x)}$$は負の無限大に発散する」と言う。

2.2.2. 負の無限大に発散

2.3. 関数の発散②:定数で発散

逆に、とある値に近づくにつれてめちゃくちゃ大きくなったり小さくなったりする関数もあるよね。
$${x\to0}$$のときの$${\displaystyle\frac1{\,x^2\,}}$$とか、$${x\to0^+}$$のときの$${\ln x}$$とか。
グラフを見てみると一目瞭然。天井とか床に突き刺さってるよ、グラフが。

・$${x\longrightarrow a}$$のとき$${f(x)\longrightarrow\infty\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=\infty}$$
・$${x\longrightarrow a}$$のとき$${f(x)\longrightarrow-\,\infty\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=-\,\infty}$$

これら二つを合わせて「$${f(x)}$$は$${a}$$で発散する」という。

2.3. 定数で発散

しかし、ここでも極限の条件は適応されるので、
左側極限と右側極限が違う$${\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\,1\,}x}$$か、片側極限が存在しない$${\displaystyle\lim_{x\to0}\ln x}$$とかは
定義されない。$${\pm\,\infty}$$とは言えないじゃん? これは「$${+}$$または$${-}$$」だし。

2.4. 無限大の性質

無限大は状態とは言ったけど、ある程度の四則演算で簡単にすることはできる。

無限大の和:$${\infty+\infty=\infty}$$
無限大の積:$${\infty\times\infty=\infty}$$
正の定数倍:$${c\times\infty=\infty\;\;(c> 0)}$$
負の定数倍:$${(-\,c)\times\infty=-\,\infty,\;\;(-\,c)\times(-\,\infty)=\infty\;\;(c> 0)}$$

※  $${\infty-\infty}$$(無限大の差)、$${\displaystyle\frac{\,\infty\,}\infty}$$(無限大の商)は一般的に定義されない

2.4. 無限大の性質

2.5. 極限の収束

発散とは逆に、とある定数に落ち着くことを収束と言う。
前回言っていた「$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=L}$$」とかね。
そんで、$${\displaystyle\frac{\,1\,}x}$$か$${e^x}$$みたいにめっちゃデカくなるかちっちゃくなるにつれてとある定数に近づいていくこともある。これも収束です。

・$${x\longrightarrow a}$$のとき$${f(x)\longrightarrow L\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=L}$$($${a}$$で収束
・$${x\longrightarrow\infty}$$のとき$${f(x)\longrightarrow L\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to\infty}f(x)=L}$$
 (正の無限大に収束
・$${x\longrightarrow-\,\infty}$$のとき$${f(x)\longrightarrow L\;\;\Longleftrightarrow\;\;\displaystyle\lim_{x\to-\,\infty}f(x)=L}$$
 (負の無限大に収束

2.4. 関数の収束

関数が$${L}$$に収束すると、そのときの極限値は$${L}$$と言える。

ちなみに「発散」で結果として出た$${\infty}$$と$${-\,\infty}$$(合わせて$${\pm\,\infty}$$とも)は、
数字とは呼べないよ
だから$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=\infty}$$のとき$${a}$$での$${f}$$の極限値は存在しない

次回はもっと複雑な関数の計算をしていく。お楽しみに。


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