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Ⅳ. 対数関数と逆三角関数【基礎微積分学:大学数学】



1. 対数関数(Logarithmic f.)

1.1. 対数(Logarithm)

対数、韓国ではログ(logarithm)と言うが、
いうなれば指数が覇権を握ったもの。
対数の定義はこちらだ。

$${\log_aN}$$は方程式$${a^x=N}$$の解$${x}$$として定義される。
ここで$${a>0,\;a\neq1}$$を満たす$${a}$$を(base)、
$${N>0}$$を満たす$${N}$$を真数(antilogarithm)と言い、
また$${\log_a N}$$を$${a}$$を底とする$${x}$$の対数と言う。

1.1.1. 対数の定義

つまり$${\log_aN}$$というのは「$${a}$$を何乗して$${N}$$になったか」を表した数。
読み方は「ログ エー(の) エヌ」で構わない。そうじゃないとめんどいしね。

そしてこの対数は要するに指数をそのまま下ろしたものなので、かなり面白い性質を持つ。

対数の底の条件を満たす定数$${a,\;b,\;c}$$、真数の条件を満たす定数$${N,\;M}$$、
また任意の実数$${p,\;q\;(p\neq0)}$$に対し
対数の和:$${\log_aM+\log_aN=\log_aMN}$$
対数の差:$${\displaystyle\log_aM-\log_aN=\log_a\frac MN}$$
負の対数の変換:$${\displaystyle -\log_aN=\log_a\frac1N=\log_{1/a}N}$$
底・真数の累乗の摘出:$${\displaystyle \log_{a^p}N^q=\frac {\,q\,}p\log_aN}$$
対数の逆数の変換:$${\displaystyle \log_ab=\frac1{\,\log_ba\,}}$$
対数の底の変換:$${\displaystyle \log_ab=\frac{\log_cb}{\,\log_ca\,}}$$
指数での対数:$${a^{\log_aN}=N}$$
対数での指数:$${\log_a a^p=p}$$

1.1.2. 対数の性質

1.2. 自然対数(Natural log.)

ここで、前回(Ⅲ)でやったネイピア数$${e}$$を引っ張ってこよう。そのとき言ったはず、「指数関数と対数関数を扱うには必須だ」と。
ということで、この$${e}$$を使った対数を考えよう。

底がネイピア数$${e}$$である対数を自然対数と呼び、
$${\log_eN}$$を特別に$${\ln N}$$と表記する。

自然対数を$${\log N}$$と表記することもあるが、
この文書、およびこの本では$${\ln N}$$を自然対数とする。
この文書での$${\log N}$$は底が$${10}$$である常用対数。

1.2.1. 自然対数の定義

$${\ln x}$$の呼び方はもう「エルエヌ エックス」でよろしい。めんどい。
また、$${\ln}$$は対数の一部なので、対数の性質をそのまま$${\ln}$$も持つ。
そこで$${\ln}$$を扱うときに役立ちそうなやつだけを引っ張ってこよう。

真数の条件を満たす定数$${M,\;N}$$、対数の底の条件を満たす定数$${a}$$、
任意の実数$${r}$$に対し
指数の底の変換:$${N^r=e^{r\ln N}}$$
対数の底の変換:$${\displaystyle \log_a N=\frac{\,\ln N\,}{\ln a}}$$

1.2.2. 自然対数の性質(の一部)

おまけな上にこの本に登場しない表記ではあるが、
底が$${e}$$である指数関数$${y=e^x}$$のことを$${y=\exp(x)}$$と表記したりする。
指数の方に複雑なやつが乗ってたらこう表記した方が書きやすいだろうからね。

1.3. 対数関数、自然対数関数

この対数、自然対数を関数へと昇華したのが対数関数&自然対数関数。
定義は別にいらんと思う、指数関数とほぼ同じこと言ってるかもだから。

そして指数関数$${y=a^x}$$を対数で表したら$${x=\log_ay}$$になるので、
$${a^x=f(x)}$$とすれば$${\log_ax=f^{-1}(x)}$$であることがわかる。
$${f(x)=y\Longleftrightarrow f^{-1}(y)=x}$$だからね。
ということで、

$${a>0,\;a\neq1}$$を満たす定数$${a}$$に対して
対数関数$${y=\log_a x}$$は指数関数$${y=a^x}$$と逆関数関係にある。
故に$${y=\log_a x}$$のグラフは$${y=a^x}$$のグラフと直線$${y=x}$$に対して対称

1.3.1. 対数関数の性質

という性質を持つ。……ということで、また新しい情報。逆関数を扱うときに集合に関して何か言っていたので、こちらでも扱っておこう。

$${a>0,\;a\neq1}$$を満たす定数$${a}$$に対して
$${y=a^x}$$の定義域、値域はそれぞれ$${\mathbb{R}}$$、$${\mathbb{R}^+}$$だったので、
その逆関数である$${y=\log_ax}$$の定義域と値域はそれぞれ$${\mathbb{R}^+}$$と$${\mathbb{R}}$$である

1.3.2. 対数関数の定義域・値域

逆関数の存在する関数では終域=値域なので値域と表記した。どっちでもいい。

また、$${\ln e< \ln e^2}$$でわかるように対数関数は$${\mathbb{R}}$$全体で増加する
だが、$${e^9}$$と$${e^8}$$は$${5000}$$を超えるほどの差があるのにこれを$${\ln x}$$に入れると差が$${1}$$しかないのを見るに、増加のスピードが入力値が$${1}$$を超えてからと~~~っても遅くなることが伺える。

2. 逆三角関数(Inversed tri. f.)

三角関数は$${x\in\mathbb{R}}$$であるときは一対一対応でないことは、三角関数には周期があるという事実を使ってとても簡単に証明できる。
……が、定義域を狭めたら、できそうじゃないか?

・$${\sin x \; \longrightarrow\;\underline{-0.5\pi\leq x\leq0.5\pi}}$$なら定義域全体で増加
・$${\cos x \; \longrightarrow \;\underline{0\leq x\leq\pi}}$$なら定義域全体で減少
・$${\tan x \; \longrightarrow \;\underline{-0.5\pi< x< 0.5\pi}}$$なら定義域全体で増加

2.1. 三角関数を一対一対応にさせるための調整

定義域全体で増加、もしくは減少していると$${{\sf s.t.}\;^\exists x_1\neq\,^\exists x_2,\;\; f(x_1)=f(x_2)}$$を満たす$${x_1,\;x_2\in}$$(定義域)があるわけがない。
というわけで一対一対応にさせることができたので、逆関数を作ってしまおう。

逆正弦関数:$${y=\sin^{-1}x}$$〈$${x\in[-1,\;1],\;\;y\in[-0.5\pi,\;0.5\pi]}$$〉
逆余弦関数:$${y=\cos^{-1}x}$$〈$${x\in[-1,\;1],\;\;y\in[0,\;\pi]}$$〉
逆正接関数:$${y=\tan^{-1}x}$$〈$${x\in\mathbb{R},\;\;y\in(-0.5\pi,\;0.5\pi)}$$〉
$${\sin^{-1}x}$$、$${\cos^{-1}x}$$、$${\tan^{-1}x}$$はそれぞれ$${\arcsin x}$$、$${\arccos x}$$、$${\arctan x}$$と書くこともできる。

2.2. 逆三角関数の定義 

三角関数での$${^{-1}}$$は「インバース」ではなく「アーク」と読むことに注意。
なので$${\sin^{-1}x}$$は「アークサイン エックス」と読む。他のも同様。

正直言うとこの本でそんな使う出番はない。
前に言ったみたいにかな~~~り先の「三角置換(を用いた積分法)」で$${x=\sin\theta}$$って置換して答えに$${\theta}$$がそのまま出てきたら$${\theta=\sin^{-1}x}$$ってやるときはあるけど。

基本三角関数の逆数の$${\csc}$$、$${\sec}$$、$${\cot}$$も同じように逆関数を作ることができる、が、あんまり使わないね。
しかも数学者によって元関数の定義域がブレるらしい。いやぁ~~やだやだ。

さて、これにてようやく「関数」パートの説明が終わった。お疲れ様。
次からは極限と導関数、つまり微分法の話をする予定だ。

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