Ⅲ. 指数関数と逆関数 【基礎微積分学:大学数学】
0. 注意
このシリーズで扱う『Calculus: Early Transcendantals, Metric Edition, ed.9』では前回説明した「終域(codomain)」という概念は登場しない。
$${f\!:\,\{1,\;2,\;3,\;4\}\to\{3,\;5,\;6,\;7,\;8\}}$$みたいな関数とかが登場しないから当たり前っちゃ当たり前だろう。(こんな関数じゃなければもう終域=値域だから。)
が、筆者は高校の頃「関数に関わる集合は定義域・終域・値域」と叩き込まれていたため、このシリーズの執筆にも終域を当たり前のように織り込んでいく。
そこんところはご了承いただきたい。
1. 指数関数(Exponential f.)
1.1. 指数に関する話
指数はまぁ簡単に言うと、何回同じ数字をかけたか、っていうのをかけた回数をかける対象の数字の上に小さく書いたことを累乗と言うのだが、この小さく書いた回数を「指数」と呼ぶ。
……という説明じゃあ指数には自然数(正の整数)にしか来れないような感じだが、実際の数学ではそうでもない。
ということでこの本で紹介された指数の定義について見てみよう。
また、$${n}$$が有理数である場合のみ$${b}$$は全ての実数に拡張できる。
が、$${0^0}$$は数学者の中でも派閥が分かれており、考えないことにする。
これに関する話はまた今度。
そして、この指数が用いられる累乗での四則演算を「指数法則」と呼んで、これが割と面白い性質を持っている。
1.2. 指数関数
これを見てもらったところで、ようやく指数関数の本題へと移ろう。
指数関数は、まぁ名前の通り指数の方に未知数が行った関数。
指数関数の定義域は$${\mathbb{R}}$$、値域は$${\mathbb{R}^+}$$。
まぁそりゃそうだろう。指数関数の定義で底が正の実数である必要があるのだから、その出力値も正の実数だろうさ。
グラフの形は「⤴」みたいな形。$${y=a^x}$$のグラフが
・$${a>1}$$のときは増加するグラフ、
・$${a=1}$$のときはもうそれは定数関数で、
・$${0< a< 1}$$のときは減少するグラフ。
$${a>1}$$のやつを縦にひっくり返したみたいな形。
また、$${a}$$がどんな値であれ点$${(0,\;1)}$$を通る性質がある。
そりゃまぁ、$${a\neq0}$$である限り$${a^0=1}$$だからね。
2. ネイピア数(Napier's Number) e
急になんか数字が出てきたぞ???? と思うかもしれないが、
指数関数&対数関数を扱うには必須な概念なので一回見てほしい。
これに関する数学的な定義は、まだ早いらしい。3章で紹介するよ!だって。
軽く言っておくと$${\displaystyle e=\lim_{x\to 0^+}\!\left(1+\frac{\,1\,}x\right)^x}$$と定義されるよ。
3. 逆関数(Inversed f.)
逆関数。掛け算で言う逆数みたいなもんだ。
まず定義をご覧いただきたい。
まぁ、要するに$${x}$$と$${y}$$を取り換えた関数。
ここで注目してほしいのは逆関数の定義域と終域。
元の関数の定義域が終域に、終域が定義域になっているのがわかる。
3.1. 逆関数が存在する条件:単射関数、全射関数、全単射関数
さて、突然だが、関数のイメージ図を考えてほしい。
このシリーズでは少しスキップしたバージョンの、だ。
$${f\!:\;X\to Y}$$の定義域$${X}$$、終域$${Y}$$のベン図を横並びで描き、対応する入力と出力を一個ずつ矢印(入力→出力)で繋げた図。高校のときにやったのではないだろうか。……やっていないかもしれないが。
実際に一回この図を描いてほしい。例題を出しておこう。
簡素にAAを用いて表してみると(簡素というか雑で申し訳ない。)
┌P┐―g―>┌Q┐
│1│\ │2│
│ │ \ │3│
│2│――┴>│4│
│3│―――>│6│
└─┘ └─┘
なので、答えは「(1) $${4}$$、(2) $${2,\;3}$$」となるだろう。
……さて、なぜ急にこんな話をしだしたか、というと、
先程解説した逆関数の条件にこれらの概念が絡んでくるからだ。
$${g}$$の逆関数$${g^{-1}}$$を実際にベン図を用いて作ってみると、
$${g^{-1}(4)}$$の値が$${1}$$と$${2}$$、2つあることがわかる。
……お? 関数の条件(Ⅰ参照)満たしてなくないっすか?
一つの入力に対して一つの出力を吐き出す、そういうのが関数なはず。
なら、元々こういうのが起こらないように重複をなくすべきでは……?
ということで、こういう重複をなくした
単射関数(Injective f.)/一対一関数(One-on-one f.)の定義がこちらだ。
一つの出力値にのみ向かって発射されるから単射関数、そして入力と出力の関係が一対一だから一対一関数なんだな~、って覚えてもらえれば。
そして、さっきの$${g^{-1}}$$にはまた問題がある。
それは$${g^{-1}}$$の定義域の元$${2}$$と$${3}$$の行方がないからだ。
$${g^{-1}(2)}$$の値は? $${g^{-1}(3)}$$の値は? って聞かれたら、
「んーわからなぁい……」って首を振るしかない。本当に分かんないから。
……って、それならまた関数の条件満たしてないのでは……?
関数に適用されていない定義域の元はそれはもう定義域外なのでは……?
ということで、こういう領域外のやつをなくした
全射関数(Surjective f.)の定義がこちらだ。
全部の終域の元に向かって入力値が発射されるから全射関数なんだな~って。
さて、これらの条件が一つでも外れても逆関数は成立しない。その対偶は?
「逆関数が成立するにはこれらの条件全てが成立しなければならない」。
ということで先ほどの条件2つを全て満足する全単射関数(Bijective f.)/
一対一対応(One-on-one correspondence)の定義がこちらだ。
つまり、とある関数の逆関数が存在するにはその関数が全単射関数でなければならない。
$${0}$$付近が定義域の部分集合の偶関数とかはダメだね。
$${f(-a)=f(a)}$$だもん、ダメに決まってる。
3.3. 逆関数を求めるための練習
逆関数を求めるには
という方法をやっていけばいい。
もちろん先に$${x}$$と$${y}$$を入れ換えるのもあり。
ということでちょっとだけ練習してみよう。
3.4. 逆関数に関するいざこざ
逆関数に関して少しだけ話しておきたいことがある。
・逆関数は入力と出力を入れ換えたもの
まぁ、先ほど言ったばかりだが、これは割と便利なことだったりする。
結構後の方で$${x=\sin\theta}$$と置換したりすることがあるのだが、計算の結果$${\theta}$$がそのまま飛び出てこれを元の$${x}$$に戻したいのに$${\theta}$$が普通の方法(特殊角 or 倍角公式など)では求められない場合がたまにある。
それなら、もう逆関数を使ってしまえばいい。
$${x=\sin\theta}$$なら$${\theta=\sin^{-1} x}$$なのだ。
三角関数の逆関数も存在するのだが、「三角関数の逆関数」と聞いて「おい全単射どうした!!!!」って言う人がいるかもしれない。
だが、安心してほしい。ちゃんと全単射するように範囲を調整してある。
これは逆三角関数を扱うパートでまた今度。
・逆関数のグラフは元の関数を直線$${y=x}$$に対して対称したものと同じ
逆関数を求める時に「$${y}$$と$${x}$$を入れ換える」という動作を行ったが、これがグラフで言うと「直線$${y=x}$$に対して対称する」ということになる。
実際に逆関数練習②の元の関数と逆関数のグラフ、そして直線$${y=x}$$を描いてみると図 1のようになり、直線$${y=x}$$対称というのがわかる。
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