社福経営者向け|令和6年介護報酬改定への意見2:食費、居住費の自由化、弾力化または自動スライド化の議論を
※すべて私見です
要約
令和6年の介護報酬改定において、報酬の外枠となっている食費・居住費の基準費用額について、居住費は一日あたり60円引き上げられましたが、食費は据え置かれました。しかも基準費用額は3年間続いていく。一方、令和6年6月のCPIも以前として2%台後半に推移しているなど、物価上昇・インフレは続いている。そうした状況のなかで、3年に一回の議論でいいのか、食費・居住費の基準費用額の柔軟化、自動スライド化の議論が必要ではないか、そのあたり下記に書きました。
令和6年介護報酬改定への意見2:入所施設の食費、居住費のこと
社福経営者向け|令和6年の介護報酬改定への意見1:適正利潤、再生産コストの議論がない|村木宏成/Hironari Muraki (note.com)
この記事では報酬改定の議論に、介護事業経営実態調査で相対的に収支差がでていれば、報酬を下げられ、収支差がなくなれば、報酬を上げる、というやり方で進められ、報酬適正利潤や再生産コストに関する議論が全くない、ということを書きました。
今回の報酬改定では、主に入所系施設の食費、居住費のことに焦点を当てた話をしたいと思います。
介護報酬には、「改定率の外枠」という考え方がある
「改定率の外枠とは」
厚生労働省『令和6年度報酬改定と賃上げについて』(令和6年1月19日)
さらに、こちらの二枚目に「改定率の外枠」という記述と考え方があります。
今回の介護報酬の改定では、改定率は全体として+1.59%でした。そこに改定率の外枠+0.45%相当の改定が見込まれ、合わせて+2.04%相当となる、というのが厚労省の主張でした。
「改定率の外枠」である入所施設の食費、居住費の基準費用額について
令和6年の報酬改定にあたり、基準費用額の居住費は一日あたり60円引き上げられ、食費は据え置きだった
その改定率の外枠として、入所施設の食費、居住費の基準費用額について、今回の報酬改定では、居住費のみ一日あたり60円引き上げられました。
が、食費は据え置き、となりました。
厚生労働省老健局:『介護報酬の改定率、室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)』(令和5年12月27日)
(※「基準費用額」や「負担段階」、「負担限度額」、「補足給付」の説明は社会福祉法人経営者の皆さんはよくよく知っていると思いますので省略します。)
今回の報酬改定にあたった政策当局者のお話をお聞きすると、「居住費」分の算定根拠となる家計調査では、上記リンク資料のとおり、令和元年に比べて上昇が見られるとのことで、一日60円上がりました。しかし、食費については、その政策当局者の話によると「食費の上昇がみられるエビデンスがなかった」とのことで、見送りとなりました。
私たちの法人施設では、令和5年、令和6年と続けて給食委託費の値上げをお願いされてきました。それに伴い、第4段階以上の利用者の皆様にはその上昇分の値上げをお願いしてきました。しかし、特養において負担段階が第4段階以上の方はかなり少数です。
また下記のように2023年平均と最新2024年6月分のCPIを見ても、2023年の3%台からは少し落ち着いてきたものの、2%台後半で推移しています。
総務省:2020年基準消費者物価指数(全国 2023年(令和5年)12月分及び2023年(令和5年)平均)
総務省:2020年基準消費者物価指数(全国2024年(令和6年)6月分)
物価上昇分の基準費用額への転嫁について、柔軟化や自動スライド化の議論を!
今後3年間、こうした物価上昇・インフレのなかで、そのコストを負担していくのは、介護施設になります。もしくは、値上げに同意いただいた第4段階以上の一部の利用者の皆さんです。
一定のルールを設けて、基準費用額への転嫁の柔軟化を
私たちは普通に生活していたら、電気代、ガス代、ガソリン代、食材料代が上がれば当然その分支払います。(でなければ生活できません)
これと同じように、基準費用額においても、その上昇分への食費・居住費へ転嫁を柔軟に認めるような、柔軟化・自由化の議論が必要ではないでしょうか。もちろん一定のルールを設けて。
または消費税税率引き上げに伴う臨時報酬改定を参考に
2019年10月に消費税税率の引き上げが行われました。
その際は消費税増加分を賄うための臨時の報酬改定が行われました。
これと同じように、物価上昇などインフレ局面において、基準費用額も自動的にスライドさせる(もちろんCPIなどが下がれば下げられる)ような仕組みを議論することも必要ではないでしょうか。私としては、「受益者負担の原則」からも、こうした議論が必要だと思っています。
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