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ボタンダウンシャツとネクタイと歴史


昨今のエセマナー講師や知識の伴ってないスーツ量販店の店員、聞きかじった情報を垂れ流すyoutuberなどによって「ボタンダウンシャツにネクタイをするのは間違い」という間違った情報がネット上にも溢れるようになってしまった。これは非常に残念な事である。

こういった情報を金や影響力に変える人々はその情報の質や正確性は二の次に自分で調べる事も、歴史を学ぶこともせずに「さも有り難い常識のように」上辺だけを取り繕って広めていくので厄介だ。またその情報をさらにコピーして劣化したコピーがまたどんどん広まっていく。
基本ファッションに疎くてどうしてこういうマナーやファッションが生まれたかを自分で考えて選ぶのが苦手な人達はこういう間違った情報を広める人を有難がる。何も考えなくてよいから。
それだけらなまだ当人が間違っているだけなので良いのだが、これがまた「エセマナー講師大先生のお墨付きを貰った情報」と受け取り今度は歴史やマナー着こなしを知っていてちゃんとTPOを考えて取り入れている人を指差して「そのファッションは間違いっている、ダサい」などと指摘しだすから目も当てられない。。

こういう馬鹿げた事が悪名高い「リクルートスーツ」へと繋がっていると思う。
本来は自分でTPOを考えて相手への失礼が無い程度の中で自分により似合う、より良く見える服装を選んで自分の意見をしっかり持った内面とそれが滲み出た外見でビジネスや面接などに挑むべきなのに、
自分に似合わない「黒のリクルートスーツ」に身を包んで何もかも曖昧でうやむやにした無個性かつ何も印象を与えないナンセンスなスーツと人々を生み出してしまった。

さてタイトルの「ボタンダウンシャツとネクタイと歴史」についてだけれど、
ブルックスブラザーズの歴史を知っているならば、スーピマコットン オックスフォード ボタンダウンシャツにネクタイはスタンダードな組み合わせである事は知っているだろう。

そもそも「ボタンダウンシャツだからネクタイは駄目」と主張する人はシャツの細かな違いを理解できてない人だと思っている。
そういう人がカジュアルシャツとビジネスシャツ、ドレスシャツの違いを理解できていないから「ボタンダウンシャツにネクタイはおかしい」みたいなおかしな事を言い始めてしまったのだ。

元々のボタンダウンシャツ(ポロカラーシャツ)の誕生は当時のブルックスブラザーズの社長ジョン・E・ブルックスが英国でポロ観戦をしていてその競技用のシャツの襟がボタン留めしてあった事に気づきそれをアメリカに持ち帰りそのアイディアをドレスシャツに取り入れ、できたシャツがポロカラーシャツ(ボタンダウンシャツ)だ。

ここまでは有名な話なのだけど、読解力のない人、そこから深く調べない人により「ポロ競技のシャツが起源でスポーツ用のシャツだからビジネスに使うのは間違い」なんて馬鹿げた解釈が広まりつつあるのが恐ろしい。。
そもそも少し調べればわかるけれど、別にポロ競技のシャツをそのまま使っている訳ではない。
ブルックスブラザーズのポロカラーシャツ(ボタンダウンシャツ)が革新的だったのはドレスシャツにポロ競技のシャツのようにボタン留めするカラー(襟)を取り込んで機能的かつスポーティーさ、若々しさ等々を盛り込んで新しいビジネスシャツの方向性を生み出した事だ。手に取ればわかるが、カジュアルなボタンダウンシャツとブルックスブラザーズなどに置いてあるスーピマコットン オックスフォードのボタンダウンシャツは明らかに上品さが違うのがわかるし、ネクタイを付けた時も外した時も美しくなるように拘って作られたロールしたカラー(襟)や裾の形からもカジュアルシャツではなくビジネスシャツが基本である事がわかる。勿論ベースがドレスでも機能的で着崩した時も絵になるように考えられ物だからカジュアルシーンでも問題なく使えるようにも出来る器の大きい一品なのだ。

ブルックスブラザーズのポロカラーシャツの歴史やラインナップ、ポロカラーの作りを見れば一目瞭然だけれども当時から一貫してネクタイする提案をしてきている。
勿論ボタンダウンシャツでよりカジュアルな素材やシルエットでネクタイをしないカジュアルシャツもラインナップにはあるけれど、それはボタンダウンシャツだからカジュアルシャツという訳ではない。カジュアルシャツになる要素は生地の質感やシルエットの方が大きい。

メンズファッションは女性物と違い流行り廃りのサイクルも長めだし、基本的には微差を楽しむのがメンズファッションだ。

メンズ服を深く勉強してメンズ服に理解が深い女性は別として、女性服一辺倒のデザインや提案をしてきた女性が陥りやすいのが、そういった微差を分からずに女性的な発想でメンズファッションを提案すると往々にして、派手なボタンや変な柄を取り入れたメンズファッションには相容れない物を作ったり選びがちだ。
これは別に女性が良い悪いの問題ではなく、メンズファッションの理解度の問題でちゃんとメンズファッションの歴史がわかっていればそういう間違いは無いが、女性のエセマナー講師などが「女性目線」でメンズファッションを語っている場合は多分に間違いが起こる確率が多いので注意が必要である。

どうしても自分で物選びが苦手な人は物事の正解を「あり」か「なし」の狭い二択で考えてしまう節がある。
しかし実際のビジネスシーンやカジュアルシーンでは結局「相手に与える印象」や「自分が相手にどういう印象を与えたいか」が大事であって正解は幾通りもある。

だから勿論好みとして「自分はボタンダウンにネクタイはしない。嫌い」というのは自分の中で正解としてあって良い。
しかしそれをビジネスマナーとして風聴するのは話は別で馬鹿げていると言いたい。それは歴史やファッションを知らない恥ずかしい事であるから。

そういうと「ここは日本だ!日本でのマナーに従うべき」なんてアリもしないマナーを言う人がいるけれど、そういう人のロジックは「元はボタンダウンはスポーツシャツ」なんて聞きかじった、しかも海外起源の受け売りを平気で風聴していたりすので直ぐに矛盾している事を言う。

また間違った情報の一つとして「アメリカでもボタンダウンシャツはカジュアルなシャツなので政治家はBDシャツなんて着ない」なんてものもあるけれどそれも間違い。逆に元々ブルックスブラザーズ(BB)のシャツを来ているような人種は所謂「上流階級」の人々である。BBのボタンダウンシャツは昔からそういった人々に愛用され名門大学の学生にまで広がる。そうなると政治をやるにあたって万人に受けるには「上流階級」や「ボンボン」といったイメージが足枷になってくる場合が多い。そうしてボタンダウンシャツを避ける政治家が多くなったという歴史がある。決してカジュアルだから、スポーツだからという理由ではないのだ。

何度も言うけれどそれぞれの好みはあって良い。首周りや胸元がスッキリしている方が好み、英国スタイルが好みというのもよく分かる。自分もスーツのシャツには胸ポケットは無いスッキリした物も好きだ。

しかしアメリカの質実剛健、機能的なスタイルの考え方や歴史を知っていればそういう物が生まれてくる理由もわかる。

なので上手く自分の好みを選び自分の生活のクオリティが上がるように取り入れていったら良いと思う。
そういうモノ選びの時に正しい歴史や情報、物の質の違いがわかるとより良い物選びが出来るようになる。


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