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醜いダチョウの子

醜いダチョウの子
                               
 
 

 
 
 
ピレネー山脈の向こうには
大きな平原があって
たくさんダチョウたちが群れで生活していた
 
ピピンの家族も模範的な生活態度で族長から大変
信頼を得ていた。
 
あるときピピンの家族が
族長のダチョウのガウに呼び出された
 
「うちの部族は長い間この平原にすんでいるが
最近 この平原でも食べ物が不足してきて
生きて行く道を開拓しなくてはいけない。
ピレネー山脈を超えて向こうの世界に何があるのか
探ってきてほしい。
そこで我々の部族が生活できる道があるかもしれないから。」
 
こうしてピピンの家族は険しいピレネー山脈を越えて
向こう側にある別な世界へと冒険の旅に出発した
 
険しい峠を越えてゆかなくてはいけないのだが
残念なことにダチョウたちは羽はあっても飛べなかった。
 
険しい岩場をのぼりながら足に豆ができて痛くなると
ピピンの父親はつぶやいた。
 
「僕たちは鳥なのにどうして飛べないんだろう。
大空に羽ばたいて一気に山を越えて行けたらどんなにいいか。」
 
山の中腹まで来ると 岩陰からたくさん猿が出てきて彼らをからかった
 
「やい ダチョウ お前たちが鳥だったらどうして飛んでゆけないんだ。」
 
そうして 石やら枝やらを投げつけたので
ピピンの家族は得意の速足でその場を走り去った。
 
 
               

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とにかく 走るのはサルよりもはるかに早かった。
 
おかげで険しい山道を一気に駈上リ山頂まで来ることができた。
 
山頂から眺める別世界の平原はうっそうとしたジャングルが続いていて
ジャングルの中を大きな川がくねくねと蛇行していた。
 

 
 
どこにも平地らしきところもなく
あたり一面を覆う薄雲がさらに不気味な雰囲気さえ醸し出していた。
 
長いこと山頂からこの風景を眺めていたピピンの父と母は
「とても私たちが住める場所ではなさそうだ。
引き返してガウに報告しよう。」
 
こうしてピピンの家族がそこから引き返そうとしたとき
ピピンが言った
 
「お父さん お母さん
 私にあのジャングルに行かせてください。
 きっと 新しい世界が待っているに違いありません。」
 
山頂で長い間 家族会議が開かれたが
ピピンがあまりにも頑固に言い張るので
とうとう条件付きで
ピピンの言い分が許可されることになった
 
 
      

 
 
ピピンは一週間ごとに この山頂に上ってきて
自分が無事である証拠として
山頂から烽火を上げる約束をした
 
 
ピピンは後ろを振り向くこともなく
一人で一気に山道を下って行き
あっという間にジャングルの入口に到着した
 
ジャングルの入り口には守衛が一人立っていてピピンに言った
 
「ダチョウさん ここから先は通行証が必要だがお持ちかな?」
 
「そんなものはありません。私はあの山の向こうの平原から来たんです。」
 
「通行証がない奴は入れないんだ。残念だな。どうしても通行したいのなら
 ジャングル特別学校に入校して合格証をもらってきてもらうことになる」
 
こうしてピピンはその日からジャングル特別訓練学校に入校することになった。
 
 
 

 
 
来る日も来る日もジャングルの中を走り 
決められた植物を探して10本以上取ってくる訓練が始まった
 
サルやイノシシ以外にもコブラやゴリラもいて
激しいせめぎあいの競争でゴリラがいつも一等賞を取っていた
 
入りたてのピピンは一日中走り回っても2,3本のマングローブの枝をもって帰るのがやっとだった。
 
「やい ダチョウ野郎  お前の羽は何のためにあるんだ。悔しかったら
 空でも飛んで俺たちを見下ろしてみろ。」
 
ピピンの大きな目から涙が零れ落ちた。
 
夜になるとピピンは大切していたガウからもらった櫛を取り出して
櫛に書いてあるダチョウ10訓を読み返した。
 
こうしてジャングルの学校ではいつもびりの成績で泣いてばかりいたピピンだが
父母との約束を守り日曜日になると山に登ってゆき烽火を炊いた。
 
もうどれくらいの日がたったのか忘れるほど
ジャングルの学校の生活が続いて
いつの間にかピピンの体も大きくなった
どういうわけか ピピンの足はほかのダチョウたちのように長く伸びなかった。
 
首もちじこまったまま羽のすぐ上に乗ってた。
 
「やい へんてこなダチョウ 走るのも遅いし 飛べもしないし
おまけに 不細工な格好してやがる。」
 
こうしてサルたちにからかわれて
ピピンは悲しくなって
学校が終わった夕方 大きテデン川のほとりにきて目に一杯の涙をためて
それを見つめて大きな声をあげた
 
ところがである
 
いつもはダチョウのような「ぐわー」という鳴き声が出るはずなのに
ピピンの喉からは鋭い「キー」という声がたからかに響き渡ったではないか。
ピピンはもう一度思いきり叫んでみた。
 
キーーーという甲高い声はジャングルの境にある大きな山にこだまして
再びジャングルに響き渡った。
 
すると どこからか同じように「キーー」という甲高い声が響いてきた。
ピピンは耳を澄ませたがそれは自分のこだまの様でもあった。
 
ところが 次の瞬間 すぐ近くから大きな叫び声でキーーー
と言いながら 大きな鳥がピピンの上のはるか上空を飛び去った。
 
 
どこかで聞いたような懐かしい声のようだった。
その上空に向かってピピンが再度叫んでみた。
 
するとピピンのすぐ上の方から大きな声で再びキーー
という声が 明らかに自分に向けて叫んでいるのが感じ取れた
 
ピピンの全身が熱い炎に覆われたように
体が熱くて仕方がなくなり
ピピンは開いたことのない大きな羽を精いっぱい開いて大きく羽ばたきを繰り返した。
 
 
ピピンの体がふっと宙に浮いた。
 
その瞬間 上空から舞い降りてきた一羽のワシが
ピピンの足元からピピンを上空に運びあげた。
 
            

 
ピピンはびっくりして落ちないようにさらに必死に羽ばたきを続けた
ピピンは飛び続けた
 
空から落ちることなく 力強く上空へ上がり続ける
 
落ち着いたピピンがふと横を見ると
色鮮やかで毛並みの立派な大ワシがゆっくりと飛んでいた
 
 

 
 
大鷲がゆっくりと羽ばたくので
ピピンも真似してゆっくりと大きく羽ばたいてみた
 
するとどうだろう
 
羽ばたきの力は強く
あっという間にピピンは何キロもの距離を飛び去てしまったことを感じることができた
 
 

 
 
 
 
下のほうを見ると
ジャングル学校の動物たちが自分の方を見上げて
大騒ぎしているのがわかった
 
ピピンが大きく羽ばたいて
動物たちの方に降下してゆくと
 
あんなにピピンを馬鹿にしていたサルやゴリラたちは
一斉に校舎の中に逃げ込んでしまった
 
ピピンは
目の前にある広大なジャングルを
大きく数回羽ばたくだけで
端から端まで飛び去てしまった
 
大鷲の二人は悠々と
さらに遠くに見える高原に向かって飛び去って行った
 

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