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5年越しの夢がついに~はじまりが今へと繋がった瞬間~

みなさん!こんにちは。Airiです。今回は7/16-7/17に行われた海コース第2回についてです。それでは、はじまり、はじまり!


研究室のゼミを終わらせ、急いで電車に乗り込む。いつもの土曜日が始まった。そう!今日は自然環境リテラシー学(以下、リテラシー)海コースの第2回目だ。今年度のリテラシーがはじまってから土曜の午後に京都を出て三重へ向かい、実習が終わると京都へ帰るという日々を繰り返している。7月ともなると、もうこのリズムが身体に染み付いてきた。三重に近づくにつれ、強まっていく雨。でも、私の胸の高鳴りは増すばかりだ。電車とバスを乗り継ぎ4時間半。到着するとちょうど今回ガイドを担当してくださるalgaforest柴田丈広さんの講演が始まる頃だった。講演内容は大きく分けて2つあった。

柴田さんから潮について教わる私たち

①潮について


伊勢湾は島が多いため、外洋と異なり、天候が悪かったり、風が吹かないかぎりは非常に凪であるそうだ。その反面、潮流は複雑であることを教わった。例えば、一般的に潮の向きは潮の満ち引きによって決まる。しかし、岩や島などの障害物があると、そこに潮流がぶつかって障害物の裏側では逆向きの流れ(反転流)が生じるらしい。私はツアーの計画を立てる側の視点から、これらの話聞いていたのだが、勉強になることばかりだった。実際、翌日のツーリングでは柴田さんがどのように全体を率いてカヤックを進めていらっしゃるかをみていると、この座学と結びつく部分があった。例えば、沖に向かって潮が流れる場所に入る前には、その逆の流れ、もしくは潮の流れのない場所でみんなを集め、「ここから先は漕ぎ続けてね」という風に声かけをされていた。また、帰り道に追い潮となるように航路が組まれていることで、参加者は行きと帰りで追い潮、向かい潮、両方体験できるだけでなく、疲れている帰りに追い潮で帰ることができる。鳥羽の海を知っているからこそ、組み立てることのできるツーリングだなと感じた。次回以降、自身が航路を考える時に活かしていきたい。

②訪れた様々な土地について


カヤックの旅で訪れた様々な土地の景色、そこで出会った人々などの写真を見せてくださった。その中でも印象に残った写真があった。それは、アザラシがお腹を開かれ、内臓がむき出しになっている写真。そして、アザラシの生肉を豪快に食らう人の写真。こう聞いて、これを読んでいるみなさんはどう感じるだろう。

残酷?
野蛮?
かわいそう?

私の頭の中にはそんな言葉も浮かんできた。でも、これっておかしくないだろうか?私たち日本人も日々魚を生で食べたり、肉を食べている。スーパーで加工済の魚や肉しかみないから心が痛むこともないだけなのだと思う。住む場所が変われば、文化も変わり、『あたりまえ』も変わる。結局、私たちは自分たちの色眼鏡で世界を見ているのだろう。だからこそ、色んな場所にでかけたり、色んな人の価値観を知ることが大事なのだと思う。同じものをみていても、人によって全く違う世界をみていることに気づけるのではないだろうか。普段、私たちは多様性を大切にしようといいながら結局、世間一般がよいとすることを基準に判断していないだろうか。私は本当の意味で1人1人の個性が大切にされ、互いに認め合えるそんな世の中をつくりたい。

…と少し熱くなってしまったが、話をもとに戻そう。

柴田さんの講演が終わると、ついにお待ちかねの晩ご飯の時間である。今回は、鳥羽磯部漁港の方から届いた大量の新鮮な魚が用意されていた。
カツオ、タイ、ホウボウ、コショウダイ、セイゴ、サワラ、ハマチ…など
山本先生を中心に捌いていった。

たくさんのお魚。美味しそう!

そして、自ら捌いた刺身を一口!
美味しい!
やっぱり新鮮な魚はいいな〜と幸せに浸る時間だった。

その後はスタッフミーティング、テント設営などを終わらせ、波の音を聞きながらテントの中で寝転がった。この夜はいつ寝たのかわからないほど、一瞬で眠ってしまった。


2日目

ぴーひよろろろろ
ぴーひよろろろろ

翌朝はトンビの声で目が覚めた。なんと心地のよい朝だろう。それに重なるようにして聞こえてくる波の音。どんな作曲家にも真似できない、今ここにいる生き物と海によって紡ぎだされるメロディー。まるで生きている喜びをここにいる生き物たちが歌っているかのようである。

そんな自然の一部になったような気持ちで目を覚まし、朝ごはんを食べ、準備をすませ、出艇した。

リテラシーに参加して5年目になるが鳥羽の海を漕ぐのは初めてのことだった。

鳥羽の海へ!いざ参らん!

島々の間をぬい、鳥羽の海がみせる様々な表情に心惹かれながら、カヤックを漕ぎ進めていたときだった。前のほうから

「スナメリ!」

と声があがった。隊列の後方をゆっくり漕いでいた私も、みんながカヤックをとめ、とどまっている場所に合流し、静かに水面を眺めた。そして、その瞬間は突然訪れた!

シュポッ!

という呼吸の音とともに2頭のスナメリがカヤックのすぐ近くに現れたのである。グレーのつるつるとしたものが水面をヌルンと通りすぎる。
野生のスナメリを、こんなに近くから見たのは初めてだった。その後も息をひそめて待っていると、数回スナメリたちは姿をみせてくれ、次第に遠ざかっていった。5年前にカヤックにはじめて乗った時から、野生のイルカをカヤックからみるのが夢だった。その夢が5年の月日を経て、ついに叶ったのである。学部時代はイルカの研究をしていたほどのイルカ好きである私にとって、たまらなく幸せな時間。

スナメリの出現を待ち、息をひそめる。ピンと張りつめた空気の中でスナメリが現れる。この瞬間は、なんと素敵なのだろう。スナメリと私たちの時間は普段、決して交わることがない。スナメリは水の中に暮らし、私たちは陸で生活をしているからだ。一生交わることのなかったはずのスナメリと私の時間が、その瞬間に確かに重なったのである。もう一生、同じスナメリには出会うことができないかもしれない。でも、私はこれから鳥羽の海をみるたびに彼らと共有したその一瞬を思い出すだろう。スナメリを通じて、自然と自分が繋がったように感じた。

興奮の冷めないままだったが、お昼になり近くの浜へと上陸した。
そして、ここでもう一つのキセキが起こることになろうとは、この時の私は思っていなかった。

お昼に上陸した浜

お昼ごはんを食べ終わり休憩していると、リーダーのJくんが柴田さんからロールを教わり始めた。

ロールとは
バランスを崩してカヤックが転覆した時に、艇から脱出せずに艇毎起き上がる技術のこと

http://www10.plala.or.jp/kayaker/kayak_kiso5.html

そこで、私も一緒に教えていただくことにした。練習は、柴田さんが水中でパドルの動かし方の補助に入り、起き上がる感覚を掴むところからはじまった。曲げ漕ぎをするときのように、パドルを大きく前から後ろへ漕ぐ。すると、カヤックが起き上がるので、カヤック → 腰 → 肩 → 最後に頭という順番で起き上がる。この時にやってしまいがちなのが、もう起き上がれると思って頭を上げてしまうことである。そうすると、またカヤックごと水の中へ逆戻りだ…

そうして何回かチャレンジを繰り返していると、

クルッ

身体が起き上がり、私は人生初のロールに成功した。

「え!まわった?!まわった?………できた~~~~~!」

自分でも何が起きたのかわからなかったが、ロールに成功したのだとわかった瞬間、喜びが込み上げてきた。カヤックを乗り始めた頃からカヤックのプロガイドの皆さんがされるロールにずっと憧れていた。
まさか2つ目の夢までいきなり叶ってしまうなんて…!
ロールの指導をしてくださった柴田さんに感謝の気持ちでいっぱいである。

☆ロールのコツ
大きくスイープストロークをした後、体を反るように後ろ側に体重をかけ、パドルの水を抵抗を利用し、腰と膝を使ってカヤックを起こす!
首を曲げたままにし、最後まで頭を上げないのがポイント!

昼休憩を終わらせた私たちは、カヤックを漕ぎ、もとの浜へと戻り、1分間スピーチをし、解散となった。

でも、まだまだドラマは終わらなかった。

受講生の子たちが帰った後、後片付けをしていると怪しい雲が近づいてきた。
と思っていたのも束の間、すぐに大雨になった。
そんな中、みんなでカヤックの運搬・片付けを進めた。

突然の大雨

でも、これは幸福をもたらす雨だったのある。
片付けが終わる頃には雨が止んでいた。ふと一息つき、空を見上げると、なんと虹がかかっていた。

片付け後に空を見上げると虹が!

そして、ある受講生から嬉しいメッセージが。帰りに乗り換えの電車を待っているときに、彼らも虹をみたというのだ。別々の場所で同じ虹を見上げ、互いのことを考えていた。その事実がなんとも嬉しかった。実は、私が大学1年生で実習を受けたときにも虹をみた。みんなで虹をバックに写真を撮ったのは今でも忘れられない思い出である。虹が私の過去と今と、そして新たな人たちとの出逢いを繋いでくれたように感じた。

1年生の時の自然環境リテラシー学での集合写真

今回のリテラシーは本当に不思議な回だった。5年間ずっと願い続けていた野生のスナメリをカヤックからみる、ロールができるようになるという夢が一気に叶ったのだ。そして、私が1年生ではじめて実習を受けたときと同じように虹もみることができた。

私の原点と今をつなぐ冒険、これにて終了。
でも、物語はまだまだつづく…


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