大規模言語モデルLLMの論理的思考を強くするデータセットを考える①
OpenAIがo1を発表しLLMによる知的生産能力がさらに高いところにあることが証明されました。
o1ではLLMのCoT(Chain of thought 思考の鎖)のにおける強化学習の工夫があるようですが、利用しているLLMの基本的な構造は同じと考えられます。
現状のオープンウェイトのLLMでは論理的思考を備えていますが不安定であり、推論の積み重ねで改善する段階にはなさそうです。
使用するLLMの論理力のバックボーンがあいまいなままでは、現在のオープンウェイトLLMをいくら積み重ねても達成困難でしょう。
構造が同じであれば、学習しているテキストの品質が異なるはず。
現在オープンLLMの学習によく使用するデータセットとして使われるWebテキストには、論理思考や数学的思考が濃厚に記録されていません。
強力な論理思考を揺らぎなく提供するためには、思考の過程が濃厚に記録され、知識も豊富なテキストが必要で、それらのテキスト作成にLLMから生成された合成データを利用されたと考えられます。
今回LLMが論理的思考を学習するのに必要な論理思考とは何かについて考えました。
o1はこれらに加えて数学的推論テキストなども含めて多量に学習し、それらの論理をどのように利用するかさらに強化学習で洗練していったのでしょうか?
まず基本的な考えのベースとしてGPT-4oに確認しました。
1. 形式論理の導入
形式論理は、論理的思考の基盤であり、推論の妥当性を保証するために重要です。例えば、以下のような要素を各記事に含めることで、LLMに推論のフレームワークを提供できます。
命題論理: 各記事内での命題を明確に定義し、それに基づく推論を行います。記事内で「もしAならばB」のような条件付き論理を使うことで、LLMが条件と結果を結びつけやすくなります。
推論規則: 仮定から結論を導くためのルールを明示的に説明します。例えば、「すべてのAはBである。Aであるから、Bである」というような三段論法の例を多用することで、モデルがこの形式を学習します。
例:
すべての鳥は飛べる。しかし、ペンギンは飛べない。したがって、すべての鳥が飛べるわけではない。
2. 因果関係の強化
LLMに因果関係の理解を深めさせるために、原因と結果を結びつける文章を含めます。因果関係が含まれたテキストを提供することで、モデルは出来事や行動の背後にある理由や結果をより理解しやすくなります。
因果関係の具体化: 「Aが発生したので、Bが起こった」というような文章を多用する。
反実仮想: 「もしAが起こらなかったら、Bも起こらなかっただろう」という形で、異なる状況を想定させる。
例:
気温が低下したため、水が凍りついた。もし気温が下がらなければ、水は凍らなかっただろう。
3. 逐次的推論のトレーニング
複雑な問題やストーリーを段階的に解決させる文章を作成します。推論を逐次的に行わせることで、モデルに対してステップバイステップの思考過程を促すことができます。
ステップバイステップの解説: 一度に結論を出させるのではなく、各ステップでの判断を明確にしながら推論を進めさせる。
問題解決型の記事: 問題を提示し、その解決までのプロセスを順番に解説する。
例:
問題: ある箱に赤いボールが2つと青いボールが3つ入っている。ボールを1つ取り出したとき、それが赤いボールである確率を求めよ。
解答: まず、箱の中のボールの総数は2 + 3 = 5個である。次に、赤いボールは2つあるので、赤いボールを引く確率は2/5である。
4. 反復強化学習
生成された記事や推論に対して、フィードバックループを設けることでモデルを継続的に改善することができます。LLMに対してフィードバックを与え、誤りを修正し、推論の精度を高めていく学習プロセスを組み込むことが有効です。
誤った推論の提示と修正: 間違った推論例を提示し、それに対して正しい推論のフィードバックを与える。
例外処理と例外的ケース: 通常の推論がうまくいかないケース(例外)を提示し、それにどう対応すべきかを解説する。
例:
最初の推論: すべての鳥は飛べる。しかし、実際にはペンギンなどの鳥は飛べないことが知られている。このことから、「すべての鳥が飛べる」という推論は誤りである。
5. 多視点的な思考
問題やトピックに対して、複数の視点や立場からの考察を促す記事を作成することで、LLMの多様な論理的視点を強化できます。
異なる立場の提示: 1つの問題に対して複数の視点(賛成/反対、利点/欠点)を示し、それぞれの論点を説明する。
対話形式: 複数の登場人物による議論や対話形式の記事を作成し、異なる立場からの推論を促進。
例:
Aさん: 「AIは人間の仕事を奪う危険がある。」
Bさん: 「そうかもしれませんが、AIは新しい雇用も生み出します。」
Aさん: 「確かにその通りです。だが、特定の職業は影響を受けやすいでしょう。」
6. 連鎖的な推論(ホップ推論)
1つの事実から次の事実へと推論を連鎖させるような記事構成をすることで、LLMに複雑な推論連鎖を学習させることができます。
多段階の推論連鎖: 記事の中で、1つの仮定から連鎖的に別の結論へと導くプロセスを示します。
因果連鎖: 連続するイベントや状況を示し、それがどのように影響を与え合うかを詳述します。
例:
太陽が燃えているおかげで地球に光が届き、光が届くおかげで植物が光合成を行い、植物が成長することで動物がそれを食べてエネルギーを得る。
その次に、ChatGPT-o1 previewに聞きました。
たくさんのヒントがありました。これからの技術改善は、GPTとブレインストーミングが必須ですね。
こういった論理学の知識を参考に、自分の作成したい知識を詰め込んで、さらに最強の論理性能をもつテキストをオープンウェイトのLLMで生成し、知識と論理が濃厚な合成データセットを作成していきます
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