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片耳だけで生きていくことについて:1

知らぬ間に、右耳が聞こえなくなっていた。

えーと、作者のページを一通り見られた方は、色んなライブのレポも載せてるし、何か趣味とか雑多なことも書いてるし、ちょっと体調崩した経験もしてるんだろうな、って認識をされると思う。この記事から「はじめまして」な方もいらっしゃるだろうし、検索などでいらした方は、一つの共通でこの記事を読まれることだろう。自分のプロフィールに、片耳聴力の人間であることは記してないのですが、まぁ、そんな感じです。私は右耳が聴こえません。いつからこうなったのかも分からないので、治療法も全くありません。片耳でも色んなライブに行くわ、普通の生活はするわ、イヤフォンも使うわで、見た目は所謂『一般人』としての生活をしてはいるのですが、しっかり記しておくならば、要所要所で『難』はあります。

<知らぬ間に>と書きましたが、自分自身は恐らく(小学生低学年の頃)じゃないかな…と思ってます。風邪で鼻詰まり、咳がひどい、目がおかしい、その他諸々なことをうっすらと覚えていて、高熱を出したような記憶もありました。後日、学校内の健康診断か何かで聴力検査をした時、右側だけが全然聴こえなくて聴力検査用のボタン(ヘッドフォン付けて音が聞こえたら応答用のボタンを押してね、のヤツです)を適当に押してたら保健の先生にふざけてると思われ、後でしっかり病院で検査を受けたら、右耳聴力がマイナスであることが判明し、いつの間にか、知らぬ間に、私の右耳聴力はどこかへ旅に行ってしまったそうな……(あらら…)。

音楽をやっていくことについて。

小学〜高校までは『過度な音量の音を、直接聴かなければ大丈夫』と耳鼻科の先生に言われていたこともあり、とりあえず普通の生活も何となく送れていました。高校の後は音楽の専門学校に行くことを考えていたら、両親から緩めではありますがストップをかけられました。そうです、右耳のことが引っかかりました。専攻したかったのが電子音楽というところもあり、ヘッドフォン使用率が一気に上がるので危惧感があったのかも知れません。ですが、当の本人は電子音楽専攻以外を取る気がなかったので、適度に何とかすると両親をこれまた緩めに説得し、入学してしまいます。音楽の世界は『学校』と言えど、甘いものではなかった…。

ヘッドフォンを使わない授業は全く問題なくクリア出来るものの、作曲部門だったので音楽を作らなければなりません。長年ピアノを習っていたことが幸いして、楽器がなくても作曲自体は出来るんですけど、それを音源提出しなければならないとなると、学校内のコンピュータールームに籠らなくてはならない…。長時間のヘッドフォン使用で左耳酷使の日々が続き、自宅でもヘッドフォン使うし、一時はフラフラになる程体力を奪われたこともありました。片耳の方なら共感される方はいらっしゃると思うのですが、聴こえる方の耳だけでヘッドフォンを3時間くらい使用していると、こめかみ辺りがすごく疲れませんか? 長い時間使わなければ良いだけの話かも知れませんが、こういう専門学校だと当たり前のように長時間のヘッドフォンの使用があります。特に、音の再生位置を決めるパンニングの作業をしているとコンピューター投げたくなります(笑)。右側の再生位置が全部分からないので、これも左耳で調整しなければならないので、…ちょっとした地獄。

普段の音楽を聴く時間も、ヘッドフォンで聴く場合は「一般人の3倍聴くことが通常」になりつつあるので、一回の再生で音楽の全貌が分からない曲が増えました。

《左の聴力しかない、故に:
左耳で左パートを聴く→左耳で右パートを聴く→
最後にモノラルで全体を把握する or 左耳でヘッドフォンの左右を同時に聴く》


昔のクラシックやポピュラー、歌謡曲などの音楽はモノラルなものも多く、ステレオでも何とか聴き取りが大丈夫なものが多い反面、1990年後期くらいからシーケンサーの多様によるパンニング(再生位置)が不思議なものが多くなりました。左右の振り分けくらいなら音の飛び方で判断出来るものはあるけれど、中には音がグルグル回る仕組みのものもあったりして(あれ何ていうシステムでしたっけ……サラウンドとかVRの名義じゃなかったような…)、こういうものはステレオでそのまま流して聴くしか判別がつかなかったりします。そういう意味では、自分はこういう音楽は作れないなと感じることも増えました。電子音楽が好きで入った専門学校なのに、電子音楽に特化した曲が作れないかも、という可能性。しかし、それにストレートに絶望する訳ではなく『ああ、こういう時に片耳聴力であることは不便だな』と。音楽をやっていくことについて、何となく、音楽機材の進化についていけなくなる時がジワジワ来るのを感じたりしました。

誰も気づかないし、気づいても皆忘れていく。

専門学校入学時、作曲部門生一同の前での自己紹介の際に「右耳が聞こえないので、左から話しかけてもらえると助かります」って自分から難点を言ったんですけど、何人かの部門生に笑われたのを今でも覚えてます。珍しいのか、奇妙なのか、馬鹿にしたのかは分かりません。このアピールを聞いて声をかけてくれた数人の部門生とは、卒業の4年間ずっと友達だったし、仲間でした(今は皆、どこで何をしているのやら…)。専門学校を卒業した後は、某楽譜の卸の会社に長く在籍しましたが、面接の際にも「右耳聴力はありません(片耳難聴である)」ということは伝えたし、履歴書にも必ず書いたんですけど、社内でそれが全然伝わってない…困るなぁ。いや、そこまで大ごとではないですが(苦笑)それを知っている人とそうでない人では、やはり接し方が全然違うのです…。右側から話しかけられても私にはさっぱり分からないし、事情を知らない人から「え、無視(シカト)?」ってサラッと言われます。そして私もサラッと「すみません、右耳聴こえないんですよ」と言い返すのですが、お互い苦笑し合って気まずい雰囲気になったりならなかったり。長く同じ部署にいた同僚はすぐに察して、いろんな場面で席を代わってくれたりしました(感謝しかない…)。その当時の彼氏にも全部伝えた上でお付き合いさせてもらってたんですが、ただやっぱり忘れられたこともあったし『これくらいの距離なら聴こえるんじゃないの?』と言われ、ちょっぴり茶化された事があったのも事実。今後、新しく恋人が出来ることがあったなら、私の右耳難聴のことを理解してくれる人が良いです(現れるかな、そんな人…)。誰かの右側に立って歩かないと、会話が出来ません。それを理解してくれる方が良いなぁ。もちろん自分も聞き取ろうと必死なんですけど、周りに人が多いシーンではどうしても聞き取りづらいし、受け答えも曖昧になってしまいがちです。
右耳が聞こえなくなってある程度の年数が経ち、今や親戚や両親でさえ「どっちの耳が聞こえないんだっけ?」って惚けられるし忘れてるんです。「右だよ」と伝えて「OK、右ね!」と確認した割には、数分後にはもう忘れてます(苦笑)。日常的に一緒にいる人なら、腹割って話が出来るから良いのです。そしてある意味『仕方がない』と割り切ります(笑)。

後書き

右耳聴力がない、というお話でした。今や医学も進歩して様々な治療法があるそうなんですが、本当に原因が分からないので治療のしようがないと言うか…。骨伝導とかそういう類のお話でもなく、右側でどれだけ大きな音を流しても全部左側でキャッチして聴いてる状態なので、云十年この状態で生活していると、急に聴こえるようになる方が恐怖だったりする気もします…。たまに起きる耳鳴りだけが悩みの種ですね、ホワイトノイズが多いのでとても困ります;
今回はざっと書き流した程度なので、自分の聴力についてはまた改めて書くと思います。ライブに行った時の聴こえ方とか、自分が楽器を演奏している時の聴こえ方、普段の生活面での聴こえ方など。旅行などの移動時の耳鳴り対処法みたいなものも書いてみようかな、と思ってます。

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