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Ⅴ. 関数の極限の定義【基礎微積分学:大学数学】



1. 定義①:教科書通りの定義

さて、ようやく「極限」まで辿り着くことができた。
この極限は何者なのか、というと、グラフの目的地を探すという行為。
極限を初めて触れる人は「……はい????」となると思うので、まず教科書に書いてある定義を見てみよう。説明は定義を見ながら行う。

$${a}$$の近くにある$${x}$$が定義域に含まれる関数$${f}$$に対して、
(※ 定義域に$${a}$$はなくても構わない。)
$${a}$$の左右から$${a}$$十分近い$${x\neq a}$$を取ると、
$${f(x)}$$の値が$${L}$$にいくらでも近い値を得ることができるとき、
この状態を「$${x}$$が$${a}$$に近づくときの$${f(x)}$$の極限は$${L}$$である」と言い、
記号では$${x\to a}$$のとき$${f(x)\to L}$$、または$${\displaystyle\lim_{x\to a} f(x)=L}$$と表す。

1. 関数の極限の定義①

……なんのこっちゃ、という感じだが、実際に例を挙げて考えてみよう。

関数$${f(x)=x^2\;\;(x\neq 2)}$$に対して
$${f(2.1)=4.41}$$、$${f(2.01)=4.0401}$$、$${f(2.001)=4.004001}$$、……
$${f(1.9)=3.61}$$、$${f(1.99)=3.9601}$$、$${f(1.999)=3.996001}$$、……
から、$${x}$$値が$${2}$$に近づくとき$${f(x)}$$値は$${4}$$に近づいてっているのがわかる。

これを記号で表したのが$${\displaystyle \lim_{x\to 2}f(x)=\lim_{x\to 2} x^2=4\;\;(x\neq2)}$$ってわけだ。
「そりゃそうでしょ、$${2^2}$$が$${4}$$なんだからさ」と言う人がいるかもしれないが、
最初の関数設定をよく見てほしい。$${x\neq 2}$$なのだ。

つまり、極限は「関数値があるかどうか関係ねぇ、俺らはこのグラフが最終的にどこに近づいて行ってるかを知りてぇんだ」ってときに使えるやつなのだ。

「どういうとき????????」というツッコミへの回答は3.で。
まずはこちらについて話してみたいと思う。

2. 定義②:ε-δ論法[(ε-δ)definition of limit]

ε-δ論法(エプシロン-デルタろんぽう)」、という極限の定義だ。
正直言うとこれが一番正しい定義である。
……が、かなり難しいため初等数学/基礎数学では1.1.の定義を用いる。

さて、これは本でも登場していない表記のため、教授の説明およびWikipediaからの引用が多分に含まれる。
まずは記号いっぱいの定義から見てみよう。

$${{\sf s.t.}\;f\!:\,X\longrightarrow Y,}$$
($${X}$$は$${^\exists h>0,\;^\exists i>0;\;[a-h,\;a+i]-\{a\}\subset X}$$を満たすある区間*)
$${^\forall\varepsilon> 0,\;^\exists\delta> 0;\;^\forall x\in X\:[0< |x-a|<\delta \Longrightarrow |f(x)-L|<\varepsilon]}$$
は$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=L}$$であるための必要十分条件である。

2.1. Wikipediaからの関数の極限の定義②(一部修正)

(* 片方が$${0}$$だった場合極限ではなく片側極限になってしまうため両方$${>0}$$。)
まぁ論理学など学んでいないので、筆者も初見では何を言っているかさっぱりだった。これを日本語いっぱいに直してみたらこうなる。

$${a}$$のちょっとした左右にまで範囲を広げた($${a}$$は含まなくても○)集合を含む
定義域$${X}$$を持つ関数$${f\!:\,X\longrightarrow Y}$$がある。
適当に決めた正の数$${\delta}$$に対して
$${x}$$と$${a}$$の差を$${0}$$より大きく、$${\delta}$$よりは小さくする全ての定義域内の実数$${x}$$が、任意の(どれだけ小さくてもいい)正の数$${\varepsilon}$$に対して
$${f(x)}$$と$${L}$$の差を$${\varepsilon}$$よりは小さくする、というのが
$${\displaystyle\lim_{x\to a}f(x)=L}$$の真なる定義である。

2.2. Wikipediaからの関数の極限の定義②の和訳

さて、理屈での説明は終了しちゃったので、またもや例で理解を深めてみよう。

先程$${\displaystyle\lim_{x\to2}x^2=4}$$と言ったが、これをε-δ論法で証明してみる。

$${\delta}$$は適当に決めていい、ということだったので$${\delta=\sqrt{\:\!\varepsilon+4\,}-2}$$としてみる。
ここで$${\varepsilon}$$は任意の正の数だよ。
$${x}$$と$${2}$$との差、$${|x-2|}$$が$${\delta}$$よりは小さい。そう$${x}$$の範囲を決めたから。

ところで$${f(x)}$$と$${4}$$の差、$${|f(x)-4|}$$は$${|x^2-4|=|x+2||x-2|}$$なんだけど、$${|x-2|}$$なんか見覚えない? これ$${\delta}$$よりは小さいやつじゃね?
ということで$${|f(x)-4|<|x+2|\delta}$$。
そんで、$${|x+2|}$$をどうするかなんだけど、
これ$${|x-2|+4}$$より大きくはなくない?

  $${\delta+4>|x-2|+4=\left\{\begin{array}{ll}\;\;\:\,x+2=|x+2| & (x\geq2) \\ -\,x+6>|x+2| & (-2\leq x< 2) \\ \;\;\:\,6-x>|x+2| & (x< -2)\end{array}\right.}$$

おーけー、確認できたね。ということで$${|x+2|\leq|x-2|+4<\delta+4}$$、
$${|x+2|<\delta+4}$$。真ん中のやつはまとめて条件の範囲と比較してみろ。
なので最終的に$${|f(x)-4|< |x+2|\delta< (\delta+4)\delta}$$。

そして、これをさっきの$${\varepsilon}$$に対しての式に直してみたらどうなるだろう。
$${|f(x)-4|<(\delta+4)\delta=(\sqrt{\:\!\varepsilon+4}+2)(\sqrt{\:\!\varepsilon+4}-2)=\varepsilon\;\;(\because\varepsilon>0)}$$

ということで、$${\delta}$$に関する条件を満たす全ての$${x}$$に対して
$${|f(x)-4|<\varepsilon}$$が成立することを証明できた。

そしてこれが何と同じだ? $${\displaystyle\lim_{x\to2}x^2=4}$$と同じだぁ。
っつーわけで$${\displaystyle\lim_{x\to2}x^2=4}$$であることは真!! Q.E.D.!! 終わり!! 閉廷!! 以上!! 皆解散!!

2.3. lim(x→2) x²=4 のε-δ論法での証明

……という感じで極限を「無理矢理じゃない方法」で定義したのがε-δ論法です。
1の方法は「十分近い」とか、「近づく」とか、あんまり数学的ではない(?)、数字として説明できないものがいっぱい出てきたんだけど、これはそういう曖昧なものがない。ただ「$${0}$$より大きいならなんの実数でもいいよ!!」って言っただけだしね。

3. グラフでの極限

さて、これらをグラフでやろうとしたらどうなるんだろ。
よく左右からの矢印を使って、極限の目標値へと近づいていくにつれてグラフを辿って極限値に近づいていく、という感じでよく説明される。
下の図 1もそんな感じだ。使った関数は$${f(x)=0.2x(x-2)(2x-3)}$$をちょいと移動させたやつ。

図 1. lim(x→a) f(x)=L をグラフで求める様子

実はこの「両側から」矢印が近づいていく、というのがけ~っこう重要。
片方が違う値に向かっていたり、もしくは片方がもう存在しなかったりすると極限値が存在しないっていうことになる。また今度、詳しく説明する。

4. 極限の使いどころ

さて、この極限をどこでいつ使うかまったく話していない状態でここまで来たわけだけど、話すときがきたみたいだな。

極限はずばり、この2種類の場合に使う。

① 知りたいところだけすぽっと抜けている場合
② 知りたいところに関数値はあるけど明らかに流れに沿ってない場合

4.1. 極限の使いどころ

なんのこっちゃ、って思うかもしれないけど、このグラフたちを見てほしい。

図 1&2. 極限の使いどころを表したグラフ

左のが①、右のが②であることはすぐわかると思う。
①は元々あったであろう関数値がどっか行ってる、っていう状況で、
②は、自分がしたいのは「グラフの流れ」なのにその流れとは一切関係なさそうな関数値が登場しちゃった、っていう状況。

このときに極限を使うと、その流れに沿ったであろう数字を得ることができる。
実際やってみると$${0}$$が出るよ。計算法などに関しては次の記事で。

ちなみに①の関数値がない理由はそもそも$${2}$$が定義域にないから。
分母に$${x-2}$$があるから、ここに$${2}$$入れたら大変なことになる。

……元々は計算法諸々含めてこの記事で極限を終わらせるつもりだったのだが、
思っていたよりε-δ論法の説明が長くなってしまったのでここでストップ。
繰り返し読んでみると理解はできると、思う。できなかったのなら質問をどんどんよこしてくれたら助かる。嬉々としてYKが答えに行くと思う。

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