時間と思考をかけて読みたい雑誌『NEUTRAL COLORS』との出会い
今日のように雨がしとしとと降っていた、2022年秋のはじめ。
当時まだ友人だった恋人と、東京都写真美術館に行った。
写真展を見終え、ミュージアムショップ前の椅子で一息ついた時、彼が「好きそうだと思って」と、雑誌『NEUTRAL COLORS』3号を見せてくれた。
書き出しを読んだ瞬間、景色が開ける感覚があった。
トンネルの先に広がる海を見た時のような(江ノ島方面にそういう道がある。あの辺を車で走るの好き)、飛行機に乗って雲の上に出た時のような、それに似た高揚感があった。
堪えきれず、人目を気にせず、ぽろぽろと泣きながら読んだ。
とにかく夢中で、閉館時間まで読んだ。
その後に行ったご飯屋さんでも、読み続けた。
『NEUTRAL COLORS』3号は、2センチくらいの厚さがあり、美しく面白いデザインの上に、流氷の様に文字が並んでいる。
編まれている内容は、氷山の様。
見える(簡単に読める)部分よりも、よくよく見ようとしないと見えない部分(時間と思考をかけて読みたい部分)の方が圧倒的に大きい。
デートの間ではどうしたって読み切れない。
帰り際、彼は「どこにでも持っていけるように、こういう装丁をされているんだよ」と、『NEUTRAL COLORS』をくるりと丸めて、小さなバッグに仕舞った。
内心「え?くれないの?『NEUTRAL COLORS』くれないの?くれないんだ?というか、丸めちゃうの?もっと大事にして?」と思った。
帰りの電車に乗ってすぐ、オンラインショップで2,3号を注文した(現在は4号まで発行されている。5号は制作中とのこと)。
オンラインショップでは在庫が無くなっていた創刊号も、あちこちの書店に電話で問い合わせをして手に入れた。
彼には「私が死んだら『NEUTRAL COLORS』を一緒にお墓に入れてね」と伝えている。
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