CTO三上がメモするAI Samuraiへの道 vol.2

 株式会社AI Samurai取締役CTO 三上です.特許調査/分析システム「AI Samurai」の開発を行っております.引き続き,AI Samuraiの開発過程をメモしていきたいと思います.

これまでのおさらい

 三上が旧ゴールドアイピー社(現AI Samurai社)の外注先としてIP Samuraiの開発を受託し(2017年9月),仲間の協力を得てα版を納品しました(2018年3月).

Signal Mining買収事件

 いきなりタイトル詐欺で事件でも何でもないですが,IP Samurai α版の開発を評価されたことにより,三上のゴールドアイピーへの参画を打診されました.当初,私も自身の会社(株式会社Signal Mining)の代表を務めていたため,形式上ゴールドアイピーに買収される形でJoinすることになり,IP Samuraiの開発を内部から指揮していく立場となりました(2018年4月).これにより開発を加速していくことになります.

IP Samurai β版

 実はα版のIP Samuraiは,米国特許のみを検索対象としていました.これはCEO白坂の意向で,「まずやりにくいところから」という意図があったのかもしれません.もし日本特許の開発を先に始めていたら,あとで米国対応するのは難しかったような気もします.しかしながら,日本国内の企業に導入してもらうためにはやはり日本の特許の検索も出来ないとどうにもならないということで,Join直後の最優先タスクは,日本特許への対応でした.
 幸い,全文検索のバックエンドとして利用しているElasticsearchは,英語だろうが日本語だろうが問題ないので,システム全体としての骨格は大きく変えることなく,日本語検索にも対応できそうでした.もちろん,米国特許と日本特許では元データのフォーマットやデータ構造が違うので,できるだけ共通化した自前のフォーマットに変換したり,細かいところでデータの持ち方を変えたり,さらには入力クエリの前処理を言語別に変えたりという必要はありましたが,なんとかそれらを吸収し,「ワンパス動いた!」というところまで持っていったのが2018年8月頃のことです.

精度評価

 日本特許の検索もできるようになり,今後は精度が問題になってくるということで,ここから精度評価を進めていくことになります.社内には資格を持った弁理士が複数人いますので,定性的な評価は随時行っている状態ではありましたが,やはり定量的な評価も必要になってきます.特許検索の世界ではいくつか精度評価用のコーパスが存在し,代表的なところで日本特許の場合はNTCIR*1,米国特許を含めた多言語検索の場合はCLEF-IP*2などがあります.特許検索の精度を突き詰める作業には終わりがなく,今なお継続して評価し,改良を続けているところではありますが,ある程度の精度を達成できるようになってきたところで,いよいよ「世間に出してみる」という決断を下します.実作業で使われてみないとわからない問題や,コーパスだけでは評価しきれなかった実世界での精度を見ていかないと,良い製品にはならないだろうとの判断です.

β版リリース

 2019年12月,UIの改良も行いリリースすることになりました.クレームチャートのデザインを整理し,発明内容の構成要素ごとに各特許での該当キーワードを表示するようにしました.

画像1

各セルをクリックするともう少し詳細が見られるようになっています.

画像2

現在はもう少し洗練されていますが,この時点でだいたいの出力フォーマットが決まりました.

正規版リリースへの道

 β版をリリースしましたが,次は「β」を取って,正規版としてリリースすることになります.より多くのAI要素を取り入れていくための準備が必要になっていきますが,それはまた次の機会にメモしていきたいと思います.

画像3

三上崇志
京都大学理学部卒業.京都大学大学院情報学研究科修了.三菱電機入社後,テキストマイニング,カーナビシステム,エコーキャンセラ等の研究に従事する.2010年度IPA未踏事業でスーパークリエータとして認定される.起業後はSNS開発,ソフトウェア開発,ゲームアプリ等を企画・開発・運営し,ヴイストン株式会社にてコミュニケーションロボットSotaのソフトウェア開発を先導する.2018年,(株)AI SamuraiのCTOに就任し,基幹サービスであるAI Samuiを開発.大阪大学大学院情報学研究科・博士課程在学中.

リンク集

AI Samurai HP→ https://aisamurai.co.jp/
YouTube→ https://www.youtube.com/channel/UCPU2N2fekiUtMFqbCnokmpgTwitter→ https://twitter.com/aisamurai_inc
FaceBook→ https://www.facebook.com/pg/shirasaka
Instagram→ https://Instagram.com/aisamuraiinc

#買収 #MA #NTCIR #CLEFIP #特許調査 #AIシステム


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?