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一日一句【菜根譚】#92 「不近悪事,不立善名」静かに自らを磨き続け、他者と和気を保つ


「不近悪事,不立善名」

という句は、君子(高潔な人)は悪事に近づかず、善名を立てることもないという意味です。この句は、真に高潔な人の行動指針を示しています。

まず、「不近春事」について解説します。これは、「悪事に近づかない」という意味です。君子は、不正や悪行を避け、道徳に反する行動を決して取らないことを重視します。つまり、どんなに利益があっても、邪悪なことは一切行わないということです。

次に、「不立善名」について解説します。これは、「善名を立てることをしない」という意味です。君子は、自分の徳や善行を人に誇示しようとしません。自分の行いが自然に他人に評価されることを望むのではなく、名誉や称賛を求めず、静かに自分の道を進むのです。

この句は、君子の行動がいかに自然であり、自己顕示欲や名誉欲から解放されているかを強調しています。真に高潔な人は、他人からの評価や称賛を求めることなく、自らの道徳を守り続けるのです。この姿勢こそが、真の強さと尊敬を集める要素であり、君子たる所以と言えるでしょう。

和気と君子の道

世の中には、自分の節操や道義を誇示する人がいます。彼らは、節操高潔であることを自負し、学識豊富であることを吹聴します。しかし、このような行動は、往々にして批判や反感を招くものです。なぜなら、節操を標榜する者は、その節操の欠点を突かれ、学識を誇示する者は、その知識の浅薄さを指摘されるからです。

本当の君子とは、邪悪な行いを避けるだけでなく、名誉や評判を求めることもしません。彼らは、和気をもって人々と接し、自然体であることを大切にします。この和気こそが、君子にとっての至宝であり、真の処世術なのです。

例えば、周囲に「私は道義に反することはしない」と声高に宣言する人がいるとしましょう。その人が一度でも道義に反する行動をとれば、すぐに非難されるでしょう。また、「私は知識が豊富だ」と言いふらす人が、少しでも無知を露呈すれば、周囲から嘲笑されることになります。

これに対し、君子は自分の節操や知識を誇示することなく、ただ静かに自らを磨き続けます。彼らは、空気のように自然でありながら、確固たる道徳心を持ち続けます。この姿勢こそが、君子の真の強さであり、尊敬される理由です。

現代においても、この教えは重要です。SNSやメディアを通じて自分をアピールする機会が増えた今、自分の価値を過大に宣伝するのではなく、静かに自らを高め、他者と和気を保つことが求められます。そうすることで、真に信頼され、尊敬される存在となることができるでしょう。

結論

君子の道は、節操や知識を誇示することなく、邪悪を避け、和気をもって人々と接することにあります。この教えは、現代社会においても変わらぬ真理であり、私たちの生き方に大きな示唆を与えてくれます。静かに自らを磨き続け、他者と和気を保つことこそが、真の君子の道であると言えるでしょう。


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