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【DTM講座】本田あいるの作曲ワークフロー

どうも、ロックが好きなボカロPの本田あいるです。今回は僕が作曲する時の流れを書いていきたいと思います。

詞先?曲先?

作曲は大まかに分けて歌詞から作る詞先とメロディや伴奏から作る曲先に分けられます。おそらく曲先で作る人が多いと思いますが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『ソラニン』のような詞先の名曲もあったりします。かなり難易度は高いですが詞先に挑戦してみるのも良いかもしれません。

曲先にも種類がある

同じ曲先でもどの部分から作り始めるかで作曲の難易度が変わってしまいます。

メロディ先行型
自由に作曲できるため初心者でもメロディだけは簡単に思いつくことが出来る。デメリットはコード進行とリズムの縛りが強くなるため音楽の知識がないと曲が完成できないことが多く難易度が高い。
コード進行先行型
コード進行から作ることでメロディと伴奏を合わせやすくなる。コード進行には著作権がないので名曲の進行を真似してもOK。普段は使わない進行になることで新しいメロディの引き出しが増えるかもしれません。
リズム先行型
ドラムループから作ることで簡単にグルーヴ感を出すことが出来る。そのリズムにコードを乗せて最後にメロディを作るのがおすすめです。プロが作ったリズムを使うことで曲のクオリティが格段に上がります。

貴方はどのタイプだったでしょうか?
僕は鼻歌から作ることが多いのでメロディ先行型の作曲手順について書いていきたいと思います。

本田あいるの作曲手順

サビのメロディを打ち込む

スマホに録音している鼻歌の中からサビに使えそうなものを打ち込みます。鳴らす音色は何でも大丈夫なのですが、メロディが聴き取りやすいシンセリードがおすすめです。この時は必ずディレイとリバーブをオフにしてください。ちなみに鼻歌は何故かシャワー中に思いつくことが多いです。

メロディにコードを当てはめる

完成したサビのメロディをScaler2というプラグインに読み込ませて曲のスケールを検出します。このプラグインには様々なジャンルで使えるコード進行やメロディ、ベースラインなどが大量にプリセットされていて初心者でも簡単に曲の骨組みを作ることができる便利ツールです。最初は明るい曲=メジャースケール、暗い曲=マイナースケールくらいの認識で大丈夫です。メロディを流しながらスケールのダイアトニックコード(スケールの中で使えるコード)を鳴らして響きが合うコードを入れていきます。合うコードがダイアトニックコードの中にない場合は部分的に転調しているので響きの近いコードを半音ずつずらして違和感がないコードを探します。最初は戸惑いますが慣れてくるとどのコードを当てたら良いか分かるようになります。

リズムを打ち込む

メロディとコードを鳴らしながらドラムを打ち込んでいきます。基本的には小節の頭やコードチェンジした箇所にキックを入れると良い感じになります。スネアは2拍、4拍に入れると間違いは起きにくいですね。EZ Drumer3を使えばメロディや演奏を読み込ませるだけで自動でドラムパターンを作ってくれるので楽ですよ。ドラムとメロディのアクセントがずれると曲は格好良く聴こえないのでこの作業は妥協せず頑張ってください。

Aメロを作る

サビが完成したらその時に使ったダイアトニックコードを元にAメロのコード進行を作っていきます。僕はサビ以外のパートはコード進行先行型で作っていくことが多いです。サビのメロディから逆算しながら構築していく感じですね。サビと同じコードで進むパターンや淡々としたメロディで盛り上がりを演出するなど作曲者のセンスが問われます。コード進行が決まればメロディ~リズムの順に打ち込んでいきます。

Bメロを作る

Aメロとサビを繋ぐ役割のBメロは作るのが一番楽しいパートでもあります。僕はゆったりしたリズムに変えてサビ前にタメを作ることが多いです。ずっと同じリズムパターンが続くと単調になってしまうのでBメロで変化を作りサビでバーンと盛り上げることを意識しています。メロディには長い音符や高いパートを入れると抑揚が出てドラマチックな感じになります。

間奏パートを作る

次はイントロなどの間奏パートを作っていきます。ここは楽器が主張できる部分なので思いっきりエゴ出しちゃってください。僕は鍵盤が苦手なので基本的にギターを中心に組み立てていきます。リフで作るよりもギターのメロディから作ることが多いですね。質感としてはサビより少し大人しくなるように意識しています。このパートのコード進行とリズムが完成したら全てのセクションをコピペして一曲分の長さにします。

ベースを打ち込む

一曲分の骨組みが完成したら次はベースを打ち込んでいきます。最初は8分音符のルート弾きを打ち込んでからキックとメロディとの絡みを考えながらベースラインを動かしていきます。DTMを始めたばかりの時はルート弾きだけで作っていたのですが『神様とダンス』で動きのあるベースに目覚めてからは出来るだけメロディアスなベースラインを意識しています。ルート、3度、5度、7度の音に経過音を混ぜていくのですが、最初の音にルートを使うと違和感が少ないラインになります。ベースは休符の使い方でノリが変わってくるので音符の長さやベロシティを細かく打ち込むことで曲のクオリティを上げることができます。僕ももっと勉強して格好良いベースを作りたいです。曲の大雑把なアレンジはベースの打ち込み時に考えているのでドラムを再度編集したりメロディを微調整したりしながら作業してます。

曲のKeyとBPMを考える

完成したオケを元にCevio AIで仮歌を作ります。ライブラリーに合う最適なKeyの高さとBPMを決めていきます。各ライブラリーによって得意な音域が違うのでサビの部分が一番美味しい帯域になるようにトランスポーズしていきます。サビは良いけどAメロが低すぎる場合などはサビだけ転調させて対応したりもしますね。BPMも同じで1~2変更しただけでも雰囲気が変わってくるので何度も聴きながら慎重に決めていきます。この作業をしっかり行わないと生楽器を再度録音したり、無理やりトランスポーズして音質が劣化したりなど作品に悪影響が出るので注意してください。全て打ち込みで作る人は気にしなくて大丈夫です。


ギターを録音する

僕は元々ギタリストなんですがギター録りは楽しいけど一番面倒くさい作業です。PCにオーディオインターフェイスとプリアンプを繋いでダイレクト音を聴きながら録音していきます。録音時にアンシミュを挿してモニターするとレイテンシー(音の遅延)が出て気持ち悪いので、アンプを通した音を想像しながらペケペケの生音で演奏しています。録音は各セクションごとに分けて行い10テイクくらいの中から良い部分をコンピングしてベストテイクを作っています。一曲でだいたい100テイクくらいは録音してます。この作業で一番大切なのはノイズの処理になります。エレキギターはノイズを拾いやすいのでPCから2mほど離れた場所でオーディオインターフェイスのインサートに繋いだプリアンプを足で踏みアースを取りながら演奏することでクリーンなサウンドで録音しています。似たような方法をB´z松本孝弘さんも行っている映像を観たのでスタジオでは一般的なのかもしれません。ギターの録音時に新しいアレンジを思いついた時はギターを全部録音した後にドラム、ベースを編集します。

歌詞作り

DTMで最難関であろう作業ですね。僕もメッチャ苦手で外部発注してやろうかと毎度悩んでいます。ただ自分らしさを一番出せる部分でもあるので諦めずに頑張っていくしかありません。僕の感覚的には宝探しに似ていて、核になるワードが見つかると数分で完成してしまうことが多いです。歌詞の意味よりもメロディとの相性が良ければそちらを優先して、作品のメッセージは雰囲気さえ伝わればいいやっていうスタンスで書いてます。個人的に100%のハッピーエンドやバッドエンドにならないように気をつけています。

ボーカルトラックの作成

完成した歌詞を元にCevio AIで打ち込んでいきます。注意するのは「ぜん」などのⅠ音に2文字を入れる時ですね。8分音符の場合だと16分音符+16分音符にするのではなくⅠ音目を32分音符だけ伸ばして発音するようにしています。こうすることで機械ぽさが消えてくれることが多いです。ただ機械的にリズムを合わせていくパートなどには向いていないので音を聴きながら判断してください。あといくら良いメロディでもバグって発音できない時もあります。そんな時は諦めて違うメロディに変えてしまいますね。

ハモリパートはBメロはオク下、サビは3度上or5度下にすることが多いです。僕は音楽理論に疎くてハモリを作れないのでEventideQuadravoxで見本になる音を鳴らしながら作っています。Quadravoxでそのまま鳴らしても良いのですが音が劣化してしまうので時間に余裕があるなら打ち直してください。
Cevio AIはベタ打ちでもかなり人間ぽく歌ってくれるので修正する箇所が少なくて楽なのでおすすめです。操作が難し過ぎてミクを諦めた僕でも使えますから。

ミックス&マスタリング

全ての音が揃ったら次はミックス作業に入ります。ここで一番大切なのは各トラックの音量調整ですね。僕の場合はメインボーカルの音量を-10dBくらいになるように固定します。次にボーカルを聴きながらベース、ドラム、ギター、ピアノ、シンセ、ハモリの順に音を重ねていきます。マスターボリュームが-5dBくらいになるように意識しながら作業しています。音量の調整が終わったらADPTR MetricABでリファレンス楽曲と自分の曲を比較しながらEQやコンプで理想の音に近づけていきます。EQでどうにもならない時はフレーズや音作りに戻って編集し直した方が良いです。2MIXに書き出した音源にizotope Ozone9を挿して音圧を上げます。最後にモニターヘッドホン、イヤホン、スマホのスピーカーで再生して音質チェックを行い問題がなければ完成です。

こんな感じで作った作品です。良かったら聴いてみてください。


とても長くなりましたが読んでいただいて本当にありがとうございます。色んな作り方があるのでご自身に合った方法を見つけてください。


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