ラブレターの序章的なアレ

あるバンドに出会った。
きっかけは、その当時好きだった人が好きだったから。
好きな人の好きなものを私も好きになりたい、そんな下心にまみれたきっかけだった。

学生時代、愛用していたウォークマンが水没してしまって、お小遣いもなく、途方に暮れていた時。
そいつから「お古でもよければ、やる」と貰ったシルバーの使い古されたウォークマンに、リリースされていたすべての曲が入っていた。

第一印象は、不思議。

「バッハの旋律を夜に聴いたせいです、こんな心」

同じフレーズを繰り返す。

「バッハの旋律を夜に聴いたせいです、こんな心」

言い訳するかのように繰り返す「その人」の心に、私はいつの間にか自分を重ねていた。

気まぐれに自分の心を弄ぶ、いや、相手にはもしかしたらそんな気はさらさら無くて、ただ私が勝手に舞い上がって、勝手に落ち込んでいただけかもしれないけど……

一緒にいてもお互いのためにならない、この人はただこの時だけ、寂しい時だけ私を求めるんだ。

わかっているのに、そう覚悟して振り切るつもりだったのに。
そういうときに限って、甘えてくる。
”おまえにはなんでも話せるし、居心地良いんだ”って。

「歩き出そうとしてたのに、待ってくれって服を掴まれたようだ」

好きな人がいると、すべてそこに優先してしまうから、趣味で、ほかのことで、忘れようと思っても、その時は楽しかったのに、直後、どうしても頭にちらつく。

「忘れかけてたのになぜ、忘れられないのはなぜ」

気づいたらこの曲だけずっとリピートしていて、ひとりでずっと泣いていた。

言葉ばかりのダメな自分、って本当に辛かったから「君だけじゃないよ」って肩を抱いてくれたような気がした。

その人に囚われて、離れられなくて、いつまでも足踏みして留まっている自分を、責任転嫁して少しでも楽になりたいだけ。

この詩を書く人は、多分、滅茶苦茶恋愛脳なんだろうな。
それを表向き見せないだけで、多分愛が深くて重いんだろうな・・・なんて思ったわけで。

「月に慣れた僕がなぜ 月に見とれたのはなぜ」

「月に慣れた君がなぜ 月を見ていたのはなぜ」

・・・って詩がさ、
かの有名は「月が綺麗ですね」っていう口説き文句になぞらえてて
「見慣れた月に見とれる」=「隣にいる貴女を愛しています」
「貴女も見ていた、見とれていたんでしょう、?」
=「僕を愛しているんだと、期待してもいいかい」

みたいに聞こえるんだよ。いやめっちゃ面倒くさ!
すんごい理屈っぽいしプライド高いよね、自分から好きって言いたくないんでしょ。

でもその気持ちすごい分かるよ。
・・・ってなって。

詩に惹かれた。
曲はそのあとについてきたけど、ずっと曲が、メロディが、頭から離れない。
なんだこのスルメ感。

聴けば聴くほど深みにはまる気がする。

この人たちの曲、もっと聴き込みたい。

それが、私とサカナクションの出会いだった。


歌詞引用
「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」- サカナクション
(https://www.uta-net.com/song/116275/)

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